デイサービスで利用者様対応をしていると、正直このように思うことはありませんか?
送迎に時間がかかるから、近場の利用者さんだけ受け入れられたら良いな
女性の利用者さんばかりだから、男性に限定して受け入れたいな
しかし、利用者様の受け入れを制限するのは原則NGです。
一方で、受け入れ拒否が「正当な理由」であればOKとされています。
どのような場合は受け入れ拒否ができるのか、法律と実例から解説します。
所属するデイサービスで対応に困ることのないように、事前に確認しておきましょう。
原則として受け入れ拒否はできない
まずは原則の確認です。
デイサービスでは、基本的に利用者様の受け入れを拒否することができません。
(提供拒否の禁止)
平成十一年厚生省令第三十七号 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
第九条 指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。
この条項に準拠して、通所介護(デイサービス)でも正当な理由がない限り、利用者様の受け入れ拒否は禁止されているのです。
デイサービスで受け入れ拒否できる
「正当な理由」とは
では、受け入れ拒否ができる「正当な理由」とは何でしょうか?
令和3年2月8日付の厚生労働省 厚生労働省 老健局の「介護保険最新情報」では、正当な理由がある場合について、以下の通りとしています。
- 当該事業所の現員からは利用申込に応じきれない場合
- 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
- その他利用者申込に対し自ら適切なサービスを提供することが困難な場合
上記に該当しない場合(送迎範囲内だけど近場の利用者様に限定して受け入れる、性別で利用制限する等)、受け入れ拒否をしてはいけないのです。
受け入れをお断りした事例と対応ポイント
受け入れ拒否ができる「正当な理由」は、抽象度の高い表現で記載されていて、わかりにくいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、3つのデイサービスセンターで管理者を務めた筆者が、実際に受け入れをお断りした事例をご紹介します。
いずれも、受け入れ拒否が問題になったことはありませんが、一例として参考にしてください。
また、受け入れをお断りする際のポイントもご紹介します。
契約書/重要事項説明書/介護保険個人情報取扱指針説明書/同意書/苦情処理/アセスメント/ヒヤリハット/栄養ケアアセスメント・計画書・モニタリング/口腔機能向上ケアアセスメント・計画書・モニタリング/運動機能向上ケアアセスメント・計画書・モニタリングなど全25種類の通所介護に必要な書類をデータで収録!
①利用定員を超えてしまう
受け入れ拒否で最も多かった理由は、定員超過です。
ありがたいことにケアマネージャー様からたくさんのご紹介をいただいていたので、常に定員いっぱいの状態で運営していました。
新規に利用者様を受け入れると定員オーバーになる場合は、その旨お伝えして、お断りします。
しかし、せっかく利用者様やケアマネジャー様が選んでくれたのですから、なんとか期待にお応えしたいもの。
そこで、以下の対応をしていました。
- ご希望より少ない日数(週3回→週1回)で利用開始し、空きができたら週数を増やす
- ご希望と異なる曜日(水曜→木曜)で利用開始し、空きができたら曜日変更する
1日ごとに定員数は決まっていますが、曜日によって利用者様の人数が異なる場合があります。
ご希望にぴったり沿う内容でのご提供が難しい場合は、条件を変更してスタートいただけるか相談します。
週3回利用したい。
でも木曜しか空きがないなら、おたくには木曜だけにして、他2回はいったん別のデイに行きますね。
木曜以外に空きができたらおたくに移りたいから、教えてください。
そのように言ってくださるケアマネジャー様も、実際は多くいらっしゃいました。
②送迎範囲外にお住まいである
利用者様のご自宅が送迎範囲外の場合、受け入れを拒否する「正当な理由」にあたります。
デイサービスの指定申請をした際の書類や、通所介護契約書に、自施設の送迎範囲が記載されています。
送迎範囲外の方に関しては、利用を拒否しても差し支えありません。
ただ、この送迎範囲は申請して変更することができます。
デイサービス立ち上げ期はスタッフ数が少ないので送迎範囲を狭くしがちですが、規模の拡大を狙う時期には、戦略的に送迎範囲を広げることもよくあります。
特定のエリアからよく新規のご紹介があり、経営上そのエリアを送迎範囲に含めた方が良いと判断される場合は、思い切ってエリアを拡大してもよいでしょう。
もちろん、エリア拡大した分送迎のコストは増えるので、慎重に判断してください。
③必要な医療処置に対応できない
利用者様の疾患などに対して、自施設のスタッフで適切な医療処置ができないと判断する場合も、受け入れを拒否が可能です。
筆者が小規模デイサービスを運営していたとき、必ずしも看護師が常駐していませんでした。
そのため、医療処置が必要な利用者様は受け入れできません。
また、看護師を配置している大規模デイサービスセンターで勤めていたときも、看護師の人数やスキル、対応できる人数などに応じて、お断りすることもありました。
適切な医療処置ができない可能性がある中で無理に受け入れてしまうと、利用者様の命にかかわる事故になりかねません。
対応できない場合は、必ずお断りしましょう。
筆者は多店舗展開している企業に勤めていたため、近隣で受け入れられる別施設を紹介することで、対応させていただきました。
④希望される専門職を配置していない
特定の専門職からの機能訓練を希望される場合も、お断りしたことがあります。
筆者が勤めていたデイサービスでは個別機能訓練加算を算定していたため、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)を配置していました。
しかし、言語聴覚士(ST)を配置していなかったため、「どうしてもSTさんから嚥下機能訓練を受けたい!」といったご希望のある方は、お断りせざるを得ませんでした。
PTやOTでどんな嚥下訓練を実施できるか説明し、了承を得られれば利用していただいたこともあります。
「絶対に○○してほしい」の裏側になる本当のニーズをつかめれば、意外にも代替案で問題なくご希望を叶えられる場合もあります。
利用者様のご希望の表面だけでなく、なりたい状態をきちんとヒアリングできれば、お断りする機会はぐっと減ると実感しています。
⑤設備が不十分
最後に、設備面の問題です。
- 機械浴希望されているが、デイサービスに対象の機械がない
- 使用されているリクライニングの車いすが特殊で、保有している送迎車にお乗せできない
上記のような理由で、お断りしたことがあります。
ただし、実際は機械浴を利用しなくても介助があれば一般浴に入れる、送迎はご家族の自家用車で対応いただける、といった場合もあります。
「○○だからムリ」と一概に決めつけず、利用していただける方法を柔軟に考えましょう。
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「正当な理由」による受け入れ拒否は必要
デイサービスの受け入れを拒否できる正当な理由を、法律面と実例からご紹介しました。
施設を運営する立場からすると、できるだけたくさんの利用者様を受け入れたい、なるべく手間をかけたくない、などさまざまな思いがあるでしょう。
しかし、一番大切なのは「利用者様の安心と安全」です。
無理な受け入れをした結果、利用者様に危害の及ぶ事態だけは避けなくてはなりません。
ときには「正当な理由」で受け入れを拒否する必要があること、一方でそれ以外の場合はきちんと受け入れる必要があることを、しっかりと認識しておきましょう。
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投稿者プロフィール
- 神奈川県在住。Webライター。新卒で福祉企業に入社。ショートステイ、デイサービスで勤務したのち、デイ管理者や新規施設の立ち上げを担当。介護福祉士。2児のわんぱく男子を育てるフリーランスワーママ。
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