毎日サービスを提供していると、不安なことも多いヘルパーの業務です。
「これ、やっていいの?」「この行為は、ヘルパーの業務外じゃないの?」こんな迷いを感じた人も少なくないのではないでしょうか。
ヘルパーは、基本的に医療行為は認められません。
では、どこからが医療行為で、どこまでが介護なのでしょうか?
今回は、まず訪問介護ってどんな仕事?というところから、ヘルパーができる身体介護、やってはいけない行為、服薬介助、ヘルパーが工夫できる範囲などをお伝えします。
訪問介護ってどんな仕事?
訪問介護とは、自分や家族だけでは日常生活を営むことが難しくなった要介護者に対して、介護員(以下、ヘルパーと呼ぶ)が自宅に赴き、入浴、排泄、食事等の介護、掃除、洗濯、調理等の援助、通院時の外出移動サポート等の日常生活上のお世話を行うサービスです。
訪問介護のサービスは、大きく分けて「生活援助」「身体介護」「通院時の乗車・降車等介助」の3種類となっており、例えば、薬局や病院で利用者の薬を受け取る行為は、「生活援助」に入ります。
ヘルパーができる身体介護と『やってはいけない行為』とは?
平成 30 年4月1日から、身体介護における「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化を図るために、「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(平成 12 年3月 17 日老計第 10 号)」の見直しが行われました。
以前の「身体介護」は、「利用者の身体に直接接触して行う介助」と認識されていたものが改定され、自立支援・重度化防止という観点から一緒に行う介助等が追記されました。
身体介護とは、
訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(平成12年3月17日老計第10号厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知)【新旧対照表】
①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)
②利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス
③その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービス
をいう。
では、ここからは身体介護で行うことのできる「医療行為ではない」とされる介助についてお話していきましょう。
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条によって定められた、医療行為ではないと判断される行為とは、下記になります。
1、腋下での体温測定、及び、耳式自動体温計での外耳道の体温測定
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条
2、自動血圧測定器での血圧測定
3、動脈血酸素飽和度測定のためのパルスオキシメーターの装着
4、軽微な切り傷、擦り傷、やけど等で専門的処置が不要なもの(ただし、応急処置は除く)
5、軟膏塗布・湿布貼付・点眼・一包化された薬の服薬介助・肛門からの座薬挿入、又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助
その他、爪切りや口腔ケア、耳垢除去、市販の浣腸器での浣腸介助等
一方、以下のケースでは、医療従事者の管理・監督が必要な医療行為に該当するため、ヘルパーが服薬介助等をしてはいけません。医師や看護師の対応が必要です。
訪問介護で服薬介助をしてはいけないケース
・高齢者の容態が安定していない場合
・服薬による副作用を医師や看護師が経過観察しなければならない場合
·・誤嚥のリスクがあり、医療的な知識が必要になる場合
また、服薬管理は、訪問介護の範疇を超えてしまうため対応不可になります。
服薬管理とは、薬の残数を確認したり、仕分けをしたり、量を調整したりといった内容のことです。
例えば、いろいろな薬をシートから外してホッチキスで止めるなどという行為は、服薬管理となり、ヘルパーの行う服薬介助ではありません。
訪問介護で「できること」「できないこと」
訪問介護で「できること」「できないこと」が大きなイラストと事例でわかりやすく解説されています。
「身体介護」「生活援助」など、介助別に全90の事例をQ&Aで解説。
ヘルパーができる服薬介助について
ヘルパーができる服薬介助については、訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について(平成12年3月17日老計第10号厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知)【新旧対照表】に、具体的に書かれています。
1-5 服薬介助
平成12年3月17日老計第10号厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知)【新旧対照表】
水の準備→配剤された薬をテーブルの上に出し、確認(飲み忘れな いようにする)→本人が薬を飲むのを手伝う→後かたづけ、確認
ここで重要なのは、「配剤された薬」であることです。配剤は、ヘルパーの服薬介助の業務には入っていません。
また、平成30年3月30日に介護給付費分科会において「老計10号」が改定され、以下の内容が追加されました。
本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す
介護保険最新情報vol.637
適切な服薬ができるように、側で見守り・声掛けすることは可能なので、利用者ができる範囲での服薬準備の見守りはできます。
例えば、「ご利用者が薬の仕分けをするのを側で見守る」のは、可能ですが、薬の仕分けを手伝って、服薬の声掛けを行うということはOKです。
しかし、これらについても、必ず、ケアプランの中に位置づけされていることが不可欠です。
ヘルパーの服薬介助は、薬の準備や服薬の声かけなど、利用者が自主的に服薬をするのを介助することです。
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ヘルパーが服薬介助としてできる工夫とは?
服薬介助は薬を飲めるように介助することです。薬や水を渡したり、服薬しやすいように体を起こしたり、といった、医療行為に該当しないものに限られます。
高齢者の中には、処方された薬を飲まない、逆に、薬を飲んだのに飲んでいないと思い込むなど、対応に困ることもあります。
そんな時、以下の工夫をしてみると、服薬の援助が、スムーズになるかもしれません。
服薬カレンダーを使う
日付や曜日ごとに薬を仕分けてセットしておける、服薬カレンダーというものがあります。あらかじめ飲むべき薬をセットしておくことで、飲み忘れた日や時間帯がなかったか、が一目瞭然です。
服薬カレンダーは、よく見える場所に置くか、吊り下げるかして、きちんと薬を飲んだかが、すぐ分かるようにします。
服薬カレンダーに薬を仕分けする行為は、居宅療養管理指導を行う訪問薬剤師や訪問看護師、または家族が行う行為です。
しかし、ヘルパーが、事前に整理(一包化)された薬を、カレンダーにセットするだけであれば、生活援助。それを薬や水を渡したり、服薬しやすいように体を起こしたりするのは身体介護。また、ご利用者本人が仕分けする行為を、見守り・声掛けするのは身体介護となります。
(*ケアマネージャーが、サービスにどのような意味づけをしているかによって、算定が異なる場合があります。また、保険者によっても算定のルールが異なる場合もありますので、注意してください。)
そのほかの工夫
そのほか、ちょっとした工夫で服薬の「お手伝い」をすることはできます。
声かけ
ヘルパーやご家族が服薬の声かけをするのも、効果的です。服薬カレンダーや薬箱の近くに、アラームを設置して、薬の時間にコールがなるようにすると、薬の時間を認識しやすくなります。
メモ書き
「薬は飲みましたか?」とメモ書きを置いておくのも効果的です。声かけと同時に、薬を飲んだか確認する内容が書かれたメモなどを、目につく位置に置いておくと、自分から服薬を思い出してくれる可能性が上がります。
まとめ
「処方された薬の仕分け」については、ご家族や訪問看護師、居宅療養管理指導(薬剤師の訪問)での対応となります。
ヘルパーは、一包化(一袋にまとめる)された薬の袋を、開封し、利用者に飲んでいただくように声掛けをします。
ご本人が仕分けする場合は、ヘルパーが一緒に確認・声かけするのも可能です。
ヘルパーが、訪問介護でご利用者のケアを行う時に、その内容を表してくれるのが、ケアマネージャーが提案したケアプランと、それを基にして準備された訪問介護計画書となります。
どのようなサービスでプランに位置づけるかを、ご利用者本人、ご家族、ケアマネージャー、医療従事者等ともよく話し合った上で、安全な服薬介助ができるように検討しましょう。
歳を重ねるごとに、人の身体からは、新たな疾患が見つかりやすくなります。
そのため高齢者の多くは薬を服用していますし、処方される薬の種類も多くなりがちです。
薬剤の受け取りから服用時の仕分け、包装から薬剤の取り出し、セッティング、水の準備、内服、内服確認、そして後片付け。
一連の行為の中で、誰が、どこの部分を、どのように支援するのか、チームや事業所で十分に話し合ってみてください。
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介護・福祉の総合マーケットキャプスの管理者です。
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