通所リハビリテーション(以下:通所リハ)では、利用者さんの能力に応じて自立した日常生活ができるように、リハビリテーションなどのサービスを提供しています。
わたしたち職員は日々、利用者さんの介助やリハビリテーションなどのサービスの提供、記録や報告などさまざまな業務で忙しいですよね。慌ただしく仕事をしている中で、ふと「人手が足りないな」と感じることはありませんか?
人手不足を感じたときに「自分が働いている施設の職員数は利用者さんの人数に対して適正なのかな?」と疑問に思うこともあるかもしれません。
ですが、人員基準を満たしていても「人手不足感」を感じることもあるのです。
この記事では、通所リハの人員基準のご紹介や人員基準を満たしていても感じる「人手不足感」の原因と対処方法を解説しています。
ぜひ、最後まで読んで日々のお仕事に役立てていただけると嬉しいです。
通所リハの人員基準について
通所リハの人員基準をご存知ですか?
厚生労働省では、適切なサービスを提供するために通所リハの人員を定めています。人員基準が守られていないと、業務の負担が増えるだけでなく、減算の対象となったり施設運営が難しくなったりしてしまいます。
そこで、通所リハの人員基準についてご紹介していきますね。
医師:専任の常勤医師 1人以上
※病院・診療所と併設されている事業所、介護老人保健施設、介護医療院では、当該病院等の常勤医師との兼務可。
従事者:単位ごとに利用者10人に1以上
従事者…理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、介護職員
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士:上記の内数として単位ごとに利用者100人に1人以上
※所要1~2時間の場合、適切な研修を受けた看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ師で可
もっと詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてくださいね。
2024年度版介護サービスコード表
2024年4月の報酬改定に対応した【全サービス掲載】介護サービスコード表 です。
携帯用サービスコード表として、介護サービス・介護予防サービス・地域密着型サービス全般について基本的なサービスコードを抜粋し、その合成単位・内容の概略について記載しています。
人員基準を満たしていても「人手不足」だと感じるのはなぜ?
通所リハでは人員基準にも定められている通り、さまざまな職種の人が働いています。あなたの施設では、人員基準を満たしていても「人手不足」だと感じることはありませんか?
実際に、通所リハで働いている筆者の施設も人員基準を満たしていますが「人手不足だな」と感じる瞬間がいくつかあります。
そこで、この記事を執筆するにあたり、筆者と同じように通所リハで働く方に「人手不足だと感じる原因」について筆者のTwitterでアンケートをとってみました。また、人手不足を感じる原因として選択肢にあげた項目は筆者が日頃感じていることを選択肢としてあげました。
■筆者が人手不足だと感じる原因■
①報告や記録作業などの業務量が多い
②スタッフ同士の連携不足
➂経験の浅いスタッフが多く、業務遂行に時間がかかる
回答人数は少ないものの、筆者と同じように「人手不足感」を抱えている方がいらっしゃることが分かりました。
次では「人手不足感」の原因の実態を、通所リハの現状から詳しく解説していきます。
原因1:報告や記録作業などの業務量が多い
通所リハでは、利用者さんの介助やリハビリテーション、レクリエーションなどの業務以外にも「報告」や「記録」などの作業があります。
「通所リハビリテーション計画」や「具体的なサービスの記録」「苦情や事故などの記録」など必須の作業の他にも、家族と連絡をする場合もあります。また、利用者さんに何かいつもと違う点があれば家族やケアマネ、スタッフ同士で情報を共有したり確認をしますし、会議などがあればその都度記録をとることもあります。
利用者さんに直接かかわる業務に加え、報告や記録などの業務が多いのが現状です。報告や記録などにかかる作業時間が確保できていれば良いのですが、利用者さんの送迎などを行っている場合、送迎後に報告や記録作業を行う方も多いのではないでしょうか。
報告や記録などの業務の場合、人によっては「何を書いたらいいのか分からない」「効率よく書けず、時間がかかってしまう」なんてこともあるのではないでしょうか。そうなると、報告や記録作業にかける時間が長くなってしまい、結果的に業務量が多いと感じてしまうかもしれません。
原因2:スタッフ同士の連携不足
さまざまな職種、多くの人が働く通所リハではスタッフ同士のコミュニケーションが大切です。施設によっては休みが決まっておらずスタッフがバラバラに休みを取ることもあり、同じ日にスタッフ全員が集まることも少ないかもしれません。
また、自分の業務以外にも利用者さんの安全に気を配らなければいけませんので、通所リハの現場は常に気を抜けないと感じることもあるでしょう。
そんな中、自分の業務だけに集中してしまうと、他のスタッフが何をしているのか分からずスタッフ間の連携が不十分になってしまいます。そして、結果的には「人手不足」を感じてしまうことになるかもしれません。
スタッフ同士の連携が不足していると、できる人ばかりが業務を遂行しがちです。それが続くと業務量に差が出てしまい、「忙しい、人手不足だ」と感じやすくなってしまいます。
原因3:経験の浅いスタッフが多く、業務遂行に時間がかかる
介護の現場では、辞めていく人もいますが、新しく入職してくる人も多いです。
誰でも新しいことを覚えるのは時間がかかりますよね。また、同じ職種だったとしても、新しい職場では勝手が違うことも多々あります。
経験の浅いスタッフが多いと、同じ業務内容でも不慣れな分、時間がかかってしまいます。仕事は待ってくれませんので、その分他のスタッフの業務量が一時的に増えることで「人手不足感」を感じてしまうのではないでしょうか。
ただし、これはスタッフの経験が増えてくるとスムーズに業務遂行ができるようになりますので、スタッフが独り立ちできるような支援も大切でしょう。
「人手不足感」を解消するにはどうしたらいいの?
上記の「人手不足感」の原因を元に、解決案を3つご紹介いたします。
1.優先順位を決め、効率良く働く
業務の中には「今すぐ行う業務」「その日のうちに終わらせなければいけない業務」と「本日中ではないが期限が決められている業務」があります。
- 今すぐ行う業務:利用者さんのトイレやお風呂などの介助 等
- その日のうちに終わらせなければいけない業務:実施記録や看護記録、施設によってはスタッフと家族間でやり取りしている記録(ノート)等
- 本日中ではないが期限が決められている業務:計画書、利用者さんの経過を会議までにまとめる 等
だいたい上記のように分類されることが多いと思います。
この中でも、実施記録などその日のうちに記録するものは効率よく終わらせましょう。ですが「何を書いたら良いのか分からない」「効率よく書くコツを知りたい」と思う方もいると思います。そんな方はこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
たくさんの業務がある通所リハでは、あれもこれも…と同時進行で業務を行うと結果的にどれも中途半端になってしまい、忙しく感じてしまいます。優先順位をつけて業務を行うことで、効率よく働くことができますよ。
2.コミュニケーションをしっかりととる
スタッフ同士のコミュニケーションをしっかりとることは、とても大切です。
通所リハの現場では、一人では仕事が回りません。一緒に働く人みんなで(チームで)働いているのです。チーム間の協力が希薄な状態では、業務効率の低下や事故などのリスクが高まります。
プライベートな内容を聞く必要はないと思いますが、社会人として気持ちよく働けるようなコミュニケーションを心がけたいですよね。また、利用者さんの情報の共有もしっかりと行うことが必要です。
3.働きやすい環境づくり
通所リハのスタッフの中には、未経験の方も少なくありません。介護未経験の方の場合ですと、知識や技術が足りなく業務遂行に時間がかかってしまうことがあります。また、慣れない仕事で不安や心配もあるでしょう。
施設によっては、資格取得の優遇、講習会や勉強会への参加など安心して業務ができるようサポートしてくれます。また、日頃から積極的にコミュニケーションをとることで相談しやすい人間関係づくりも大切です。
また、「休みを取りやすい環境」というのも働きやすい環境づくりには大切ではないかと思います。人員基準は足りているのに、休みが取りにくい、誰かが休むと業務が回らない、という環境では長く働こうという人はいなくなってしまいます。長く働く人がいない職場は、常に求人をしなければいけませんし、人手不足で業務が圧迫されてしまう、余裕を持って仕事ができないとミスをしてしまう‥という悪循環に陥りかねません。
スタッフ一人ひとりが余裕を持って働ける環境だと嬉しいですよね。
まとめ
通所リハでは、人員基準を満たしていてもさまざまな理由から「人手不足感」を感じてしまうことがあります。
その原因は、自分の働き方の中にあったり周囲のスタッフとの関係の中にあったりさまざまです。一度、立ち止まって考えてみることも大切ではないでしょうか。
この「人手不足感」を感じてしまう原因を見つけて、人手不足感を解消していきましょう。そして、余裕を持って楽しく働いていけたら嬉しいですよね。
投稿者プロフィール
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作業療法士×ライターです。
みなさんに介護の情報を分かりやすくお届けします。
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