ホームヘルパーの仕事内容|できること・できないことを詳しく解説

訪問介護

ホームヘルパーの仕事内容は多岐にわたります。

ホームヘルパーの正式名称は、訪問介護員。認知症や身体に障がいがある高齢者が、自立した生活を送れるようサポートする介護サービスのスペシャリストです。

高齢の人が介護職の人全般を「ヘルパーさん」と親しげに呼んでいるのをよく耳にしませんか。「ヘルパーさん」は、高齢者にとって最も身近な介護のプロなんです。                    

この記事では、介護保険法上のホームヘルパー(訪問介護員)の仕事内容を解説しています。

併せてホームヘルパーとして仕事をするために知っておきたい「できること・できないこと」、「仕事してのやりがい」なども事例を含めて紹介しています。

ホームヘルパー(訪問介護員)の仕事内容は?

ホームヘルパーは訪問介護事業所に所属し利用者の自宅において身体介護や生活支援の介護サービスを提供するのが主な仕事です。

ホームヘルパーの仕事は、以下の分野に分けられます。

身体介護

利用者が食事や入浴などの日常生活動作が困難で、介助を必要とする場合にヘルパーが行う介助です。世帯や家族の状況に関わらず、ケアマネージャーの作成するケアプラン(居宅サービス計画)に記載されたサービスを利用することができます。

食事や着替え・入浴・排せつの介助・服薬介助、移動移乗の介助、家事の付き添い、歩行や排泄、入浴の見守り・声かけなどが身体介護に入ります。

生活援助

利用者の身体に直接触れない範囲で基本的な日常生活の介助です

掃除や洗濯・買い物・薬の受け取りなどの援助以外に調理も行います。

相談・助言

ときには利用者やご家族から、課題や不安点、悩みなどを打ち明けられることもあるでしょう。

利用者やご家族からの相談を受け止め、上司や同僚と情報を共有したうえで、適切なアドバイスを行うこともホームヘルパーの仕事です。

ホームヘルパーの仕事の範囲

利用者と一対一で向き合うホームヘルパーの仕事では、利用者への手助けが介護サービスに該当するかどうか曖昧になってしまうことが度々あります。

できること・できないことの基準を明確にしておきましょう。

ホームへルパーができること

ホームヘルパーができる業務は、基本的に利用者の日常生活をサポートすることに限られます。

また、医療行為は原則禁止ですが、下記の項目は身体介護として認められています

  • 体温計測・自動測定器による血圧測定
  • 血圧測定
  • パルスオキシメーターの装着
  • 切り傷や擦り傷、軽度の火傷などの処置
  • 軟膏や湿布、点眼薬、座薬を使用した介助
  • 通常の口腔ケア
  • 爪切りとやすりがけ
  • 通常の耳掃除
  • ストマ装具のパウチにある汚物の除去

参考:介護職員が行える医療的ケアの範囲

医療行為に関連することでヘルパーが対応できるのは、専門的な判断を必要としない場合のみです。

なお、平成24年4月に行われた法改正により、定められた研修を受けた介護職員は、たんの吸引(咽頭の手前までが限度)・経管栄養の処置を行うことが認められています。

ホームヘルパーができないこと

ホームヘルパーは、介護対象者の日常生活の援助を行うことが仕事です。当人以外(同居家族など)の生活援助や日常生活に必要なものとして認められない援助は行えません

直接本人の援助に該当しないもの

日中も生活を共にしている同居家族がいる場合は、訪問介護での生活支援は認められていません。
また、利用者以外の家族への調理や掃除、留守番、お金の管理といった援助も行えません。
郵便局、ポストへの郵便物の持ち込み・投函は市区町村によって判断が分かれているため、確認が必要です。

日常生活に必要な援助に該当しないもの

ホームヘルパーが行わなくても日常生活に支障が生じないと判断される行為や日常的に行われる家事の範囲を超える行為も行えません。庭の手入れやペットの世話、大掃除や 家具の移動、庭の手入れ、特別料理の調理などです。
そのほかにもアルコールや煙草の購入や金銭の管理、公文書などの代理人行為などもできません。

届け出のないヘルパーの利用者の移送

介護保険制度では、ヘルパーは自らが運転する車に利用者を乗せてはいけないという決まりがあります。有償移送の届け出をし、かつ定められた講習を受けたヘルパーがケアプランに定められた内容で運転する場合のみ、乗車させることが可能です。
ヘルパーが身体介護の範囲で行う援助のなかに通院等乗降介助というサービスがありますが、これは乗車時の介助と降車時の介助のみとなりますので注意が必要です。

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訪問介護におけるサービス行為ごとの区分など、介護のプロとして大切な知識がぎっしり掲載されています。
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ケアプランにないことを頼まれたらどうする?

訪問介護の場合、利用者宅でのサービスとなるため、ちょっとした「ついで」を頼まれがちです。
しかし、「これぐらいならいいだろう」と引き受けてしまったことで、その後の援助や他のヘルパーにも影響が出てしまうこともあります。
プロ意識を持ち、きちんと「できること・できないこと」を伝えることが大切ですが、迷ったり困ったりした場合は事業所やケアマネージャーへ確認・相談しましょう。

ホームヘルパーに求められる役割

これまで見てきたように、利用者の身体介護・生活援助を行うことがホームヘルパーの仕事であり役割ですが、時に利用者家族のサポートをしなければならないこともあります。
家族に介護が必要になると、本人だけでなく介護をしている家族も介助のために気持ちが沈んだり、生活について悩みを抱えることがあります。

ホームヘルパーがそんな介護の悩みを聞いたり、アドバイスを行うことで、家族の負担を軽減できますし、利用者にとってもより良いケアが受けられることになります。内容によっては事業所で共有したり、ケアマネージャーなどと連携する必要があるかもしれません。

利用者や利用者家族と関わりが強い関係にありますので、利用者が快適に過ごせるのはもちろん、家族の変化にも目を配り、異変があればすぐに各所と連携するという役割も担っています。

ホームヘルパーのやりがい

ホームヘルパーの仕事はマンツーマンで行うため、一人ひとりに寄り添ったケアを実現できます。利用者が暮らしやすい環境を整え、感謝の言葉や笑顔に触れることができるのは、ほかの仕事にはないホームヘルパー(訪問介護員)ならではのやりがいです。

ここで、筆者がヘルパーとして働いてきたなかで印象に残っている事例をいくつか紹介します。

【ケース1】認知症でもできる!

20年ほど前、私はホームヘルパーとして初めて、80代後半で独居、いわゆる「ゴミ屋敷」で暮らす認知症の人の生活援助に行きました。勝手に物を捨てたり片付けはできないので、本人から許可を得ながら援助を行いました。

ある日、台所の掃除をしていた時に、何時のものかわからない、瓶に入った真っ黒な梅酒様の物を発見しました。「うわ!」と私が叫んだのと「あら!」と利用者様が喜びの声を上げたのが同時でした。利用者様にとっては大切なものであったのでしょう。見つかったことをとても喜んでいました。
とはいえ状態がわからないものを置いておくわけにはいかず、事業所へ連絡し、一旦預かるということで持ち帰ることになりました。

すると、利用者様がその瓶を新聞紙で丁寧に包み、紐で持ち手まで作ってくれ、「気を付けて」と渡してくれたのです。

その気遣いに、「認知症になっても出来ることはいっぱいあるのよ」と、最初の利用者に教えてもらった経験です。その後、認知症の方と接する機会は多くありましたが、その方にとって大切なものを知る、できることはやっていただく、ということを大切にしています。

【ケース2】家族の願い

訪問看護と訪問介護が入る癌患者さんのターミナルで、褥瘡ケアや清拭等を行ったことがあります。
冬の2月の寒い中でした。

看護師とヘルパーで行う介助ですが、家族も積極的に介助に参加してくれました。「自分たちにできることはしたい」「どうしたらお父さんが楽に気持ちよく過ごせるだろう」と一生懸命でした。

特にヘルパーに熱心に尋ねられたことは、顔や身体の拭き方、順番、温度、手浴や足浴の方法、ドライシャンプーの方法、寝たままで着替えさせる方法やオムツの替え方、環境の整え方、コミュニケーションの取り方などです。

一日でも長く、楽しく気持ちよく一緒に過ごすことができるように…との家族の願いでした。

医師や看護師とチームを組んで行った初めてのターミナルは2か月で終了しましたが、家族も本人のケアにしっかりと携わることができた結果、寂しさの中にも「良かった」という思いがあると話してくれました。

私たちの仕事だから、私たちがやったほうが早いなどと線を引きすぎず、場合によっては本人や家族の想いを大切に介助にあたるということが大切だと教わる事例でした。

【ケース3】本当にして欲しかったこと

パーキンソン病の女性の支援にあたったときのことです。
パーキンソン病が進行していて体の動きが悪くなるのと同時に歩行が不安定になり、転倒が増えてきていました。

そんな中、「一緒に作ってくれないか」と利用者様が提案してきたのが、長年趣味で作り続けてきた和紙の小物作りでした。静止時震戦という症状の中、震える指先を使って厚紙を折り、和紙をちぎり、糊を付けて組み立てていく細かい作業です。

私は不器用で、なかなかうまく折ったりちぎったり貼ったりが出来ず「あんた、下手やね」とよく笑われました。筆立てや小物入れ、箸置き、いろいろ一緒に作りました。

最終的には、病院併設の介護施設へ入所されましたが、「とても楽しかった、いっぱい作ったね」と小さな声で、表情の出ない顔を精一杯笑顔にして手を振ってくれたことを覚えています。

ホームヘルパーの仕事はケアプランで決められている内容を如何に利用者の意向に沿って実施できるか、ということだと思います。忙しいからごめんなさい、と断ることもできるけれど、事業所全員で利用者の意向を理解してケアマネージャーも含めて周囲で支えていくことです。
この方が「本当にして欲しかったこと」をして差し上げることができた。私にとってもとても思い出深い経験となりました。

【ケース4】利用者の望むそれぞれの暮らし

拾った猫と一緒に暮らしていた認知症の利用者は、訪問するといつも猫と一緒に寝ていました。
猫の毛にまみれた室内は、決して衛生上良いわけではありません。でも『猫と一緒に暮らす』ということがこの利用者様の望む生活。
それは、限界まで家族やスタッフの支援で続けることができました。

ホームヘルパーの仕事について|よくある質問2つ

ホームヘルパーになりたての新人さんやこれからチャレンジしようと思っている人から良く受ける質問を2つ紹介します。

ホームヘルパーの仕事はきつい?

ホームヘルパーの仕事は訪問先の移動時間の多さや、利用者との相性もあって「きつい」と感じる人も少なくありません。実は私も認知症の利用者から何度も自分の苦情を聞いて「きついなあ」と思っていました。

対人援助の仕事なので、やはりストレスがかかりますよね。

どうしても利用者との相性が悪いときは、我慢せずにサービス提供責任者に相談してみましょう。お互いに人間同士ですから、仕方のないこともあります。一人で何もかも背負う必要はありません。

また、介助をするうえで、足腰を痛めてしまう人もいます。移動も多く、体力面できついという人もいるでしょう。
がむしゃらに介助を行っていると自分自身の体を壊してしまうこともあります。しかし、介助技術をきちんと学ぶことで、体を痛めない介助、最小限の力で介助が行えるようになります。
長く快適に仕事を続けていくには、介助技術を積極的に学ぶのもひとつです。

介護に役立つ人体力学

移動や移乗の介助など、「介護」の現場で役に立つ体の動かし方を紹介。
抱き起すとき、車いすに乗り換えるとき、力任せの動作では、介護する人はもちろん、介護を受ける人にも、大きな負担がかかります。
そんなとき、体のねじりや連動、相手との距離を上手に使うと、相手を意外とラクに動かすことができます。息を合わせ、力を連動させる人体力学的介護術。

介護する人、される人がラクになるのを助ける一冊です。

ホームヘルパーに向いている人ってどんな人?

どの仕事でも同じかもしれませんが、ホームヘルパーとして向いているのは
「コミュニケーション能力に優れている」
「体力に自信がある」
「責任感が強い」
「臨機応変な対応ができる」
「冷静な判断ができる」
といった人です。

ホームヘルパーの仕事は毎回いろいろなことがありますが、帰る時に「また、お願いね。ありがとう。」と手を振ってくれます。
そんな時に「ああ、良かった」と感じられる人は皆ホームヘルパーに向いていると私は思います。

まとめ

ホームヘルパーは、訪問介護の利用者本人が自立し満ち足りた生活を送れるサポートと、家族の身体的・精神的負担を減らし、その人らしい暮らしができるようサポートする心強い存在です。

いろんな利用者と出会うホームヘルパーという仕事。

どのような利用者でも在宅で暮らすことが難しくなれば、いずれ入所や入院となってお別れになります。

でも、利用者の“生きる”や“暮らす”ことに対する意欲を引き出し、サポートができるホームヘルパーは、やりがいのある仕事です。ぜひ一緒に頑張っていきましょう!

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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