放課後等デイサービスの事故は防止できる?事故事例と防止策を解説!

児童福祉

放課後等デイサービスを運営している事業者にとって、事故をどのように防げばいいのかは頭を悩ませる課題のひとつです。
障害や発達に遅れのある子どもが利用する放課後等デイサービスでは、その特性上どうしてもさまざまな事故やトラブルが生じやすいものです。         

この記事では、放課後デイサービスでどのような事故が起きるのか、実際の事故事例と起きやすい事故の対策、保護者との関係性の作り方などを紹介しています。           

放課後等デイサービスは、さまざまな特性を持った子どもたちが利用しており、トラブルや事故が発生しやすい場所です。

しかし、放課後等デイサービスは、子どもたちに社会性を学ぶ場、心身の成長をサポートする療育の場として、行動に制限をかけるわけにはいきません。子どもたちが社会的スキルやコミュニケーション能力を学んでいく過程で起こりうる事故やトラブルについて、周囲がそれを理解し、予防できる環境を作っていくことが大切です。

では、放課後等デイサービスで起こりやすい具体的な事故の例を挙げていきましょう。

公園で遊んでいたら…

児童を公園で遊ばせていた際、公園に遊びに来ていた他の子どもとトラブルになってしまった。

買い物体験でトイレに行ったら…

支援員1名、児童1名のマンツーマン体制での買い物体験支援を行っていた際に、2名そろってトイレに入って用を足したところ、児童が先に用を終えてトイレを出てしまい、一時見失ってしまった。

1対1のはずが…

保護者を待つ間、児童が外に出たがり2人で玄関先の階段で座って待っていた。のんびり話などしていたが、道路の向こうから近づいてくる保護者を見つけると急に走りだした。制止するが間に合わずに道路を渡ってしまった。

施錠を忘れて…

事業所の施錠忘れにより児童が事業所の外へ出てしまった。

スタッフ間の声掛けが…

児童に付き添っていた支援員が持ち場を離れる際、他の職員への声掛けと引継ぎを怠ったため、職員たちが気づかないうちに部屋から児童が出て行き非常階段に隠れていた。

持ってきた水筒の置き方で…

入室後水筒の置き方で児童3人が揉め、一人が振り回した水筒が他児童のこめかみに当たった。職員は他の児童の受け入れを行っておりその場には児童だけだった。

放課後等デイサービスでは、子ども同士の暴言や暴力、いじめなども見られます。そういう場合は、当事者の話をゆっくり聞くことが大事です。一方的に片方の児童を叱ったり注意をするのではなく、なぜそんな行動になってしまったのか、一旦落ち着いて話ができるように別室で話を聞いてみましょう。
もしもケガなどが発生した場合、医療機関の受診を最優先に行います。

支援中に職員が同様の行為を受けることもあります。噛まれたり、引っかかれた職員を私は何度も目にしました。職員は、「自分の支援の方法が悪かったのではないか」とか、「怖くてもう嫌だ」と感じることも多いです。事業所として職員を守るどのような手立てがあるのか、きちんと伝え話し合いましょう。

また、周辺住民からの苦情や意見はきちんと受け止め、理解を示しましょう。具体的な苦情には迅速に対応し、改善策を共有することで信頼関係が築けます。施設への理解があれば、大切な仲間になってくれるはずです。

多様なニーズを持つ児童が集まる放課後等デイサービスでは、突発的な事故が起こるリスクが高いです。ここからは、送迎時や外出時、施設内での事故対策と、事故後の保護者との関係性維持について詳しく説明します。

送迎時は、特に注意が必要な場面です。以下に、送迎時の事故対策について紹介します。

車両の安全管理

  • 定期点検と整備車両の定期的な点検と整備を行い、常に安全な状態を保つ。
  • シートベルトの確認…乗車前に全ての児童がシートベルトを正しく装着していることを確認する。

乗降時の安全対策

  • 乗降エリアの確保安全な場所での乗降を行い、交通量の多い場所を避ける
  • スタッフの配置…乗降時には職員が必ず付き添い、児童の安全を確保する。

緊急時の対応策

  • 緊急連絡先の準備…緊急時には迅速に連絡できるよう、医療機関や全ての保護者の連絡先を常に携帯
  • 避難訓練定期的に避難訓練を行い、事故発生時の対応手順を確認

外出時には、予期せぬ事故が発生するリスクが高まります。

計画的な準備

  • 事前調査…外出先の環境を事前に調査し、危険箇所や避難経路を確認する。
  • 安全対策用品の準備…救急箱や緊急連絡先リストなど、必要な安全対策用品を準備する。

集団行動のルール

  • グループ分け…少人数のグループに分け、それぞれに担当職員を配置する。
  • 連絡手段の確保無線機や携帯電話を利用し、職員同士が常に連絡を取り合えるようにする。

緊急時の対応

  • 応急手当の訓練…スタッフは全員、応急手当の訓練を受ける。
  • 事故報告書の作成…事故が発生した場合は、詳細な事故報告書を作成し、関係者に報告する。

施設内でも事故は起こります。突発的な動きや思いがけない行動で「えっ!」と思うようなことが起こってしまいます。

環境の整備

  • 危険箇所の除去…施設内の危険箇所を定期的にチェックし、必要に応じて改善する。
  • 安全教育…児童に対して、施設内での安全ルール定期的に指導する。

スタッフの配置

  • 適切な人数配置…エリアに適切な人数の職員を配置し、常に児童の様子を見守る
  • 巡回の実施…職員が定期的に施設内を巡回し、異常がないか確認する。

緊急時の対応

  • 緊急対応マニュアルの整備緊急時の対応マニュアル整備し、全スタッフが熟知していることを確認する。
  • 緊急連絡体制の確立緊急連絡体制確立し、迅速に対応できるようにする。

放課後等デイサービスでは、制度的に保護者は「利用者」として事業者と契約を結ぶ関係にあります。契約時に当該児童の特性についてしっかり話し合い、事業所が提供できるサービスに納得していただくことがスタート地点です。

互いの理解と信頼に基づく家族と職員との関係に必要なポイントは、3つです。

透明な情報提供

  • 事故報告…事故が発生した場合、速やかに保護者に報告し詳細な説明を行う。
  • 定期報告…日常の活動や子どもの様子を定期的に保護者に報告し、透明性を保つ。

保護者とのコミュニケーション

  • 定期的な面談…定期的に保護者との面談を実施し、子どもの状況や今後の対応について話し合う。
  • 相談窓口の設置…保護者からの相談や質問に対応する窓口を設置し、迅速に対応する。

事故後のフォローアップ

  • 障害児支援利用計画の見直し…事故後に支援計画を見直し、必要な対策を講じる。
  • 継続的なサポート…保護者に対して事故後も継続的なサポートを提供し、安心して子どもを預けられる環境整備を行う。 

放課後等デイサービスでは、様々なトラブルが発生する可能性がありますが、予防策を講じることで、これらを最小限に抑えることができます。

放課後等デイサービスでトラブルを未然に防ぐためには、利用者や職員、保護者が守るべき明確な運営ルールの策定が不可欠です。これには、施設内の行動規範や安全対策、緊急時の対応プロセスが含まれます。

ルールを策定したらHP等で情報を周知し、理解を促しましょう。さらに、定期的にルールの見直しを行い、必要に応じて更新することで常に現状に合った運営が目指せます。

職員の質は、放課後等デイサービスの質に直結します。そのため、定期的な研修や勉強会を通じて専門知識と対応能力を向上させることが重要です。

研修では、児童の発達に関する知識、緊急時の対応、保護者とのコミュニケーション方法など、多岐にわたる内容をカバーしましょう。実際に発生したトラブル事例を共有し、その解決方法を検討することも、予防策として効果的です。

保護者との良好なコミュニケーションは、トラブルや事故予防において不可欠です。定期的な保護者会やHPのブログ等を通じて、施設の運営方針や活動内容、子どもたちの様子を共有することが大切です。

また、保護者が施設に期待すること不安・懸念を共有できる相談や面談の機会を設けることも重要です。

放課後等デイサービスにおいて、事故の発生は避けられないリスクの一つです。しかし、適切な対策を講じることで事故の発生を最小限に抑え、発生した際の対応を迅速かつ適切に行うことができます。また、保護者との関係性を維持するためには、透明な情報提供とコミュニケーションが欠かせません。

信頼関係を築き、子どもたちが安全に、そして安心して過ごせる環境を提供することが、放課後等デイサービスの使命です。

放課後等デイサービスに関わる全てのスタッフが、日々の業務においてこれらのポイントを意識し、実践することが、子どもたちの健やかな成長を支える重要な役割を果たすことでしょう。

参考文献:良く分かる子ども家庭福祉 吉田幸恵・山縣文治 編発達障害・知的障害のための合理的配慮ハンドブック 土橋圭子・渡辺慶一郎 編

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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