放課後等デイサービスの立ち上げに必要な条件は?今後の放課後等デイサービスの考え方

児童福祉

放課後等デイサービスは、障害を持つ子どもたちが放課後や休暇期間中に過ごすための施設です。新規に開業するには、一定の要件や基準を満たす必要があり、また運営を安定させるために助成金や補助金を活用することも重要です。

この記事では、放課後等デイサービスの開業に必要な要件や具体的な開業の流れ、利用可能な助成金や補助金について詳しく紹介しています。また、令和6年の報酬改定や変化する保護者のニーズなどについてもまとめています。

放課後等デイサービスの立ち上げにお役立てください。

放課後等デイサービスを開業するためには、会社・事業所として以下の条件を満たしている必要があります。

  • 法人格を有していること
  • 人員基準を満たしていること
  • 設備基準を満たしていること
  • 運営基準を満たしていること

それぞれ詳しく見ていきましょう。

放課後等デイサービスは個人では運営することができず、法人格が必要です。最近開業した放課後等デイサービスでは、株式会社や合同会社が多い傾向にあります。

必要な職種

管理者
事業所全体を管理する責任者が必要です。福祉施設での実務経験が一定期間以上あることが求められることが多いですが、資格は特に必要とされません。

児童発達支援管理責任者
管理業務に支障がない場合、他の職務を兼務することが可能。支援計画の作成と管理を担当する者で、当該研修修了と実務経験が必要です。

児童指導員又は保育士
子どもたちの日常支援を行う職員で、指導員任用資格や保育士資格等が必要です。
その他機能訓練指導員看護職員など、必要であれば配置が求められます。

配置基準

スタッフの配置数
児童数に応じた適切な人数のスタッフを配置することが求められます。管理者は、1以上で管理業務に支障がない場合は他の職務を兼務することが可能
児童指導員または保育士は、児童が10人までは2人以上必要。児童が10人を超えて5人またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上の人数が必要
児童指導員または保育士のいずれか1以上は常勤であること。といった基準があります。

具体的な基準は自治体の規定に従いましょう。

  • 発達支援室                                               児童一人当たりの必要な面積を確保することが求められます。一般的には一人当たり約2.47㎡以上が基準となりますが、地域によって異なるため、具体的な広さについては自治体の指導を確認する必要があります。
  • 相談室相談室                                              利用を検討している保護者等に応接するためのスペース。プライバシーに配慮し、独立した部屋もしくはパーテーションの設置等が求められます。
  • 事務室                                                 職員が事務業務を行うためのスペース。特に広さの指定はありませんが、事務机やPC、複合機などの設置ができるくらいの広さは必要でしょう。

その他、洗面所トイレ、利用する児童の障害によっては、静養室遊戯室屋外遊戯場医務室などの設置が必要な場合もあります

事業所を適切に運営するための基準が運営基準です。以下に主な運営基準の項目を挙げます。

  • 利用定員(原則10名以上、重症心身障害児が主の場合は5名以上)
  • 放課後等デイサービス計画の作成
  • 内容及び手続きの説明及び同意
  • 運営規程
  • 緊急時の対応
  • 非常災害対策

    この項目を具体的に作成していくことになります。契約書や重要事項説明書等にも必要な内容なので十分に検討して作り上げましょう。

    具体的な開業・立ち上げの流れをまとめてみました。

    1. 法人設立
    2. 事業計画書の作成
      事業計画書は放課後等デイサービスの許認可を受ける指定申請時に提出を求められることがあるほか、金融機関から融資を受ける際にも必要です。
    3. 資金調達
    4. 物件探し・契約
      設備基準を念頭に準備しましょう。
    5. 従業員の採用・利用児童の獲得
      人員の配置基準があります。指定申請を行う前に、おおよその利用児童数から求人を行い、従業員を採用できるようにしましょう。
    6. 備品等の調達
      事務機器等のほか、児童が使用するロッカーや絵本、おもちゃ、教材、衛生管理や安全管理のための用品等です。
    7. 指定申請
      放課後等デイサービスを開業するためには、「指定申請」が必要です。指定申請の前の段階で「事前相談」が必要となるケースもありますので、開業希望月の『3か月前〜6か月前』までに市町村の担当窓口へ一度、開業の相談をしておきましょう。

    放課後等デイサービスの立ち上げに必要な資金は、概算で初期費用の800万円+運転資金4カ月分の500万円+当面の自身の生活費が200万円で、合計1500万円くらいです。開業後も事業継続に必要な経費(ランニングコスト)が必要となり、独立行政法人 福祉医療機構の調べによると、放課後等デイサービスに代表される福祉事業での事業支出の7割は人件費となっています。

    融資には2種類あり、公的金融機関からの公的融資と、民間金融機関からの民間融資に分けられます。

    公的融資は、民間に比べると創業時あるいは創業間もない時期に受けられる融資制度が多く準備されています。

    日本政策金融公庫【新創業融資制度】

    日本政策金融公庫とは、”政策”の名のとおり、国が運営する金融機関です。日本政策金融公庫の新創業融資制度は、新たな事業を始める方が利用できる制度です。開業費用および運転費用として最大で3,000万円の融資を受けることができます。法人形態は問われず、担保や保証人も必要ありません。

    独立行政法人福祉医療機構【福祉貸付事業】https://www.wam.go.jp/hp/

    『福祉貸付事業』は、福祉事業に向けた融資となっているため、利用しやすい融資制度です。低金利(日本政策金融公庫や各自治体制度融資より更に低い)なため、土地建物などの設備資金や経営資金に活用している事業所が多くあります。返済期間は貸付金額等の条件によって異なりますが、経営資金を借りる場合は1〜3年です。

    他にも各自治体が中小企業向け融資制度として行っているものがあります。融資限度額や法人形態、返済期間等は自治体の制度ごとに異なるので、詳細に関しては各自治体窓口を尋ねてみてください。

    創業時や創業間もない時期に、民間融資を受けることはかなりハードルが高いので、まずは公的融資を検討しましょう。

    金融機関は持続可能な事業だと判断しなければ融資をしてくれません。融資を申請する際には、長期の経営計画を明確にしてアピールしましょう。

    放課後デイサービス・児童発達支援を開業し運営していくうえで「助成金」や「補助金」は「原則返済の必要がない資金」となるため、事業運営に大きなメリットです。

    助成金と補助金の違いはどこでしょうか。

    助成金

    主に厚生労働省が管轄し雇用確保、労働環境の改善を目的としています。審査はなく一定の要件を満たせば受給可能です。返済の必要は原則ありません。

    補助金

    主に経済産業省が管轄し、創業支援や設備投資関連を支援します。財源が税金であるため、申請数の枠が限られている場合があり、受給するための難易度は高くなります。事業に対する費用の一部が支給されますが、要件を満たした上で審査に通る必要があります。補助金も原則返済の必要はありません。

    キャリアアップ助成金

    非正規雇用労働者のキャリアアップ促進を目的とし、職員の正社員化実施で助成金が支給されます。

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

    働き方改革推進支援助成金

    労働環境の整備等を目的としています。生産性向上、労働時間短縮、年休促進等に取り組むことで助成金が支給されます。

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

    人材確保等支援助成金

    離職率の低下を目的とし、研修制度、諸手当等制度、短時間正社員制度等を導入し雇用管理改善に取り組むことで助成金が支給されます。

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html

    IT導入補助金

    IT導入補助金はITツール導入による業務の効率化を目的としています。中小企業、小規模事業者等が補助対象とされ、クラウドサービス、ソフトウエア製品等の導入経費に補助金が支給されます。

    使用可能な補助金や助成金は、自治体のHPや上記HPから常にチェックしておきましょう。

    また、 助成金や補助金の使途に制限があるので規定に従って適切に利用しましょう。設備投資にのみ使える助成金を運転資金に使用することは認められません。

    助成金や補助金によっては年度ごとの報告や運用計画が必要な場合があります。管理や運用を適切に記録し、報告が出来るように準備しておきましょう。

    開業数も多く、また廃業も多い放課後等デイサービス。どのようなデイサービスであれば長く生き残っていけるのでしょうか?

    今回の法改正や最近の保護者のニーズからこれからの放課後等デイサービスの方向性が見えてきます。

    放課後等デイサービスの「子どもの最善の利益の保障・共生社会の実現に向けた後方支援・保護者支援」という基本的役割のもと、今期の改正で下記の2類型に整理されました。

    • 総合支援型
    • 特定プログラム特化型

    障害特性に合わせた専門性の高い有効な発達支援と判断できない場合や、 サービス提供内容からみて障害のない子どもであれば私費で負担しているような内容は、公費対象外とみなされてしまいます。

    また、インクルーシブの観点から他の子どもたちも含めた集団の中での成長を出来るだけ保証していく視点が求められています。

    保護者も長期的な視点を持ち、単なる預かりではなく子供の情緒や感性の発達を促進することが大事だとしています。

    一部領域の支援に偏ることがないよう、支援全体のコーディネートが個々の子どもに行われる仕組みを保護者は求めている、ということです。

    特に子どもに直接かかわる指導員の専門性を保護者は求めているようです。(参考:総合教育臨床センター研究紀要

    専門性の高い質の良いサービス独自のサービスを導入できれば、今回の法改正や保護者の気持ちにも寄り沿った、いわゆる地域で唯一の放課後等デイサービスができ上がっていくことでしょう。

    放課後等デイサービスの開業には、物理的環境の整備、人員の確保、支援計画の策定など、さまざまな要件を満たす必要があります。また、開業や運営のためには、地方自治体や国の助成金、民間財団の支援を活用することが重要です。助成金補助金を上手に活用することで、初期投資の負担を軽減し、安定した運営を実現することができます

    情報収集や申請手続きには時間と労力がかかりますが、計画的に準備を進めることで、放課後等デイサービスの開業を成功させることができるでしょう。適切な支援と管理を行い、地域社会に貢献する質の高いサービスを提供することが求められます。

    新たに放課後等デイサービスを開業しようとする皆様が、この記事を参考にして、順調に事業を立ち上げ、子どもたちとその家族にとって安心で充実したサービスを提供できるよう願っております。

    投稿者プロフィール

    Mrs.マープル
    Mrs.マープル
    介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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