放課後等デイサービス法改正まとめ|加算で事業所の個性を出そう!

児童福祉

令和6年度の放課後等デイサービスに係る報酬改定では新たな加算や評価の見直しなどが多く見られました。

ただし、「どんな加算も取れるなら取る」というスタンスで種々の加算に手を出すといろいろなところに無理がでます。

この記事では、報酬改定のポイントとみられる部分をまとめました。様々な加算の中から自事業所に見合った加算を戦略的に絞って取り組むことができれば、事務作業の効率化に繋がり、結果としてそれが事業所の強みとなります。

長期的な利用者視点で加算取得を検討することも、今回の報酬改定においては重要なことと言えるでしょう。

さて、今回の報酬改定には、どのような意図や目的があったのでしょうか。

令和6年度の大きな法改正の一つは、総合支援型」と「特定プログラム特化型」に2類型化されることがあります。

放課後等デイサービスのニーズは高まる一方で、事業所の数、利用者の数ともに増加傾向にあるのが実態です。しかしながら、習い事のような特定のプログラムに偏ったサービスを行う事業所も増えているのも現状です。

そこで、今回の改正では質の高いサービスを行える事業所を増やすために、具体的にサービスの質の向上や包括的な支援体制の確立、医療的ケアを必要とする子どもたちへの対応強化などがあげられました。

今回の法改正は、このような施設を必要とする児童と保護者の方々が、安心して利用できる放課後等デイサービスをひとつでも増やすことを目的としています。

今回の報酬改定では、新たな加算の新設や既存の加算の見直しが行われました。

事業所の運営や子どもたちの支援体制に影響を与える令和6年度の報酬改定の大きなポイントのひとつが、「時間区分」の創設です。

支援時間区分の設置

支援時間による区分が「区分1〜3」に設定され、原則30分未満の支援については、算定不可となります。

ただし、平日は区分1、2のみでの算定で、区分3は学校休業日のみの算定となる点には注意が必要です。

時間区分は個別支援計画に定めた支援時間で判定することを基本としますが、事業所の都合で支援時間が短くなった場合は、実支援時間で判定することとし、欠席時対応加算(Ⅱ)が廃止されました。

時間区分に関する基本報酬の取り扱いについて、以下の4点が要件となります。

①「個別支援計画」への記入
個別支援計画に支援の計画時間を記入し、この時間に応じて基本報酬を算定することとなります。

②計画時間より短くなったら?
実際の利用時間が「個別支援計画」に記載した計画時間より短くなった場合の扱いについて明記されています。

  • 実利用時間が利用者の都合で短くなった場合→「計画時間」により算定
  • 実利用時間が事業所の都合で短くなった場合→「実利用時間」により算定

③30分未満を認める特例
区分1が30分以上からのため、30分未満の支援は今回の改定後は算定が不可能となります。ただし、特例として「周囲の環境に慣れるため等の理由」「市町村(特別区を含む)が認めた場合」には、30分未満の療育の算定が認められます。
具体的な特例の事例が明記はされていませんが、新一年生の慣らし期間や感覚過敏の子の対応などが想定されます。不明な点は自治体へ確認・相談しましょう。

④実利用時間の記録
実利用時間は「サービス提供実績記録表」において記録が必要です。かつ、個別支援計画に記載した「計画時間」と「実利用時間」が継続して異なるような場合には、個別支援計画の見直しが必要となります。

主な加算の大項目は以下の通りです。

  1. 質の高い発達支援の提供の推進
  2. 支援ニーズの高い障がい児への支援
  3. 家族に対する支援の充実
  4. インクルージョンの促進

自事業所は、どこに強みを持っているのか、これまでどのような支援を行ってきたか、利用児童や保護者のニーズはどこにあるのか、もう一度振り返って加算の取得を考えてみましょう。

支援プログラムの作成と公表
今回の報酬改定で、5領域をすべて含めた総合的な支援と、5領域とのつながりを明確にした個別支援計画などを作成し、公表することが運営基準として定められました。
5領域とは「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」です。
これらの作成と公表を怠った場合は、支援プログラム未公表減算(R7年4月1日から適用)の対象となり、所定単位数の15%減算となります。

児童指導員等加配加算の改定
これまで必要とされた員数に加え、児童指導員等の配置に合わせて雇用形態や経験年数に応じた評価がされます。

  • 常勤専従              経験5年以上      75~187単位/日
  • 常勤専従              経験5年未満      59~152単位/日
  • 常勤換算              経験5年以上      49~123単位/日
  • 常勤換算              経験5年未満      43~107単位/日
  • ※その他の従事者を配置の場合 36~90単位/日

専門的支援加算・特別支援加算の改定
今回、体制加算実施加算という新たな枠が設けられました。体制加算は今までと同じように、専門的人材の配置に算定できる加算であり、実施加算専門的人材が個別・集中的な支援を計画的に行った場合に算定できる加算となりました。
今までと同じ支援を行っていても、支援時間や配置、経験年数に応じ加算等に変更があるため、同じ報酬をもらえるとは限りません。よく条件を確認し、現状の支援だと改正後の報酬が上がるのか下がるのか、細かく確認する必要があります。

  • 専門的支援体制加算(理学療法士を配置) 49~123単位/日
  • 専門的支援実地加算(専門員剤が個別・集中的な専門的支援を計画的に実施) 150単位/日
    (原則月4回。放デイは2~6回まで。)

関係機関連携加算
保育所や学校等と情報連携をすることで加算を取得できるようになりました。また、児童相談所や医療機関等との情報連携でも取得が可能になりました。

  • 関係機関連携加算(Ⅰ)が200単位→250単位/回に見直し
  • 関係機関連携加算(Ⅱ)と(Ⅲ)が新たに追加
  • 旧関係機関連携加算(Ⅱ)が(Ⅳ)に変更

事業所間連携加算(新設)
「セルフプラン」で障害福祉サービスを使う保護者への支援のため、事業所間で連携し、子どもの状態や支援状況の共有等の情報連携を行うことを評価します。

  • 事業所連携加算(Ⅰ)500単位/日(月1回を限度)
  • 事業所連携加算(Ⅱ)150単位/日(月1回を限度)

通所自立支援加算・自立サポート加算
通所自立支援加算は、こどもの状態等も踏まえながら、通所や帰宅の機会を利用して自立に向けた支援を計画的に行った場合の評価です。自立サポート加算は、高校生について学校や地域との連携の下、学校卒業後の生活を見据えた支援を行った場合の評価を目的とした加算です。

  • 通所自立支援加算 60単位/回(算定開始から3月を限度)
  • 自立サポート加算 100単位/回(月2回を限度)

医療連携体制加算
医療連携体制加算(Ⅶ)は、今回250単位/日に大幅に見直されました。また、主として重症心身障害児を受け入れる事業所においても算定可能になりました。
医療的ケア児・重症心身障がい児、強度行動障害を有する児童への支援等については加算の変更がされています。適合する事業所は、確認して算定しましょう。

個別サポート加算
個別サポート加算(Ⅰ) 90単位/日…①120単位/日…②

    1. ケアニーズの高い障害児に対して支援を行った場合
    2. ケアニーズの高い障害児に対して強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)修了者を配置し支援を行った場合、又は著しく重度の障害児に対して支援を行った場合
    • 個別サポート加算(Ⅱ) 150単位/日

      要保護児童・要支援児童に対し、児童相談所やこども家庭センター等 と連携(支援の状況等を6月に1回以上共有)し支援を行った場合

    • 個別サポート加算(Ⅲ)【新設】 70単位/日

    不登校の状態にある障害児に対して、学校との連携の下、家族への相談援助等を含め、支援を行った場合
    ただし、こども家庭庁は、個別サポート加算(Ⅱ)の必要性について保護者に説明することが適当ではない場合があることから、この加算の算定については慎重に検討することとしています。

    家族支援加算
    家族支援加算(Ⅰ)(月4回を限度)
    入所児童の家族(きょうだいを含む)に対して個別に相談援助等を行った場合

    • 居宅を訪問(所要時間1時間以上) 300単位/回 (所要時間1時間未満) 200単位/回
    • 事業所等で対面 100単位/回       オンライン 80単位/回

    家族支援加算(Ⅱ)(月4回を限度)
    入所児童の家族(きょうだいを含む)に対してグループでの相談援助等を行った場合

    • 事業所等で対面 80単位/回        オンライン 60単位/回

    子育てサポート加算
    保護者に支援場面の観察や参加等の機会を提供した上で、こどもの特性や、特性を踏まえたこどもへの関わり方等に関して相談援助等を行った場合を評価します。

    • 子育てサポート加算 80単位/回(月4回を限度)

    延長支援加算
    延長支援加算の主な変更点としては、以下の通りです。
    延長支援加算の時間の区分と単位

    1. 算定が「営業時間前後の支援」から「基本報酬の最長の時間区分に加えて行った支援」になったこと
    2. 延長時間帯の職員配置について児童発達支援管理責任者の対応も認められることになったこと
    • 延長1時間以上2時間未満  92単位/日
    • 同2時間以上       123単位/日
    • 延長30分以上1時間未満  61単位/日(利用者都合により計画よりも延長時間が短縮された場合のみ算定可)

    預かりニーズが高い昨今の事情が反映された評価と言えます。

    保育・教育等移行支援加算
    保育・教育等移行支援加算も見直され、保育所等への移行前の移行に向けた取組等についても評価されることとなりました。

    • 保育・教育等移行支援加算  500単位/回

    ※退所前後・訪問の有り無しによって限度数が1回~2回

    自己評価等未公開減算

    • 自ら評価(自己評価)を行うとともに、当該事業所を利用する障害児の保護者による評価(保護者評価)を受けて、その改善を図らなければならない
    • おおむね1年に1回以上、自己評価及び保護者評価並びに改善の内容を、保護者に示すとともに、インターネットの利用、その他の方法により公表しなければならない。

    ガイドラインでの改定と併せて、様式や実施手順の広報があるので情報収集してください。

    放課後等デイサービス・児童発達支援は以下の基準に適合していない場合、所定単位数を減算することとなりました。

    BCP未策定の減算
    放課後等デイサービス・児童発達支援は以下の基準に適応していない場合、所定単位数を減算されます。

    • 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
    • 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること

    ※ 令和7年3月31日までの間、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合には、減算を適用しない。

    感染症のBCPと災害のBCP両方とも策定していなければ減算)

    • 新設の「業務継続計画未策定減算」は、100分の1に相当する単位数を減算

    虐待防止措置の未実施減算
    施設・事業所における障害者虐待防止の取組を徹底するため、障害者虐待防止措置を未実施の障害福祉サービス事業所等について、虐待防止措置未実施減算(所定単位数の1%減算)を新設

    身体拘束廃止未実施減算の改定

    • 身体拘束廃止未実施減算減算額を5単位から所定単位数の1%に見直す。 (訪問・通所系サービスについて)

    令和6年度の放課後等デイサービスの報酬改定では、加算の新設や見直しが行われ、それぞれに対して具体的な要件が定められました。

    事業所はこれらの要件を満たすために、人員の増加資格保持者の採用具体的な支援計画の策定などを行う必要があります。

    併せて、事務作業の効率化のための設備投資や仕組み作りを急ぐことも必要でしょう。

    自事業所はどのような運営をし、どのような加算を取得して自事業所の個別化・個性化につなげるか、経営戦略として加算の取得に取り組むことで結果としてそれが事業所の強みとなっていくのではないでしょうか。

    今回の報酬改定が、経営状況のアップだけでなく、事業所全体の業務の効率化職員全体の事業所の将来像の共有につながっていくといいですね。

    投稿者プロフィール

    Mrs.マープル
    Mrs.マープル
    介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

    関連記事

    新着記事

    コメント

    この記事へのトラックバックはありません。

    TOP