訪問介護におけるヘルパーへの掃除の要望やクレーム対応にお困りではないでしょうか。
訪問介護の生活援助は、ご利用者宅へ訪問しそれぞれの家のやり方に従って援助をする必要があります。要望に沿った援助をしなくてはいけない一方で、要望がエスカレートしていくと対応に悩んでしまうケースもあります。
そこで今回の記事では、ヘルパーができる掃除の範囲や、クレームの対応と予防策についてまとめました。
ご利用者対応に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
【訪問介護】ヘルパーの掃除範囲はどこまで対応できる?
訪問介護で提供する掃除の援助は、サービス提供責任者が作成する訪問介護計画書で決められた範囲のサービスを提供します。
しかし、ご利用者の心身の状況や要望などに対応していると、実際の現場ではどこまで受け入れて良いのか判断が付きにくいケースが出てきます。
そもそも介護保険で行える訪問介護サービスは、自立した生活をするうえで必要最低限のサービスを提供することとされています。クレームを起こさないためにもまずは、介護保険で定められているルールを頭に入れておきましょう。
ヘルパーの掃除で「できること」
訪問介護での生活援助でヘルパーが掃除できる範囲は、主にご利用者が使用する居室、台所、トイレ、風呂、洗面所等です。
床の掃除機かけ、モップかけ、拭き掃除などを行い、それに付随する整理整頓やゴミ捨て、換気なども含まれます。
あくまでもご利用者が使用する場所であるのがポイントです。
ヘルパーの掃除で「できないこと」
一方、ヘルパーができないサービスは、直接ご利用者が利用しない家族の居室や空き部屋などの掃除です。
大掃除の範疇に入るような窓の拭き掃除、換気扇掃除、庭の草むしり、床のワックスがけ、大型ゴミの処分、家具の移動などの日常の掃除範囲以外の対応もできません。
また、家事を行える家族が同居している場合も、家事は家族が行うべきなのでヘルパーは手伝えません。ただし、家族が家事を行うのが困難な場合は例外になっています。
訪問介護におけるクレーム対応の基本姿勢
クレームはご利用者が期待していたサービスが受けられなかったときに起こります。
クレームが起きた時点で、適切に対処ができていなければ怒りを増幅させ、解決を長引かせてしまいます。ご利用者との関係が崩れてしまわないように対応は慎重に行いましょう。
まずは謝罪する
クレームを受けた時は、とりあえず相手に謝罪します。理由はどうであれ、ご利用者に嫌な思いをさせてしまっているのに変わりはありません。心情を理解している態度を示します。
ただし、中には納得がいかない理不尽な内容のクレームを受ける場合もあります。苦情の詳細がわかっていない段階で、こちらがすべて悪いと非を認めるような謝罪をしないことが大切です。
事実確認
謝罪をしたあと、少し冷静になったら相手の話をよく聞きましょう。何が問題になっているのか、何が原因なのか、どうして欲しいのかを聞き取ります。
話をさえぎったり言い訳を挟んだりしないようにし、あいづちをしながら丁寧に最後まで話を聞きます。また、聞き逃しや事実誤認をしないようにメモを取るのも大切です。話を聞き終わったら、メモを見ながら内容を整理しましょう。
後日、ヘルパーからも聞き取り調査を行います。この時、クレームの対象がヘルパーであった場合は伝え方に注意してください。一方的にヘルパーが悪いと決めつけず、慎重に事実確認をするのが大切です。
対応策の提示
事実確認ができたら、対応策を検討します。解決策や代替案を検討し、可能な限り要望に沿った対応ができるようにします。
事業所側に非が無い場合は、起こった事実を伝えて事業所側の事情を説明します。ケアプランや訪問介護計画書、重要事項説明書などの訪問介護で対応できる掃除の範囲やルールなどが分かるものを持参し、事実を伝えましょう。
事業所側に非がある場合は責任者も同行し、改めて謝罪します。
ご利用者への説明や謝罪が終わったら、対応予防策を伝えます。できる範囲でご利用者の意向に沿った援助を提案する姿勢を見せることが重要です。
ただし、必要以上の無理な要求を受け入れないようにします。ヘルパーは「お手伝いさん」ではありません。今後のトラブルを回避するためにも「できること」と「できないこと」の線引きをはっきりとさせておきます。
最後に、貴重な意見をいただいた件について感謝の気持ちを伝えるのも大切です。今後も気持ちよくサービスが継続できるように締めくくりましょう。
クレームを回避するためにどうすれば良い?
クレームが起きないように十分に注意していても、訪問介護はご利用者宅で行う生活に密着したサービスゆえ、クレームが起きやすいサービスです。それぞれの暮らしに合わせた援助をする必要があり、サービスを受ける側もささいなことでも気になってしまいます。
できる限りクレームが起きないように、また起きてしまった場合は再発させないようにするのが最重要です。
再発防止策を周知徹底する
クレームが起きたときは問題に対して迅速に対応し、職場内で話し合って解決策を講じます。
クレームの経過、再発防止策は必ず記録に残し、職員全員と共有することが大切です。ご利用者個別の情報にも記載しておくと、新しい職員が対応する場合にもクレームの再発が防げます。訪問介護事業所はたくさんのご利用者を抱えており、個々の身体状況や家屋の状況も異なります。それぞれの掃除の手順や注意点をまとめてマニュアル化しておくのも一つです。
クレームの対象となってしまったスタッフに対するケアも忘れずに行いましょう。当事者やサービス提供責任者だけで抱え込まず職場全体の問題として認識し、共有すると事業所全体のサービス向上へつながります。
利用者との信頼関係を築く
日頃から、ご利用者との信頼関係を築くのも大切です。ご利用者の習慣や大切にしているものをしっかりとアセスメントしてスタッフで共有しましょう。
ヘルパーが普段からの掃除を丁寧に行ったり、ご利用者の大切な私物に触れる時には声をかけたり基本的なサービスを忠実に行うのも信頼関係を築くための大切なポイントです。
中には難しい注文ばかりしてくる方や、認知症があり対応の困難な方もいるかもしれません。しかし、常に誠実な対応を心がけ、困ったときは職員間で相談するようにします。
普段からの信頼関係が築けていれば、クレームが起きたとしても大きな問題にならずにすみます。
介護保険でできる範囲しっかり説明しておく
訪問介護の掃除に対するクレームは、介護保険制度におけるルールの認識不足から発生するケースがよくあります。そのため、介護保険で対応できる範囲は契約時にしっかりと説明しておく必要があります。
しかし、介護保険制度のルールは、ご利用者やご家族には分かりにくいものです。
ヘルパーは決められている通りの援助を行うつもりでも、ご利用者から決められた範囲外の掃除を頼まれるケースはよくあります。介護従事者側も正しい対応ができるように、介護保険制度でできる掃除の範囲をしっかりと理解しておきましょう。
また、決められている範囲外の掃除を依頼された場合は、すぐにサービス提供責任者に相談してもらうことが大切です。たとえ、介護保険制度で提供可能なサービスであっても、ケアマネジャーが作成するケアプランに組み込まれていなければサービス提供ができません。
ご利用者となじみの関係になっていくと、何でもやってあげたい気持ちを持ってしまいがちですが、トラブル回避のためにも要望はいったん持ち帰って相談しましょう。
クレームはサービス向上のチャンスととらえよう
ご利用者の心身状況や掃除の方法を理解して、快適な生活が送れるようにサポートするのがヘルパーの役割です。クレームが起きないようにするためには、援助内容の情報共有・信頼関係の構築・スタッフの接遇・身だしなみなどに常に注意をはらいながら援助にあたることが大切です。
クレームを受けると、どうしてもネガティブにとらえてしまいストレスに感じてしまうのは仕方のないことです。しかし、クレームをポジティブにとらえ、事業所全体のサービスの質が高められる機会にしていきましょう。
クレームに対して誠実に対応すれば、ご利用者からの満足度も高まるはずです。
投稿者プロフィール
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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