介護技能実習生の受け入れ ④外国人雇用の現況と雇用方法まとめ

訪問介護

この記事では、これから外国人介護職員の雇用を考えている経営・管理職の皆様へ、外国人雇用の現況と方法、そして、効果的だと考えられる外国人介護職員の雇用方法もお伝えします。

技能実習だけでなく、他の在留資格についても説明いたします。事業所に合う雇用の方法の検討に参考にしてください。

外国人雇用の現況

現在の外国人労働者数

日本国内で働く外国人労働者の数は年々増加しています。特に近年の伸びはめざましく、2016年(平成28年)に100万人を超えた後、毎年約20万人ずつ増えています。その後は、コロナ禍による外国人の出入国制限もあり、影響を見極めなければならないものの、2019年(平成31年)時点の外国人労働者数は約166万人。国内の就業者全体に占める割合では2%を超えました。

今後も増える?国内で働く外国人労働者

外国人労働者が増加する背景にあるのは、人口減少による積極的な外国人雇用政策が打ち出されたことです。                          労働力不足は世界的な問題です。ベトナム人などの人材争奪戦は、今後、更に激化すると予想されています。

外国人雇用の現況

下記の法務省の在留外国人の構成比のグラフを見てみると、技能実習、次いで専門的・技術分野(高度専門職を含む)、特定活動といった就労系在留資格を持った外国人労働者の増加率が高くなっています

国籍別では中国、ベトナム、フィリピン、ブラジルと続き、特にベトナムは近年大きく増加しています。                                          アジア、東南アジア出身者で全体の70%を超えているのも特徴です。                     企業の規模で見ると、従業員30人未満の中小企業が最も多くなっていますが、近年では中小企業、大企業ともに外国人労働者の雇用数が増えています。

技能実習の職種に介護が加わったのは2017年(平成29年)です。2020年度(令和2年度)の構成比は4.7%と技能実習生全体ではまだ少数派ですが、日本の介護を学ぶ外国人の若者たちは年々増えています。コミュニケーションが必要な職場で実習をするため日本語の上達も早く、今後も存在感を増していくことが想定されます。

留学や特定活動(EPA介護福祉士・介護福祉士候補・及びその配偶者等)などは、コロナの影響で若干減少気味ですが、帰国できなかったり、状況が不安定な国もあるので、日本に滞在して働きたいと考える外国人も多いです。

外国人を雇用する際の基本知識と雇用方法

在留資格の基本知識

ここからは介護人材の在留資格について大まかに説明します。

介護に関係する在留資格は以下の4つです。

  • 技能実習生
  • EPA(経済連携協定)
  • 介護専門学校への留学生(在留資格「介護」)
  • 特定技能     

下図は、そこの4つの資格の相関図が下図になりますが、続的に日本で介護の仕事をする場合、国家資格である「介護福祉士」の資格が必要であることが分かります。

厚労省HPより

 

例えば、介護技能実習生として入国した場合、3年の期間満了の上で技能実習生3号か、特定技能1号を選択し、介護福祉士の資格を取得する、ということになります。

上図は、4つの資格の制度の中身です。在留資格によって必要な能力や制限があります。

技能実習生については以前のコラムを参照ください。

EPA

EPAは、介護福祉士候補生としてこれまで合計1715名が入国し、57.2%の介護福祉士合格者が出ています。(平成30年厚労省HPより)                                           最近は、減少気味のEPA介護福祉士候補者等の受入支援を、国が行っているところです。

特定技能

「特定技能」は、日本と特定技能の協力覚書を交わしたベトナム、インドネシア、フィリピンなどの12の国に限られています。現在、制度の改変等が大幅に行われているところです。「特定技能」で外国人雇用を検討する場合は、法務省のホームページなどで最新情報を確認することをおすすめします。

また、関与する団体として、技能実習には監理団体(団体監理型)があり、特定技能は、登録支援機関において支援業務を委託することができます。

在留資格「介護」

在留資格「介護」で留学している外国人の支援に関しては、都道府県(都道府県から事業を受託している団体)が窓口になっている「介護福祉士等修学資金貸付制度」を活用することができます。

都道府県によっては、こうした法人の介護施設等が介護福祉士養成校に留学する留学生に奨学金を給付等した場合、その費用の一部を助成する事業を実施している場合がありますので確認してみるとよいでしょう。

*(地域医療介護総合確保基金「介護施設等による外国人留学生への奨学金等の支給に係る支援事業」) (出典)厚生労働省資料

外国人の雇用方法

ちなみに、採用ルートが決められている上記以外に、他の在留資格で募集をかける方法もあります。

方法①知人・従業員の紹介

信頼する知人や職員に、推薦できる外国人を紹介してもらう方法です。コストが低く採用率も高い方法です。紹介する知人や職員自身が、事業内容や職場の雰囲気などを伝えてくれたり、紹介される外国人従業員も職場に知り合いがいることで不安が軽減されるメリットがあります。

方法②外国人雇用サービスセンタ-

厚生労働省が管轄する外国人の求人・求職専用のハローワークです。現在、東京、名古屋、大阪、福岡で開設されています。また、一般のハローワークを通じて問い合わせすることが可能です。

方法③大学や専門学校への求人

大学や専門学校の就職課(キャリアセンター)に求人の申し込みをします。

方法④人材紹介会社の利用(直接雇用や派遣等)

希望する即戦力を紹介してもらえる人材会社をリサーチしましょう。紹介手数料や派遣料がかかります。また、業種によっては就労ができないなどの制限があります。人材紹介会社が適正な許可を得ているかの確認も必要です。

方法⑤自社のホームページを利用しての求人

募集したい国の母国語や英語で翻訳したり、ホームページの使いようで、小さな法人でも世界にアピールができます。

その他の募集方法について

外国人向けの各種セミナーや合同企業説明会、インターンシップなどの開催情報などが、各自治体からもお知らせがあります。在日外国人の就労支援や生活支援は、自治体単位で行われていることも多いため、広報などを参考にしてみてください。

こつこつと優秀な人材を育成して、外国人も日本人も一緒に成長していくことを、これからは考えていきたいでものです。

まとめ

初めての外国人介護職員の検討・導入では、分からないことや不安が多く、問題が山積みのように思えます。しかし、一つひとつの課題に向き合い、対処していけばその問題は難しいものではありません。  

支援体制のポイントをまとめました。

  • 職員に負担をかけすぎない・・・分担制をとる。
  • 職場のコミュニケーションを重視する・・・言葉が通じる職員や関係者の協力を仰ぐ。職員同士のコミュニケーションを活発にする。
  • 日本語以外の言語や記号などを活用する・・記号や合図を使った資料を作り、コミュニケーションを図る。誰もがわかる記号や合図を使う。                  

事業所の支援体制づくりとコミュニケーション方法は、①~③までの記事で詳しく伝えていますので参照ください。

また、労働保険や社会保険、賃金の設定、雇用管理等外国人に特有な対応など、専門家のアドバイスが必要なものもあります。これらに関しては、監理団体や登録支援機関等が代行する場合があります。確認してください。

外国人の雇用を成功へ導くためには、監理団体や登録機関、紹介会社などの業者の選定が重要になります。同様の経験がある同業他社から情報を貰うのも一つの方法です。                                                 公式サイトやホームページ、打合せ等で詳細を確認します。

外国人介護実習生を導入・雇用して、事業所内の職員のパフォーマンスが格段に上がったという声が多くあります。                                      事業所の制度の見直しや導入が進んで働きやすい職場に変化した、という意見もあります。

企業が外国人を採用する目的は、職場の多用性や活性化であったり、人材不足の解消であったりと様々です。                                        ただし、どのような目的であっても、外国人の雇用を一時的な対応策とはみなさず、長期的な視点で設定していくことが大切です。              

外国人介護職員が、長く働き続けるために事業所にできることを考える。それは、日本人の職員にとっても、長く親しんで働いてもらう事業所へと繋がっていくのではないでしょうか。

  

 

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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