高齢化が進む中、「最期は住み慣れた自宅で迎えたい」と望む人が増えています。しかし、現実には病院や施設での看取りが多く、在宅での看取りにはさまざまな課題が伴います。特にケアマネジャーは、本人・家族・医療・介護の間に立ち、看取りの支援を調整する重要な役割を担っています。
この記事では、在宅看取りの現状と問題点、ケアマネジャーができる支援の工夫について詳しく解説します。
在宅看取りの現状|希望と現実のギャップ

厚生労働省の調査によると、「自宅で最期を迎えたい」と希望する人は約6割にのぼります。しかし、実際に自宅で看取られる人は全体の約15%程度にとどまっています。
希望が叶わない理由:
- 医療体制が整っていない
- 家族の介護負担が大きい
- 急変時の対応が不安
- 看取りに関する情報不足
特に独居や高齢夫婦世帯では、在宅看取りのハードルが高く、病院への搬送が選ばれるケースが多くなります。
在宅看取りにおけるケアマネジャーの役割

ケアマネジャーは、在宅看取りを支える“調整役”として、以下のような業務を担います。
1. 本人・家族の意思確認と共有
- 「どこで最期を迎えたいか」「延命治療は望むか」などの意思を確認
- 家族との温度差を調整し、共通認識をつくる
- 医療職との情報共有を図る
2. 医療・介護サービスの連携
- 訪問看護・訪問診療の導入
- 夜間対応可能な事業所の選定
- 緊急時の連絡体制の構築
3. ケアプランの再構築
- 看取り期に合わせたサービス内容の見直し
- 介護負担軽減のためのショートステイやヘルパーの活用
- 家族支援も含めた包括的なプラン設計
「ケアマネがいなければ、在宅看取りは成り立たなかった」と語る家族も少なくありません。
在宅看取りの課題とケアマネの悩み

現場では、ケアマネジャー自身も多くの葛藤を抱えています。
1. 医療との連携が難しい
- 訪問診療医が少ない地域では、医療連携が困難
- 急変時の対応を医療側に任せきれない不安
- 看護師との情報共有が不十分なケースも
2. 家族の不安が強い
- 「本当に自宅で看取れるのか」という不安
- 介護疲れや精神的負担が限界に達することも
- 死に対する価値観の違いが衝突を生む
3. ケアマネ自身の経験不足
- 法的・制度的な知識不足
- 看取り支援の経験が少ないケアマネも多く、対応に迷う
- 死を扱うことへの心理的ハードル
在宅看取りの支援にあたるケアマネジャーは、制度と現場の“隙間”に立たされることが少なくありません。医療職のように診断や処置ができるわけでもなく、介護職のように直接的なケアを担うわけでもない。けれど、本人の意思を汲み、家族の不安に寄り添い、24時間体制の支援を組み立てるのはケアマネの役割です。 「この人の最期を、どう支えればいいのか」——その問いに、正解はありません。制度の限界と家族の感情の間で揺れながら、それでも“誰かの最期に関われること”に誇りを持っているケアマネが、現場には確かに存在しています。
ケアマネができる支援の工夫
在宅看取りを支えるために、ケアマネジャーができる工夫は多岐にわたります。
1. 看取り期のアセスメントを丁寧に
- 本人の意思だけでなく、家族の覚悟や支援体制も確認
- 医療職との連携を前提に、ケアプランを柔軟に設計
- 「何が起きるか」「どう対応するか」を事前に共有
2. 多職種連携を“見える化”する
- 緊急時の連絡先一覧を作成
- 訪問看護・医師・ヘルパーの役割分担を明確に
- 家族にも「誰に何を頼めるか」を伝える
3. 家族の心のケアも意識する
- 不安や葛藤を言葉にできる場をつくる
- グリーフケアの視点を持ち、死後の支援も視野に入れる
- 「一人じゃない」と感じられる関係性を築く
看取り期には、予定通りに進まないことの方が多く、介護者の言葉にならない不安や、本人の微細な変化に寄り添う柔軟さが求められます。 「制度ではこうだけど、今はこの人にとって何が一番安心か」——その問いを日々繰り返しながら、ケアマネは“正しさ”より“納得感”を優先する支援を組み立ててかなければならいこともあります。支援の工夫とは、サービスの組み合わせだけでなく、“人としての関わり方”を設計することでもあるのです。
現場の声:在宅看取りを支えたケアマネの実感
「最初は“無理だと思う”と言っていた家族が、最期に“自宅でよかった”と涙を流してくれた。その瞬間、ケアマネとしての役割の重みを実感した。」
「医師との連携がうまくいかず、夜間の急変に対応できなかった悔しさは今でも残る。だからこそ、事前の準備と連携が何より大切だと思う。」
まとめ|在宅看取りは“ケアマネの支援力”で叶う
ケアマネジャーは、現場での支援に悩みながらも、本人や家族の希望を叶えたいと願っているはずです。看取りは、制度やサービスだけではなく、“人の支え”によって成り立つケアです。
ケアマネジャーが、医療・介護・家族をつなぎ、最期まで安心して過ごせる環境を整えること。それが、在宅看取りを可能にする鍵となります。
まずは、本人の思いに耳を傾け、家族の不安に寄り添い、チームで支える体制を築いていきましょう。
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投稿者プロフィール

- 看護師・保健師としての経験後、現在は高齢者のケアマネジメント業務に奮闘中。ベビーから高齢者の方まで幅広く関わっています。
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