令和6年度(2024年度)、児童福祉法の改正により、放課後等デイサービス・児童発達支援に関する法律や報酬制度にいくつかの重要な変更がありました。この改正の背景には、サービスの質の向上や包括的な支援体制の確立、医療的ケアを必要とする子どもたちへの対応強化などがあります。
本記事では、今回の報酬改定(法改正)を放課後等デイサービスの運営にどのように生かすか、ポイントを絞って具体的な変更点と目的を説明しています。
ぜひ参考にしてください。
R6年の法改正の背景と意図とは?
今回の法改正と報酬改定の背景には、以下のような意図があります。
- 支援の質の向上
計画内容の見直しや自己評価と保護者評価の公開により、事業所の運営状況を透明にし、サービスの質を向上させることが目指されています。 - 包括的な支援
関係機関や事業所間の連携を強化することで、子どもたちに対する包括的かつ継続的な支援が実現されます。 - 自立支援の促進
新設された加算によって、子どもたちの将来的な自立に向けた支援が強化されます。 - 医療的ケアの充実
医療的ケアを必要とする子どもたちに対する支援が強化され、安心して生活できる環境が整備されます。
これらの改正は、放課後等デイサービスの利用者である子どもたちとその家族に対して、より高品質で安全な支援を提供することを目指しています。サービス提供者はこれらの改正点を理解し、適切に対応することで、子どもたちの成長と福祉に貢献することが期待されています。
【運営基準の改定】法改正で新たに義務化される内容
新たに義務化される内容をまとめてみました。
5領域を全て含めた総合的な支援
新たに設けられた方針の中で一番大きな変化が、5領域を全て含めた総合的な支援を提供することが運営基準として設けられたことです。
5領域とは「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の分野のことを指します。
現在行っている6ヵ月に1回以上の個別支援計画の見直しの際に、上記取組を記載した個別支援計画を作成しましょう。事業所で行う支援内容を、必ず5領域とのつながりを明確化して個別支援計画で実施しなければなりません。未実施の場合には所定単位数の85%が減算されます。(※適用は令和7年4月1日から)
事業所の支援プログラムの公表
5領域とのつながりを明確にした支援プログラムの公表も義務付けられ、完全適用は2025年4月1日。報酬の減算を含め、1年間の経過措置が設けられています。
自己評価と保護者評価の充実
事業所は、おおむね1年に1回以上、自己評価と保護者評価の結果および改善点を保護者に開示し、インターネットなどで公表することが義務付けられました。
これによって事業所の透明性が確保され、保護者は事業所の運営状況や改善点を把握しやすくなり、安心して子どもを預けることができるようになります。また、事業所自身も評価を通じてサービスの質を向上させるための具体的な改善策を講じることが期待されます。
インクルージョンに向けた取り組みの推進
事業所は、利用児童が地域の保育、教育等の支援を受けることができるようにすることで、障がいの有無にかかわらず、全ての児童が共に成長できるよう、地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の推進に努めることとなりました。
インクルージョンの観点を踏まえた支援の具体的内容、支援を提供する上での留意事項その他必要な事項を記載した個別支援計画を作成することとされています。
個別支援計画の中身はどうする?
令和6年度報酬改定に伴い、個別支援計画に新たに以下の事項を記載することが必須になりました。
- 日々の支援に係る『計画時間等』
- 日々の『延長支援時間等』
- 『5領域』との関連性を明確にした支援内容
- 『インクルージョン』の観点を踏まえた取組
こども家庭庁から別添として計画書の様式が出ていますので参考にしてください。
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/hoshukaitei
改正の具体的な変更点とその目的は?
では、今回の改正のポイントと考えられる加算の変更点や目的はどこにあるのでしょう。いくつかピックアップしてお伝えします。
関係機関連携加算
変更点:関係機関連携加算が見直され、医療機関や児童相談所との情報連携が評価されるようになりました。
目的:この変更の目的は、子どもたちの支援ニーズに対する対応力を強化することです。医療機関や児童相談所など、他の支援機関との連携を促進することで、より包括的な支援が可能になります。これにより、子どもたちの多様なニーズに対応できる体制が整備されます。
事業所間連携加算
変更点:複数の事業所を利用する子どもに対して、事業所間での情報共有や連携を評価するための事業所間連携加算が新設されました。
目的:この新設の目的は、異なる事業所間での連携を促進し、子どもたちに一貫した支援を提供することです。複数の事業所を利用する子どもに対して、各事業所が連携して支援計画を立てることで、支援の質と効果を向上させることが期待されています。
家族支援加算
変更:家族支援加算(旧 家庭連携加算)は、家族支援の充実という観点から見直しが計られました。
目的:事業所内相談支援加算と統合され、オンラインによる相談援助に関しても加算の対象になることが明記されました。また、きょうだいに関しても相談援助等の対象であることが示され、家族全体のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)の向上に寄与することが重要視されました。
家族関連で新設された加算には、子育てサポート加算があります。保護者に支援場面の観察や参加等の機会を提供し、子どもとの関わり方を相談援助することで加算対象となります。
通所自立支援加算と自立サポート加算
変更点:将来的な自立を目指す子どもたちへの支援として、通所自立支援加算と自立サポート加算が新設されました。
目的:この加算の新設は、子どもたちの自立を促進するためです。特に高校生を対象に、移動援助や自立支援プログラムの提供が評価されます。これにより、子どもたちが将来社会で自立して生活できるよう、実践的な支援が強化されます。
医療的ケア児・強度行動障害児への支援強化
変更点:医療的ケアを必要とする子どもたちに対して、認定特定行為業務従事者による支援が評価されるようになり、医療連携体制加算が見直されました。また、入浴支援加算も新設されました。ケアニーズが高い子どもたちへの支援は細かく改定がされています。
目的:この変更の目的は、医療的ケアを必要とする子どもたちに対する支援を強化することです。認定特定行為業務従事者による支援が評価されることで、医療的ケアがより適切に提供されるようになります。また、入浴支援加算の新設により、衛生管理が重要な医療的ケア児のケアが充実します。
実務上の対応はどうする?
放課後等デイサービスを運営する事業所は、これらの法改正と報酬改定に適切に対応することが求められます。
実務上、留意する点を以下に挙げてみました。
1、関係機関との連携強化
保育所や学校、児童相談所や医療機関との連携を強化し、情報共有を徹底します。個別支援計画策定や、児童の心身の状況や生活環境等の情報共有を目的にして定期的な連携会議を開催又は参加します。会議や連絡についての記録は確実に行い、日付や参加者に漏れがないようにしましょう。
2、事業所間連携の推進
セルフプランで複数の事業所を利用する子どもに対して、会議の開催等で各事業所間での情報共有を徹底し、家族への助言援助や自治体との連携体制を強化します。連携の効果を定期的に評価し事業所内で共有し、必要に応じて個別支援計画の見直しを行うなど改善策を講じます。
3、自立支援プログラムの充実
高校生向けの自立支援プログラムを充実させ、学校卒業後の生活に向けて、学校や地域の企業等と連携しながら、進路の選択に資する情報提供や体験機会の提供や必要な知識・技能を習得するための支援を提供します。
自立サポート計画の作成や見直しに当たっては、本人及び保護者と話し合い同意を得たうえで行いましょう。会議や話し合いについては、必ず記録を取っておきます。
4、医療的ケアの強化
必要ならば認定特定行為業務従事者を配置し、医療的ケアが必要な子どもたちに対する支援を強化します。入浴支援加算は算定要件の浴室・浴槽・衛生上必要な設備を整え、定期的な職員の研修や訓練等を実施し、安全な入浴支援体制を整備します。
これらの対応策を講じることで、事業所は法改正と報酬改定に適応し、質の高いサービスを提供することができます。また、保護者との信頼関係を強化し、地域社会に貢献する放課後等デイサービスを運営することが期待されます。
ただし、すべての事業所が可能かというと難しい面もあります。事務作業や人員の配置等で無理をしない範囲で、継続的に算定できる加算の取得を目指しましょう。
まとめ
令和6年度の法改正と報酬改定は、放課後等デイサービスの質の向上と包括的な支援体制の強化を目指したものです。全体を通して、放課後等デイサービス・児童発達支援での支援の質を高めようという方針の下、多くの見直しが行われたことが分かると思います。
事業所には、これらの改正点を理解し適切に対応することで子どもたちの成長と福祉に貢献することが、求められます。
自事業所に適応した具体的な対応策を講じて、質の高いサービスの提供と地域社会への貢献を継続して提供できるように、職員全員で加算取得を考えてみましょう。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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