今回は、介護技能実習の進行管理や指導を担当するリーダーさん達へ、充実した実習になる4つのポイントを伝えます。
技能実習生の受け入れ決定から、実習中、振り返りまで、時系列で説明します。受け入れ側の職員さんたちに対する準備や心構え、実習中の留意点なども含めています。
具体的に、どのように進めて行けばよいかが分かると、一気に皆の不安が減りますよ。
介護技能実習生の受入れが決まったらやるべきこと
介護技能実習生の受け入れが決まったら、以下のことを実践していきましょう。
受入れ前のミーティング
まずは、実習責任者と一緒に、どのように実習を進めていくかを話し合って下さい。 現場で起こる様々なことを、一人で抱え込まないですむように、相談できる相手が実習責任者です。
前回述べたように、実習生も職員も、もちろんリーダーも同じ不安を抱えているものです。 外国人の技能実習生の受入れが決まったら、事業所職員のミーティングで、実習期間中の様々な課題を洗い出してみましょう。 今、現場で職員たちが困っていること、仕事がしにくいと思うこと、こうなったらいいなと思うことなどを、皆で検討してみると、入ってくる技能実習生にとっても、スムーズに実習に取り組んでいく体制が整えられると思います。
そして、受け入れる側が、介護実習生が何を目的に日本へ来るかを理解し、実習生の目的である「介護福祉士」試験合格に向けて協力体制を作っていきましょう。
日本語はできるのか?
日本語レベルがN4、N3と言われても、ほとんどの職員が良く分からないと思います。日本語レベルの説明については、実習責任者や監理団体担当者に依頼しましょう。
介護技能の技術はどれくらいか?
来日して1ヵ月は、本国で既定時間の介護技能を学習しています。現在の様子を含め、管理団体から現場の介護職員に説明して頂くように責任者に依頼します。
技能実習生の文化や生活習慣を理解する
外国人介護職員の出身国の文化や生活習慣を理解し、 互いに尊重し合うようにしましょう。 食事や礼拝などの配慮の必要がないかは、実習責任者に確認します。食事や休日の取り方などの生活習慣や宗教観は、シフトを作る際に注意が要る時があります。 自分たちで解決が難しい時や理解しにくいことが起こった時など、監理団体に依頼や報告・連絡・相談が速やかにできるような体制・関係性の構築を、実習責任者に依頼しておきましょう。
実習制度の理解を深める
職員が技能実習制度を理解できるように以下の内容にポイントを絞った技能実習制度勉強会を開きましょう。
- 技能実習生は「労働力の需給調整の手段」ではなく、「技能実習を通した人材育成である」こと。 現場で指導に当たる介護職員に、技能実習生は実習生であり、人材不足を補う要員ではないことを理解してもらうように、常々心がけましょう。
- 通常実習期間は通常3年であること。 この期間に「介護の楽しさ」や「充実感」が少しでも伝わるよう頑張りましょう。
指導体制を作る
実習指導員が決まったら
実習指導員は、通常、介護主任やユニットリーダー等の現場の介護の役職者がなることが多いです。おそらく、リーダーさんたちは、実習指導員として指導のリーダーを担うでしょう。 そこでまず、実習指導員の指導の内容の確認を行います。実習指導員の具体的業務は、実習指導・実習の進行具合の確認・業務指導・実習記録の記録・実習に関する相談等です。
次に、現場の職員の役割の分担と指導の体制を整えます。誰が指導を行っても同じ指導ができることを目標としましょう。 シフトで動く介護職の場合、常に同じ人が指導に当たる事が難しくなります。事業所で、誰が、何を行うか、を決めていた方が「こんな時どうする?」のような戸惑いが減ります。
同じ指導員が、常に指導ができるのが一番ですが、指導員が不在の時でも、同等の指導ができる職員を決めておく、などの業務分担の決定やシフトの調整も必要です。 実習指導員が、常時、直接指導を行わなければならない状態を回避しましょう。
育成プログラムやテキストの作成
技能実習生には、通常の新人育成とは違うプログラムを準備する必要があります。プログラムの中に、必ず十分な座学と体験の時間を作ります。また、テキストや資料には、イラストを多用したり、簡単な日本語のフリガナを付けるなどの事前準備をしておきます。
介護業務の標準化や言葉の使い方の見直し、日本職場の基本ルールなども考慮してテキストを作成します。
例えば、技能実習生育成プログラムは、基本の新任育成プログラムに、開始時期と教育期間の余裕を加味して作成しても良いでしょう。
心身に直接関与する可能性のある、着脱・入浴・排泄介助の開始時期と教育期間は、遅く始めて長い期間指導に入ったり、誤嚥等のリスクのある食事の介助なども、教育期間を長くとる、などの工夫です。施設の中には看護職や栄養士等の多職種が働いています。それぞれの専門職が、何をどのように担うかは、プログラム作成時に話し合っておきましょう。
日本語学習の時間も、1日の振り返りや実習レポートを記録する時間などに入れ込むと、時間を効率的に使えます。
ゆっくり話すと理解ができるのに、緊張したり焦ったりすると、分からなくなってしまうこともあります。研修を始める前に、今日は何をするのかを、実習生にきちんと説明するようにしてください。
複数の実習生がいる場合は、偏りが生じることがありますので、個々の性格も含めて指導が必要です。
生活環境を整える
生活するための必需品の準備
台所用品や食器、タオルや家電品など職員さんたちに未使用で不要なものがあったら、協力してもらうようお願いするのもひとつの方法です。準備期間中から、受け入れ側の職員さんが、何か役に立てないかと考えてくれるようになります。
生活指導員が決まったら
生活指導員は、主に実習生の生活をサポートします。生活指導員は、実習生と同性で年齢が近く、居住地域が近い職員がなることが多いです。居住地域の実情や生活実態が分かりやすい、また、実習生が話しやすさを感じるからです。家電の使い方から、職場で感じたこと、実習生間の関係のこと、日本語学習の問題やホームシックなど、相談は多岐にわたります。
その場で解決できない相談は、他の指導員やリーダーたちと話し合いができるようにしましょう。
日本の生活には、細かなルールがたくさんあり、生まれて初めての経験も多いようです。
食事が合わない、ということもあります。食事の管理がおろそかになると、実習にも影響が出ます。
休みの日や外出の支援なども必要です。SNSを使う実習生が多いので、他の事業所の実習生や日本語学校の同級生たちとのつながりも持っています。電車やバスなどで遠出をしたがる実習生も多いです。生活指導員は、実習生の生活へのかなり細かなフォローが必要です。
言葉の壁もありますので、監理団体のアドバイスやフォローがあった方が良い時があります。監理団体から通訳が来てくれたり、母国語でポスターのようなものを作ってくれたこともありました。特に感染症が流行しているような時期には、母国語で予防接種等の説明が必要です。
実習事業所内で起こることと、プライベートで起こることは別に考えられるようにしましょう。実習生の生活への順応度合いに応じて、サポート内容や人数を順次変更していけるように、責任者と話し合ってください。
業務の負担が大きくなるので、実習指導者は、生活の話はしても、生活指導まで兼任しないようにします。
実習期間中にやるべきこと
では、実際に実習が始まってからやるべきことを見ていきましょう。
研修の活用
具体的な実習施設の概要やご利用者の状況などを、育成プログラムの中に入れます。
事業所で、介護職員用の研修を行っていれば、それを活用してください。日本人の職員と一緒に行うものと、実習生だけで行うものは区別しましょう。複数人の実習生がいる場合は、日本語の理解の差に配慮します。
育成プログラムの中に、定期的な動作確認やレポート提出の時期を明記すると、目標ができます。
オンとオフの見守り
実習開始直後は、疲れで体調が悪くなることもあります。慣れてくると、休日の過ごし方で不満が出る場合があります。実習生が複数だと、シフトによって勤務が入れ違いになってしまう事で、実習生間の関係性が悪くなる時もあります。
生活全部を管理下に置くことは無理ですが、何かがあった時にすぐに相談できる関係を維持するようにしましょう。
定期的な振り返りと見直し
実習中は、必ず育成プログラムの進行具合を確認しましょう。 また、併せて実習記録や業務指導の進捗も確認しましょう。責任者や指導者、監理団体の担当者も含めて、実習の振り返りを行い、課題があれば速やかに改善し、見直します。
日本語の習得に向けての支援
日本語の習得は、技能実習生にとって、とても重要です。
毎日の記録や定期的なレポート提出と並行して、試験用の学習が必要となります。
実習生は、自分で日本語用のテキストを持っていますが、より介護の現場を理解できる書籍があると、実習への理解度も高まります。また、言葉や漢字が意味のない記号から、意味を持ったものへと変化します。意味が理解できると、学習が楽しくなります。
関連の書籍があるので、紹介いたします。是非、参考にしてください。
帰国が近づいたら
みんなで実習全体の総括をしよう
良かった点、悪かった点、いろいろあると思いますが、ここからが、次への出発点になります。
育成プログラムやテキスト類の見直し、介護の標準化や日ごろの接遇なども含めて話し合ってください。
生活面や仕事面、人間関係や地域のことなど、監理団体も含めて話し合いができる場を用意してもらいましょう。その際に、実習生の今後の話もできると良いと思います。実習生たちは、目的を達成できたでしょうか?
技能実習生は、3年の実習期間を終了すると、再度、2年間技能実習3号として入国するか、特定技能1号として入国するかの道があります。介護福祉士を目指すために再入国して、もう一度一緒に働けると嬉しいですね。
まとめ
技能実習生を受け入れた施設のリーダーたちは、職員に大きな気持ちの変化があったと話します。初めは不安で一杯だったのが、実習指導を行ううちに、職員間に仲間意識や認め合う心が生じたと言います。国の違いから、言葉の違いや文化の違い、物事の感じ方や考え方の違いは確かにあったけれど、「介護」や「仕事」を通して学ぶ姿勢は、どの国の人でも同じだ、ということです。
技能実習生の受け入れは、技能実習生だけでなく、それをマネージメントしたリーダーさんの成長につながり、そこで働く職員さん全員にとっても、魅力ある職場づくりになっていくと思います。
https://caps-plus.jp/2022/08/26/介護技能実習生を受け入れるために知っておくべ
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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