訪問看護や介護も|アルコールチェックの義務化に関するルールと準備について解説

訪問介護

訪問看護や訪問介護事業所も気になる「アルコールチェックの義務化」。

飲酒運転による悲惨な事故をきっかけに、道路交通法改正によりアルコールチェックが義務化されました。アルコール検知器の使用や記録の義務化により、対象事業者にはさらに適切な対応が求められます。

この記事では「アルコールチェックの義務化はいつから?ルールや準備について解説」と題して解説します。準備に関して不安に思っている方はぜひ参考にしてください。

アルコールチェッカーの義務化は2023年12月1日から

アルコールチェックについては、以前より一部の事業者に対して義務化されていましたが、2023年12月1日から「アルコールチェッカーの使用」を義務化する規定が警察庁より発表されました。

アルコールチェッカーの使用は、2022年10月1日から義務化される予定でしたが、延期されて今回に至ります。延期の理由は、世界的な半導体不足やコロナ禍による物流の停滞で、事業者が必要台数のアルコールチェッカーが入手できないことによるものです。

この時点では、アルコールチェッカーが市場に流通する見通しが立たず、具体的な開始の時期が明確化されていませんでした。しかし、ある程度市場に出回るようになったため、再度道路交通法施行規則が改正され、正式に義務化が決定しています。

2022年4月1日から段階的に実施されている

アルコールチェックは以前より、事業用の「緑ナンバー」の車両を対象として義務化されていました。緑ナンバーの車両とは、トラックやバス、タクシーなどのお客様の荷物を有償で運搬する事業者や、運賃をもらって業務を行う事業者の車両です。

そこに、第一段階として2022年4月1日に法改正された際に、白ナンバー車両が追加されています。白ナンバー車両とは自家用車両を指します。自家用車両を業務で使用する場合にもアルコールチェックが対象となりました。

2022年4月1日の段階で義務化された内容は以下の通りです。

  1. 運転前後の運転者の状態、酒気帯びの有無を目視等で確認する
  2. 確認の内容を記録し、1年間保存する

この法改正の段階では「アルコール検知器」を用いることまでは義務化されていません。目視等での確認と、記録の保管がルール化されています。

法改正のきっかけは飲酒運転による交通事故

法改正のきっかけになったのは、2021年6月に千葉県八街市で起きた、飲酒運転のトラックによる交通事故です。

白ナンバートラックが、下校中の小学生の列に突っ込み児童5人が死傷するという痛ましい事故が起こりました。あろうことか、ドライバーは飲酒運転だったのです。このような痛ましい事故を二度と起こさないために、2022年4月より白ナンバー事業者に対してもアルコールチェックが義務になり、さらに2023年12月から厳格化されることになりました。

アルコールチェック義務化の内容

ここからは、2023年12月1日から厳格化される法改正の内容について詳しく確認していきましょう。

アルコールチェッカー使用の義務化

従来のアルコールチェックは、目視での確認でも認められていたものが、アルコールチェッカーの使用が義務付けられます。アルコールチェックを行うタイミングは運転前と運転後の計2回です。

まず、安全運転管理者が運転者の様子を目視し、酒気帯び等の有無を確認します。目視での確認後に、アルコールチェッカーを用いて、アルコール濃度を計測しなければなりません。

直行直帰などの理由で、安全運転管理者がアルコールチェックができない場合には、他の方法で確認する手段を講じる必要があります。カメラ・モニター・スマホの画面などの、対面での確認に準じた方法でチェックします。メール・チャットなどの本人の様子が確認できない手段は認められません。

また、チェックには安全運転管理者が立ち会うのが原則です。しかし、休暇取得時やシフトの時間帯、その日の勤務場所などによっても必ず立ち会うのは難しいでしょう。安全運転管理者が不在の場合は、副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補助する者が対応することとされています。

記録と記録保管の義務化

法改正では、アルコールチェックの記録を1年間保管することもルール化されています。保管方法に決まりはないため、紙でもデータでも問題ありません。

アルコールチェックの記録簿が保管できていなかった場合は、安全運転管理者の業務違反で解任される可能性があります。そうなれば、安全運転管理者を新たに選任し、届け出なければなりません。その間は業務が行えずストップしてしまうことになります。

対象となる企業

アルコールチェック義務化の対象となる企業は以下の通りです。

  • 定員11人以上の車両を1台以上保有
  • その他の自動車を5台以上所有

オートバイは0.5台として換算します。

守らなかった場合の罰則

アルコールチェックや、記録の保管などを怠った場合の罰則は今のところ規定されていません。ただし、安全運転管理者に解任命令が下される可能性があります。

また、飲酒運転を行った場合には厳しい行政処分と罰則が科されるのは承知のとおりです。

以下に行政処分と罰則をまとめました。

⚫︎行政処分

違反の内容処分の内容違反点数
酒酔い運転免許取消し 欠格期間3年基礎点数35点
酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.15mg/l 以上 0.25mg/l 未満)免許停止 期間90日基礎点数13点
酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.25mg/l以上)免許取消し 欠格期間2年基礎点数25点
出典:警察庁「みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない

⚫︎罰則

酒酔い運転酒気帯び運転
車両等を運転した者5年以下の懲役又は100万円以下の罰金3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
車両等を提供した者5年以下の懲役又は100万円以下の罰金3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒類を提供した者又は同乗した者3年以下の懲役又は50万円以下の罰金2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
出典:警察庁「みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない

飲酒運転には、ドライバー本人だけでなく車両等を提供している企業や同乗者にも責任が伴います

アルコールチェック義務化までの準備

2023年12月1日の義務スタートに向け、事業者として行う準備を確認しておきましょう。

安全運転管理者の選任

アルコールチェックは、原則として安全運転管理者が実施することが定められています。安全運転管理者を選任したら、15日以内に事業所のある地域の警察に届けなければなりません。

安全運転管理者や副安全運転管理者を選任しなかった場合は50万円以下の罰金、選任の届出をしていなかった場合にも、5万円以下の罰金が科されます。

点呼記録の準備

アルコールチェック記録の保管方法についてはルールがないので、紙かデータのどちらで運用するのかを検討しなければなりません。記録する内容については決められているので、ルールに則って準備を進めましょう。

記録として残さなければならない必須項目は以下のとおりです。

  1. 確認者名
  2. 運転者
  3. 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
  4. 確認の日時
  5. 確認の方法(対面でない場合は具体的方法等)
  6. 酒気帯びの有無
  7. 指示事項
  8. その他必要な事項

参考:警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等について(通達)

記録には1年間の保管義務があります。記録や保管のしやすさを考えながら運用を検討しましょう。

アルコールチェッカーの準備

アルコールチェッカーによるチェックは運転前と運転後に必ず行うため、アルコールチェッカーの設置方法を検討したうえで必要台数をそろえなければなりません。

機器については呼気中のアルコールを検知し、酒気帯びの有無又は濃度を警告音や警告灯、数値等により示す機能があるものとされています。また、正常に作動し故障がないことを定期的に確認する必要があります。何らかの事情で個人が購入する場合にも、その機器が条件を満たしていることを定期的に確認することが、安全運転管理者の責務です。

タニタ   アルコールチェッカー
■検知方式:半導体ガスセンサー
■測定範囲:0.00-0.50mg/L、0.05mg/L単位(0.05mg/L未満は0.00mg/L表示)
■表示方法:LCD12段階表示
■商品サイズ:幅 32mm×高さ105mm×奥行 17mm
■重量:約31g(乾電池含まず)
■電源:DC3V 単4形アルカリ乾電池2本
■過去メモリー:前回値(前回値から増減比較機能付き)

息を吹きかけるだけで、呼気中のアルコール濃度をお知らせします。


アイリスオーヤマ アルコールチェッカー
■検知対象ガス:呼気中アルコールガス
■オートオフ・電池交換表示機能付き
■電源:単4乾電池×2本(別売)
■重量:50g
■検知レベル:0.00~1.00mg/L
■サイズ:37×20×102mm

息を吹きかけるだけで呼気中のアルコール濃度を測定できます。
電池交換表示機能付きです。


アルコールチェック記録表


■仕様 : A4版 片面 100枚/1冊

アルコールチェックの体制作り

これまで解説したさまざまなルールに対応するためには、業務フローを再確認する必要があります。

運転前・運転後のアルコールチェッカーによるチェックの実施や記録、記録物の保管、アルコールチェッカーの管理などを運用するには、今までの業務体制では進められない場合もあるでしょう。

勤務時間や体制、職務の変更が必要なケースも考えられます。企業全体でルールを遵守するための仕組み作りが重要です。

アルコールチェックの義務化に向けて適切な準備を

今回の記事では、アルコールチェックの義務について解説しました。

アルコールチェックは2023年12月1日から厳格化されます。ルールや準備しなければならないことを理解しておき、スムーズに法令遵守に対応できるようにしておきましょう。

投稿者プロフィール

tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。

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