2024年の介護保険改定で何が変わる?現時点の情報から現役介護職が予想してみた!

訪問介護

介護保険制度は3年ごとに改定されます。そして次回の改定は2024年です。

  • 「2024年の介護保険改定では何が変わるの?」
  • 「私たち介護職にどんな影響があるの?」

本記事では、以上のような疑問に対して現時点で分かっている情報をもとに、現役介護職である筆者が2024年の介護保険改定による影響を予想してみました。

介護職として介護保険の仕組みや、今後の改定によりどのようにサービスや働き方が変わっていくのかを知ることは非常に重要です。

ぜひ最後まで読んでいただき、一緒に今後の介護業界について考えていきましょう。

2024年の介護保険改定の内容は?

2024年の介護保険改定で予想される事項は、以下の財務省で議論されている内容が実施されることが予想されます。

  • 業務の効率化と経営の大規模化・協働化
  • 介護施設・事業所等の経営状況の把握
  • 利用者負担の見直し
  • ケアマネジメントの利用者負担の導入等
  • 多床室の室料負担の見直し
  • 区分支給限度額の在り方の見直し
  • 地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の在り方の見直し
  • 軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等
  • 軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化
  • 介護給付費適正化事業(適正化計画)の見直し
  • 居宅サービスについての保険者等の関与の在り方

引用元:歴史の転換点における財政運営

一つずつ解説しながら、私たち介護職への影響も考えていきます。

業務の効率化と経営の大規模化・協働化

まずは介護現場における業務の効率化が重要と言えます。具体的な施策としては、アプリなどのITツールを利用したICT化や、AIロボットの活用などが挙げられます。

すでに介護記録をすべて電子化するなど、業務のICT化は着々と進んでいます。しかし、いまだに手書きの記録であったり、業務にパソコンすらも使っていない事業所があるのも現実です。業務のペーパーレス化は、以下の記事からも分かるように、政府が推進しているので積極的に進めていくことが重要でしょう。

また介護事業所の多くは小規模な法人が多いことから、経営基盤が安定している大規模な法人との連携が推奨されていくでしょう。もちろん、法人間での競争があるからこそ各事業所の成長が期待できますが、競い合うだけでなく支え合うことも重要視し、業界全体で経営の大規模化、協働化の加速が予想されます。

介護施設・事業所等の経営状況の把握

前述の「業務の効率化と経営の大規模化・協働化」を実現するためには、介護施設・事業所等の経営状況の把握は必須と言えるでしょう。しかし、現時点では障害福祉サービスについては経営状況の公表が義務化されていますが、介護サービスにおいては、公表は義務化されていません。

そのため、介護サービスについては、財務諸表等の財務状況の公表を義務化し、介護事業所の経営状況を「見える化」 することが急務と言えるのでしょう。

見える化することで、透明性のある経営への努力が期待できますし、働く介護職の方々にとっても適切な待遇改善や人事考課にもつながることが期待できます。

利用者負担の見直し

介護保険サービスの利用者負担については、2割または3割負担の導入を進めてきました。しかし、後期高齢者医療における患者負担割合の見直し等を考慮し、介護保険サ ービスの利用者負担を、原則2割とすることが検討されています。

また、2割負担の対象範囲の拡大を図り、現役世代並みの所得の方に対する3割負担の判断基準を見直すことについても議論が進めてられていくでしょう。

介護保険サービスの利用者負担は、利用者だけでなく介護事業所やそこで働く職員にも大きな影響があり、筆者の意見としては、今よりは利用者負担を増やし、現役世代や今後介護業界を担っていく若者たちに還元していくことが必要ではと考えています。

ケアマネジメントの利用者負担の導入等

ケアマネジメントは、要介護者の積極的なサービス利用を推進するため、原則利用者負担はありませんでした。しかし、介護保険サービスの利用が当たり前になる中で、今まで通り無料で行うのは現実的とは言えません。

また、居宅介護支援事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており「法人や上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性が疑問視されています。

介護保険サービスをケアプランに入れないと報酬を貰えないことから、福祉用具貸与のみを導入するケースもあり、そういった場合は報酬の引き下げをするといった内容が議論されています。

しかしながら、これまで負担がなかっただけにスムーズに導入するのは簡単ではありません。そのため、利用者や介護事業所への説明はもちろん、政府が間に入り仲介役として丁寧に進めていくことが重要になってくるでしょう。

多床室の室料負担の見直し

現時点では、特別養護老人ホームに関しては多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しがされています。しかし、介護老人保健施設、介護医療院。介護療養病床の多床室については、室料負担の相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっています。

室料をはじめとした日常生活費(食費や光熱費等)については、どの施設においても公平な費用を求めることが大切であり、介護保険の給付対象となっている特別養護老人ホーム以外の多床室の室料負担も、本人負担に移行するべきだと議論が進められています。

根拠がないのに、施設によって負担額が異なるといった、いわゆる制度を決める側のいい加減な対応が尾を引き、現在の問題点として浮き彫りになっているのでしょう。

区分支給限度額の在り方の見直し

要介護高齢者は、「必要な介護に応じて設定された介護給付額の範囲内で、自らの判断と選択により実際に利用したサービスについて、保険給付を受けれることが適当である」とされています。

しかし、介護保険制度の開始以降、さまざまな政策により、区分支給限度額の対象外に位置付けられる加算が増加しています。

特に居宅介護支援については、生活と密接に関係している部分の加算が多いため、あらためて区分支給限度額の範囲内で給付を受けるよう徹底するべきという議論がされています。

参考元:厚生労働省「区分支給限度基準額について」

地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の在り方の見直し

地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、各地方公共団体が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、その枠内で交付金を措置する仕組みとしています。

しかし、多くの地方公共団体がこの上限を超えて総合事業のサービスを提供しているのが現状です。

区分限度基準額同様に、あらためて給付の限度内で総合事業サービスを提供するべきではないかと議論がされています。そして2022年には、運営のガイドラインが見直され、上限を守るようにと通知されました。

介護保険給付や事業の在り方を見直すことは、貴重な財源やサービスを有効活用する上でも非常に重要になってくるでしょう。

軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等

すでに、要支援者に対しては訪問介護、通所介護について、地域の実情に応じ効果的かつ効率的なサービス提供が必要という観点から、2018年に地域支援事業へ移行しました。

要介護1・2の方への訪問介護・通所介護についても、地域支援事業への移行を検討し、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材や資源を活用したサービス提供を可能にすべきという意見が出ています。

しかし、以上のような移行については、地域支援事業では対応できない問題だけでなく、今ある訪問や通所介護事業所の経営を苦しくなるのではという懸念も出ています。

参考元:【まとめ】“要介護1と2の保険外し”とは何か なぜ論点になっているのか

軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化

近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった、医療系の居宅系サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加しています。

注意するべき点は、居宅療養管理指導が通院が困難な利用者に利用されているか把握が必要といったことが挙げられます。

例えば、居宅療養管理指導については、薬局の薬剤師による軽度者へのサービス費用が大きく増加しており「必要以上に居宅療養管理指導を利用するプランを作成した」ケアマネジャーが一定数いることが確認されています。

区分支給限度額や地域支援事業の見直しと同じように、適切な給付が行なわれているかが焦点となるでしょう。

介護給付費適正化事業(適正化計画)の見直し

介護給付費に関して、考え方や目標を明らかにするための適正化計画がありますが、医療費適正化計画と比較すると、費用節減や効率化の観点が乏しいという指摘を受けています。

また事業内容を見ると「医療情報との突合」は事務負担が軽く高い効果額が見込める一方、「ケアプラン点検」は事務負担が大きい割に、効果額が少ないというデメリットが挙げられます。

また、実施主体である市町村の負担も大きく、事業が適切に展開できないケースも見られています。そのため、都道府県が積極的に市町村をサポートしながら、適正化事業の進捗状況の公表など「見える化」を進めることが重要と言えるでしょう。

居宅サービスについての保険者等の関与の在り方

居宅サービスは年々増加しており、訪問介護や通所介護については、一人当たりの給付費が極めて高い水準になっている地域もあります。

こうした中で求められるのは、実施主体である市町村が、サービスの供給量をコントロールするために、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護においては、都道府県に事前協議を申し入れ、その協議結果に基づいて都道府県が指定拒否等を行う枠組みがあります。

サービスの見込み量を超えた場合は、市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否を可能にし、市町村が実際のニーズに合わせて端的に地域のサービス供給量をコントロールできるようにすべきという意見が出ています。

このように、介護保険の保険者である市町村が、可能な限り柔軟に対応しながら積極的に制度を活用し、国の支援を求めることが大事になってくるでしょう。

まとめ

今回は、2024年に迫っている介護保険制度の改定について、現時点で政府が議論している内容から起こりうることを予想してみました。

介護保険制度は3年ごとに改定され、2024年は医療保険制度の改定を重なることもあり注目されています。

介護の現場で働く人はもちろん、介護保険サービスを利用する方も、本記事で解説した「2024年に迫っている介護保険制度の改定で予想されること」を頭に入れながら、自分ごととして捉えどのような影響があるのか考えていきましょう。

投稿者プロフィール

津島武志
津島武志
介護業界17年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。介護職の傍ら、介護士の転職メディア「介護士の転職コンパス」の運営や、複数のメディア(介護に限らず)でWebライターとしても活動中。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。

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