介護事業を実施している事業所は、法律的に必ず介護記録を残す必要があります。
介護記録は、介護保険法で記入と保存を定められており、事業の継続において非常に重要です。
介護サービスを提供するにあたって、日々の利用者の様子の記録は欠かせませんし、日々の利用者の変化についての記録だけでなく、事故などの重要な証拠資料ともなります。
今回は、介護記録の法律的な面も含めた意味と目的を5つに絞ってお伝えします。記入の際に注意することなども併せて紹介しています。ぜひ、これを読んで毎日の記録に役立ててください。
介護記録と呼ばれるものの種類
そもそも介護記録とはいったいどのようなものがあるのでしょうか?
一般的に「介護記録」とよく言われるのは、利用者の生活の様子、血圧・体温などの健康情報や病状の変化、提供されたサービスの内容などを記載する日々の記録のことです。
呼び方は、事業所によって様々ですが、大体次のような呼び方をするのが一般的です。
- 介護日誌(介護記録・サービス実施記録・ヘルパー日誌)
- 介護経過記録表
次に、利用者の個人情報などが記録される
- 基本情報シート
- フェイスシート
ケアプラン作成などに使用する
- アセスメント表
- 課題分析表
- カンファレンス記録
事故予防などのリスク管理に使用する
- ヒヤリハット報告書
- 事故報告書
広い意味でこれらの記録も介護記録と表現されます。
例えば、自治体の監査や調査、指導などで「介護記録等の準備」とあれば、これらの記録を準備しなければならない、ということです。
介護記録の5つの意味と目的
では、介護記録は何のために書かなければならないのでしょうか?
介護はチームプレイであること、介護保険が公的なサービスであることが起因します。
法律的な面もありますので以下に説明していきます。
チームスタッフ間の情報の共有
介護サービスは多くの職員が交代で行います。職員は、ケアの意味や目的、利用者の変化について、共通認識を持つ必要があります。
しかし、利用者一人ひとりの細かな変化に応じたサービス内容を、口頭でスタッフ全員が正しく把握するのは困難です。
介護記録があれば、スタッフ同士が顔を合わせなくても、同じ情報を、正確に、いつでも確実に確認していくことが可能です。
多職種への情報提供と連携の円滑化
介護はチームプレイだと先に述べましたが、そのチームの中には介護職員以外の人達の関わりも多くあります。
家族はもちろんのこと、医者や看護師などの医療スタッフ、リハビリや福祉用具の専門職、他の介護サービス事業所、民生委員さんなどの近隣の地域の方々、ケアマネージャーなどです。
これらの人たちが一丸となって支援を行います。
利用者に関する情報やニーズ、健康上の問題など、利用者が自立して暮らしていくために必要な情報を発信・共有して、全ての支援者が同じ視点で利用者に関わる意識を持つための役割を介護記録は果たします。
法律遵守の根拠として
より正確に記載された介護記録は、介護者の仕事内容を第三者に証明することができます。
事業所は、介護保険制度のもと、決められた介護報酬に基づいた介護サービスを、実施していかなければなりません。
介護保険法には、サービスごとに人員やサービスの内容などが細かに決められており、それを守ることによって報酬として受け取ることができるからです。
転倒や誤嚥(ごえん)といったトラブルも、客観的な事実を正しく記すことが必要です。
事故やケガは、後々訴訟へと発展する可能性もあります。
事故当時のスタッフの対応の事実を、記録に残しておくことは、家族や行政職員・警察の対応に不可欠です。
なぜ事故が起こったか、どうすれば防ぐことが出来たのか、同じ事故を繰り返さないためにはどうすればよいか、を検討する際にも記録は必要となります。
介護記録は法律遵守の根拠となります。
職員の資質の向上、育成・指導のツールとして
記録はOJT(オンジョブトレーニング)として有効です。
新人教育で利用者の観察すべき内容や援助内容を学ぶ機会として使うことができます。
また、介護や医療の専門用語について指導を受けることができます。書くこと・読むことによって介護が具体化し、可視化できるようになります。
介護サービスには介護職と利用者の相性の問題が関係します。しかし、行った介護の内容によって利用者の満足度が変化することは、あります。
介護記録を効果的に利用することは、その利用者にとって適切な介護を行うよう指導ができ、いつでも誰でも同じ質の介護を提供することができるようになるメリットがあります。
結果的に職員全体のケアの質が向上していくのです。
ケアプラン作成
介護記録は、利用者のケアプランを作成するうえで、重要な資料のひとつです。
介護記録に記載された内容の多くは、ケアプランの長期・短期目標や、解決すべき課題の決定のための根拠として扱われます。
目標に向かって継続した介護を行っていくために、ケアプランは必要です。日々の記録はその大きな参考になります。
どのような介護を行うかを記したケアプランは、利用者の現在の状況に合わせて、何度も作り変えられるものです。
信頼の軸となる利用者とのコミュニケーションや、日々の介護内容の振り返りによって、新たなサービスの提供やヒントが得られることがあります。
ケアプラン作成時の介護内容の検証に、介護記録は役立つツールとなります。
記入する際に気を付けること
たとえ、どんなに良いサービスを提供していても介護記録がなければその事実を証明することができません。記録だけが、その証明手段であるのです。
そのために気を付けるべきことは次の5点です。
介護記録は自分たちのチームだけが読み手ではありません。利用者本人やその家族、もちろん自分の事業所以外の行政関係者や介護関係者が見る事を十分に意識して記入していきましょう。
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まとめ
介護記録を書くことは、利用者の様子や状態を適切に第三者に伝え、時には自事業所の職員を守るという役割を担っているのです。
以前、介護の現場ではあまりの記録の多さに、ケアに人手が回らない、という本末転倒な事態に陥っていた事もありました。
多くの事業所では紙での記録も多いですが、行政と話し合いながら、書類様式をより効率的にする工夫も各事業所で行われつつあります。
最近では、タブレットやパソコンのソフトなどを利用して記録をする事業所も増えています。
今後、介護業界には様々な変化や進化があるでしょう。
しかし、介護保険制度の基本的な理念は、利用者の自立支援と重度化防止のための適正で適切なサービスの提供です。
介護記録はそれらのサービスが、総合的・効率的に提供されていることの証しです。
介護記録は、介護サービスの全体の向上につながります。
優れた介護記録を活用して、より良いサービスの提供につなげていきましょう。
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介護・福祉の総合マーケットキャプスの管理者です。
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