介護人材に外国人を受け入れる|介護技能実習生への理解とコミュニケーション

訪問介護

介護人材として外国人を採用することは、グローバル社会であり、人材不足に悩む介護業界では検討すべき課題となるでしょう。
この記事では、外国人の人材として介護技能実習生の受け入れを検討・決定した場合に、スムーズに実習を行うための実習生への理解とコミュニケーション法についてまとめています。

実習生自身の持つ不安や期待、受け入れる側の職員も同じように持つ不安や期待。ひとつでも多くの実習が充実できるよう、事例を交えながらお伝えします。

介護人材として外国人介護技能実習生を受け入れる

介護技能実習制度は1993年に創設された制度で、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的とし、日本の技術・技能・知識の習得を支援する制度です。介護技能実習生とはそもそもどういう制度なのか、受け入れの要件や準備について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

外国人介護技能実習生の受け入れ|入国から帰国まで

まず、技能実習生たちの入国から帰国までの流れを図で確認してみましょう。

厚生労働省HPより

技能実習生たちは、入国前に技能能実習生本体の主な要件を満たした上で、介護職要件である日本語能力や介護技術等を習得します。

日本に入国後は各監理団体による約1か月間の講習を受けて、実習事業所へ配属されることになります。                                        技能実習第1号から第2号に移行するためには、技能検定(学科と実技)、又は試験に合格しなければなりません。その後、第2号技能実習生として実習を継続することができます。3号技能実習生として延長して実習する場合は、そのための移行要件を満たす必要が更にあります。技能実習と特定技能の制度を組み合わせると、最長10年間在留ができます。

ここで、この記事を読む皆さんにお伝えしたいのは、技能実習生たちは皆、実習期間中に実技試験や学科試験、日本語検定試験等を受験しながら、技術を習得していくのだ、ということです。                                           実習生たちは、目的をもって日本に来ています。その将来の夢に向かって努力をしているのだ、ということを覚えておいてください。

どこの国から来る人が多い?

従来は中国からの技能実習生が一番多かったのですが、最近はベトナムからの実習生が多くなってきました。現在、情勢が不安定ではありますが、これからはミャンマー国籍の実習生も増えると言われています。

出入国管理庁HP

中国…全国的に受入れ数が最も多い国です。漢字文化のためコミュニケーションが取り易いです。
フィリピン…英語圏のためコミュニケーションが取り易く、明るく社交的な実習生が多いです。
ベトナム…一般的に日本人に近いと言われ、手先が器用でおとなしい実習生が多いです。
ミャンマー…日本人の価値観に似ていると言われます。勤勉で真面目な性格の実習生が多いです。
タイ…穏やかな性格の実習生が多いです。女性は特に勤勉です。

国民的特徴は、このように言われていますが、 私たち日本人が一律ではないように外国の人も同様です。明るく社交的なベトナムの人もいますし、穏やかなフィリピンの人もいます。先入観を持たず、その人となりをきちんと見て、実習期間を一緒に過ごしましょう。

日本語や介護のことはどれくらい理解している?

介護の技能実習生として入国して来る実習生たちは、技能実習制度の基礎知識、及び、日本語での自己紹介や日本の生活やマナーについて事前講義を受けています。その上で、およそ1400時間(一般職種がおよそ700時間)程度の日本語学習を行い、日本語レベルN3の習得を目指します。

介護技術としては、
■介護の基礎の知識から身体の仕組み
■認知症や事故対応、虐待等について
■身体の介護(移動・移乗・排泄・食事・入浴等)
■コミュニケーション、レクリエーション
などの実技を学習しています。

入国後の1か月間の講習でも、具体的な日本での生活の仕方や、文章の書き方、金銭管理等について実践的な指導が行われます。

それでも、実習生たちは、外国から来たばかりの人たちであることを念頭に入れて接しましょう。

お互いの不安について知ろう 

技能実習生の不安は? 

国内に在住している外国人に、「普段の生活で困っていること、不安に思っていることは何か?」と、質問したデータがあります。                                             技能実習生が、一番困っていることは、言葉が通じなかったり、日本人とコミュニケーションがとれないことでした。次には、風俗や文化・習慣の違いが続きます。

技能実習生の言葉が通じない、という言語面での不安が、自分たちの風俗や習慣を理解して貰えないのではないか、という不安に繋がっています。

職員たちの不安は?

実習受け入れ先の職員たちの不安も同じです。                               どのくらい日本語が通じるのか、どのくらい日本の生活や文化を理解できているのだろうか、という不安です。

ただし、同じくらい期待もあります。                                   実習生も受け入れ先の職員たちも、この実習期間がとても楽しみで、ワクワクしながら一緒に過ごす時を待ってるようです。

不安解消のために必要な4つのコミュニケーション法

事例1 「生活の違いを理解しよう」

「その技能実習生たちは、掃除をする、ゴミ出しをする、ということがあまりよく分かっていなかった。実習開始から1か月後、部屋はゴミだらけで、ベランダにはゴミが放置されていた。」                                           

母国の部屋の掃除は、『ほうきで掃く』行為だけでした。講習で『掃除』の時間はあっても、『拭き掃除』の概念は、あまりないようです。また、日本の『ゴミを出す』行為は、複雑で分かりにくいこともあります。                                            生活の面はもちろんですが、実習現場でも掃除等を依頼する場合は、手順や用具の準備、後始末等の時系列のマニュアルを準備しておく必要があります。

「これは、分かるはず。」ということは技能実習生相手には、ありません。                    日本人には簡単なこと、常識的なこと、あたり前なことを細かく指導していく必要があります。

事例2 「日本語でコミュニケーションをとるためには・・・」

「指示を出されたら「はい」と返事をしたのに、やっていない時があった。なぜやっていなかったのかと尋ねても、返事がなかった。」

『日本語は、難しいです。』と実習生たちは、よく言います。                        実習生たちと話をするときは、いつまでに、誰に、何を、どのようにするのか、 またそれはどうしてなのか、5W1H を意識しながらゆっくりと伝えると良いでしょう。 

言葉だけでなく動作を積極的に見せて説明する工夫(貼り紙やマニュアルなども有効)も効果的です。

自分たちが使っている言葉が、分かりやすい言葉か、簡単な短文か、急いで話していないか、コレソレなどの「こそあど言葉」を連発していないか、を一度再考して声掛けをしてください。

実習中は、必ずメモをとるように指示してください。 このメモの確認で、実習生の理解度を確認することできます。

事例3 「実習生同士は上手くいっているか?」

「2名の実習生が配属された。同じクラスで勉強してきた2人だったので、いろんな面でヘルプし合えると思っていたが…」

実習生たちは、同国出身でも家族や生活環境が違います。性格も違います。仲が良さそうに見えても、家ではほとんど話さずにSMSばかりしている、ということも多いです。

報告・連絡・相談は、個別に行うようにしましょう。                           「○○さんに伝えて下さい。」は、日本語のレベルから言っても正確さに欠けてしまうことがあります。

 周囲に同じ出身国の友人がいる場合は、日本語を使う頻度がどうしても低くなりがちです。 実習生から、日本人職員との雑談や休みの日の外出が、日本語の習得に役に立ったという声が良く聞かれます。

事例4 「ご利用者との関係はどうか?」

「ご利用者の方言が分からない、声が小さくて聞こえない、聞き返されると怖い、緊張して毎日がつらい、という感想が、半年間は続いた。」

方言があると言っている意味が分からない、ということが良くあります。施設の職員さんたちが、簡単な日本語に通訳してあげるとイイと思います。ご利用者は、耳が遠かったり、上手く発声できなかったり、認知症でほとんど喋られないという方もおられます。                                           職員さんたちが、「この方はこんな方」「こんな方法だと上手くいくよ」と、その場に即したアドバイスをしてくれると、実習生の不安も軽減していきます。

ご利用者とのゆっくりした会話は、実習生の日本語の習得にもひと役買ってくれます。

 まとめ

大切なことは、現場の介護職員さんたちが、実習生たちが不安にならないように、話しかけやすい雰囲気、分からないことがあればすぐに聞けるような環境を作るということです。                      日々の小さな不安や疑問を、その時その時に解決していく。これができれば徐々に良いコミュニケーションが取れていくことでしょう。

今回は、4つの事例で、コミュニケーション法を話してきました。           

技能実習生たちにとって魅力のある仕事場は、誰にとっても魅力がある、ということです。

技能実習生も受け入れ先の職員さんたちも、生き生きとした介護をとおして充実した経験をたくさん積んでください。

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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