ケアマネジャーは離職率が高いのはなぜ?実際に辞めた私のホンネ

居宅介護

ケアマネジャーといえば、介護の仕事を始めた人にとっては目標にする資格であり、目指している方も多いのではないでしょうか。しかし、ケアマネジャーの仕事は想像している以上に大変で、「辞めたい」と悩んでいる方は多いようです。

実は私もケアマネジャーをやめてしまったうちの一人。3年働いてすぐに介護福祉士の資格を取り、5年後には介護支援専門員試験に合格し、順調にキャリアアップしましたが、現在はケアマネジャーの仕事を退いています。

今回の記事では、ケアマネジャーの離職率が高いのはなぜなのか、私の体験談も交えて解説していきます。

ケアマネジャーを目指している方、退職を考えている方はぜひ参考にしてください。

ケアマネジャーの働き方

離職率が高いと言われるケアマネジャー。

実際に資格を取って働いてみると、理想と現実のギャップを目の当たりにしてしまうことも。

ケアマネジャーの働き方には主に「居宅ケアマネジャー」と「施設ケアマネジャー」があります。同じ資格であってもその働き方には大きな違いがあります。

ここでは、両方を経験した私がその違いについて説明します。

施設ケアマネジャー

施設ケアマネジャーは、介護老人福祉施設や老人保健施設、介護付き有料老人ホームなどで勤務し、施設に入居されている方の施設サービス計画書の作成が主な役割です。施設サービス計画書は、施設での生活においてスタッフがどのようなサービスを提供するかを計画します。

施設のケアマネジャーは、利用者への待遇に支障がない場合には、他職種との兼務が可能です。

そのため、生活相談員や介護職などの仕事を兼務する場合が多く、ケアマネジメント業務の他にも実際の現場で介護職としての勤務や、夜勤をするケースも多いでしょう。

居宅ケアマネジャー

一方、居宅のケアマネジャーは在宅生活を送る方のケアプランを作成し、サービスの調整を行います。

居宅ケアマネジャーの勤務場所は居宅介護支援事業所です。事業所でケアプランの作成・給付管理・関係各所との連絡調整などの事務仕事を行います。施設ケアマネジャーとは違い、ご利用者の自宅や役所、福祉事務所など外回りをしている時間帯も多く、移動が大変なことも。

他職種との兼務はほとんどなくケアマネジメント業務に集中でき、制度の知識やスキルが磨かれる働き方だと言えます。

ケアマネジャーの離職率が高い理由とは

ケアマネジャーを辞めたいと思う理由は一つではなく、さまざまな要因が絡み合っています。

辞める理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

責任が重い

ケアマネジャーを辞めたい理由として、責任が重いと感じてしまうことが挙げられます。ケアマネジャーの仕事にはご利用者の介護の方向性を決め、ケアプランを作成する重要な役割があります。ご利用者のその後の人生を左右すると言っても過言ではないプレッシャーに耐えられなくなってしまう方もいるようです。

私は、最初に施設ケアマネジャーを長年経験した後に、スキルアップのために居宅のケアマネジャーに転職しました。施設では、施設内に施設長や看護師、介護士などがすぐそばで働いているため、判断に困ったときはすぐに相談し、対応してもらえる環境があります。

しかし、居宅のケアマネジャーになると、その方の対応が全て自分の責任になってしまうというプレッシャーを感じてしまいました。ご利用者の困りごとの解決が全て自分に委ねられる感覚です。

責任の重さはケアマネジャーを辞めた大きな理由の一つです。

残業・時間外勤務が多い

残業や時間外勤務が多いのはストレスになります。

施設ケアマネジャーは、ケアマネ業務と介護職を兼務するケースが大半です。兼務とはいえ、介護現場では慢性的な人手不足により介護職として働く時間帯がほとんど。ケアマネとして机に座ってする事務仕事は、勤務時間外に残業をしている方も多いのではないでしょうか。

私も夜勤明けにもかかわらず、遅くまで残業して、かなり無理をして働いていました。

せっかく、ケアマネジャーの資格を取ってケアマネ業務をできると思っていたのに、理想と現実のギャップに悩む方も少なくありません。

残業や時間外勤務の悩みは居宅ケアマネジャーも同様。多くのケースを抱え、勤務時間内に事務処理ができず長時間残業をするケアマネジャーが多くいます。

居宅のケアマネジャーの場合は、帰宅後や休日にかかわらず携帯電話に連絡が入るのもストレスになってしまいます。

施設で勤務しているときは、ご利用者の対応は現場で完結してくれていたため、帰宅後に連絡があるのは本当に困った時や緊急時のみでした。しかし、在宅のご利用者にとっては全ての窓口が居宅のケアマネジャーになります。ささいな困りごとでも、勤務時間に関係なく自分に連絡があるのはストレスになってしまいました。旅行に行っている時や、山登りをしてリフレッシュをしている時に山頂で電話が鳴った時は泣きたくなりました……

給料が安い

給料が安いのは介護業界全体の悩みと言えるかもしれません。

2019年度の「賃金構造基本統計調査」によると、正社員のケアマネジャーの月給は27万円〜29万円程度で、日本の平均年収と比較すると低い傾向にあるのが現状です。

激務である上、残業や時間外勤務が多いケアマネジャーの仕事。プライベートが確保できない上に給料が安いのであれば、ケアマネを辞めたくなります。

人間関係が難しい

人間関係に悩む方も多いようです。ケアマネジャーといえばご利用者やご家族はもちろん、他職種や他事業所などさまざまな人とうまく連携を取りながら仕事をしなくてはいけません。それぞれの立場の考えがあるので、意見が食い違ってしまうことも。

異なる職種がご利用者のためを思い、動いているのには間違いありませんが、激務でストレスを感じている中で各々の意見が対立してしまうとストレスになってしまいます。


ケアマネ実務120のポイント

「アセスメントの仕方」や「ニーズの導き出し方」「モニタリングの視点」などケアマネジメントプロセスに沿って、ケアマネジャー自身が具体的、客観的にセルフチェックできる120のポイントが解説されています。

新人・中堅ケアマネが日々の実務に自信をもって取り組むための必携本。

ケアマネジャーを辞めたい時の対処法

頑張って介護経験を積み、勉強をして取得したケアマネジャーの資格ですが、辞めたくなってしまった時はどのように対処したら良いのでしょうか。せっかくなので、ここではケアマネジャーの資格を活かした対処法をご紹介します。

ケアマネジャーとして働ける別の職場に転職する

ケアマネジャーとして勤務を続けたいのであれば、居宅なら別の居宅、施設なら別の施設に転職してみるのも一つです。事業所や施設の方針によって雰囲気が異なります。職場を変えるだけでも働きやすくなかもしれません。

私が、最初に指導を受けた居宅介護支援事業所のケアマネさんは、とてもフットワークが軽く夜間、休日を問わず動き回っているようなケアマネさんでした。常にご利用者のために行動するケアマネの鏡と言えるような方で、見習わなければいけないと思う一方、私にはプライベートを犠牲にしてまで、ここまでは出来ないと感じてしまいました。

ケアマネを辞めてから、他の事業所のケアマネさんとも関わることが多くなりましたが、事業所によってもカラーがあり仕事のスタンスも違うように感じます。事業所にかかってくる電話も転送電話の当番制にして、最低限のプライベートは確保するようにしている事業所もあります。どのようなスタンスが正しいかわかりませんが、別の事業所ならもう少し肩の力を抜いて仕事ができたかもしれません。

相談しやすい先輩や同僚に巡り合える可能性もあるので、職場を変えてみるのも一つでしょう。

施設か居宅に働き方を変えてみる

前述した通りケアマネジャーには主に「施設ケアマネジャー」と「居宅ケアマネジャー」の働き方があります。どちらか経験して合わないと感じたなら、違う形態の働き方を検討してみるのはどうでしょう。

施設のケアマネジャーは介護スタッフを兼務していることが多いため、夜勤手当などで居宅ケアマネジャーより給料が高いことも。ご利用者に直接介護をする現場が好きな方であれば、施設ケアマネジャーが向いているかもしれません。

施設ケアマネジャーと居宅ケアマネジャーでは働き方が大きく異なります。私は施設で働いていましたが、介護支援専門員研修などに参加すると、制度に対する知識量などには居宅ケアマネジャーとの大きな差を感じ愕然としました。一度、居宅ケアマネとして働いて1から勉強してみたいと思ったのもこのことからです。

いざ転職してみると、施設で働いていた経験は無駄ではありませんが、居宅ケアマネジャーとしてはものにならないほどの知識の少なさでした。現状を変えたいのなら、働き方を変えて介護支援専門員として学び直し、知識を増やしてステップアップをしてみるのも良いのではないでしょうか。

介護職に戻る

現場での介護が好きな方は、介護職に戻るのも一つです。ケアマネジャーとして働いていた経験は決して無駄ではありません。

現場の介護職をしながら、また別の視点でご利用者と接することで、より良い介護ができるでしょう。

介護関連の別の職種に転職する

ケアマネジャーの知識を活かして別の職種に転職するのも可能です。

私は現在、介護ステーションの事務員として勤務しています。一般的な事務仕事も行いますが、居宅介護支援事業所や訪問介護、訪問看護、福祉用具貸与サービスなどの介護請求業務などはこれまでの知識が役に立ち、スムーズに業務が行えるようになりました。他事業所やご利用者からの電話対応もこれまでの経験を活かした対応ができます。

以前勤務していた大手の有料老人ホームでは、これまでの介護経験を活かして、研修の講師営業採用担当などにキャリアチェンジする人もいました。大手の企業では幅広い活躍もできるのでチャレンジしてみるのもおすすめです。

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ケアマネジャーの経験は無駄ではない!

今回の記事では、ケアマネジャーの離職率が高い理由と対処法について解説しました。

ケアマネジャーと一言で言ってもさまざまな働き方があり、職場によっても雰囲気が全く違います。努力して取得した資格を活かせるステージがあるはずです。

私は、ケアマネジャーの仕事をギブアップしてしまい、別の職種で働いていますがケアマネジャーの経験を活かした仕事が続けられています。

副業でのライター活動でも、介護福祉士やケアマネジャーの経験を活かした執筆をしています。

これまでの経験は無駄ではないはずです。それぞれにあった進路を見つけてくださいね。

投稿者プロフィール

tomo
tomo
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。

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