ヘルパーに医療行為は許されるのでしょうか。
医療行為は、医師や歯科医師、看護師などの資格を有する者でなければ、医療行為を行ってはならないと法律で定められています。
人体に危害を及ぼす可能性のある医療行為(医行為)は、医療職でなければ行ってはならないのです。
しかし、介護の現場では、介護職の行う行為が医療行為に当たるかの基準があいまいで、判断に迷う時があります。
そんな現場の混乱を防ぐため、厚生労働省は指針で判断基準を示したとともに、介護職が一部の医療行為を行うことを許可しました。
今回は、介護職ができる行為やできない行為についてまとめましたので、介護の現場で働く方々の参考になれば幸いです。
ヘルパーができる行為
以下の行為は、原則「医行為ではない」ため、ヘルパーによる実施が可能です。
ただし、身体状態が不安定で専門的な管理を要する場合は医行為となる場合もあるので、あくまで状態が安定していることが条件とされています。
- 水銀体温計・電子体温計により、腋窩で体温を計測すること
- 耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
- 自動血圧測定器または半自動血圧測定器(ポンプ式含む)で、血圧を測定すること
- 動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメーターを装着し、動脈血酸素飽和度を確認すること(新生児や入院治療が必要な者に対する行為を除く)
- 軽微な擦り傷や切り傷、火傷などの処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)
- つめ切り(爪や周囲の皮膚に異常がなく、糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合のみ)
- 歯ブラシや綿棒などを用いての口腔ケア
- 入れ歯の着脱及び洗浄
- 耳掃除(耳垢塞栓の除去を除く)
- ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること(肌に接着したパウチの取り替えを除く)
- 自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと
- 浣腸(市販のグリセリン浣腸のみ。処方薬は除く)
- 食事(とろみ食含む)の介助
- インスリン注射実施の介助(医師から指示されたタイミングでの実施の声かけ・見守り・注射器の手渡しや片付け・記録、インスリンの単位数の確認)※注射針を抜いて処分する行為を除く
- 血糖値測定において、持続血糖測定器のセンサーの貼付や測定値の読み取りといった、血糖値の確認行為
- 経管栄養に関すること(経鼻胃管栄養チューブを留めているテープの貼り換え、経管栄養の準備と片付け)
- 喀痰吸引に関すること(吸引器に溜まった汚水の廃棄や吸引器に入れる水の補充、吸引チューブ内を洗浄する目的で使用する水の補充)
- 在宅酸素療法に関すること(酸素流量の設定、酸素マスクや経鼻カニューレの装着等の準備、酸素離脱後の片付け、酸素供給装置の加湿瓶の蒸留水の交換、機械の使用に係る環境整備、人工呼吸器の位置の変更)
- 膀胱留置カテーテルに関すること(蓄尿バックからの尿廃棄、蓄尿バックの尿量や尿の色の確認、チューブを留めているテープが外れた場合の再貼付、陰部洗浄)
援助をする上で注意すること
援助実施後の状態変化に注意が必要です。
ヘルパーが実施可能な行為の中には、医行為には当たらずとも、身体状態に変化を及ぼす可能性のある行為も含まれています。
特に浣腸やつめ切り、食事介助などは注意が必要でしょう。
浣腸では、実施後の腹痛や出血の有無、冷や汗や悪寒などの血圧低下症状の出現に注意を。
食事介助では、誤嚥に注意が必要です。
援助をする上で、正しい手技の取得も必須でしょう。
例えば浣腸では、立位ではなく左側臥位で行う、浣腸液は体温程度に温めるなど、正しい方法を身につけておく必要があります。
つめ切りに関しても、以下の点に注意し、正しい爪切りの方法で援助することが重要です。
- 入浴後や手浴後の爪が柔らかい状態の時に行う
- 対象者の方の正面ではなく、横に座って行う
- スクエアカットに切る
たかがつめ切りと侮ることなかれ。 深爪してしまうと皮膚の炎症や巻き爪を起こし、その結果歩行に支障をきたすことで、転倒や骨折の原因となることもあるのです。
そして、援助実施後に状態変化が見られたり、体温や血圧値に異常値が見られたりしたら、すぐに医師や看護師に報告するようにしましょう。
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条件付きでヘルパーができる行為
下記の医薬品使用の介助については、条件をクリアすればヘルパーによる実施が可能です。
- 皮膚への軟膏塗布(褥瘡の処置を除く)
- 水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏や外用液の塗布(褥瘡の処置を除く)
- 皮膚への湿布の貼付
- 点眼
- 一包化された内服薬(液剤含む)の内服
- 肛門からの座薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴霧
- 吸入薬の吸入
条件は、以下の通りとなっています。
- 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
- 副作用の危険性や投薬量の調整などのため、医師または看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
- 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
- 上記3点について、医師、歯科医師または看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人または家族に伝えていること
- 事前の本人または家族の具体的な依頼に基づき、医師または歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用であること
簡単にまとめると、「患者さんの状態が安定していて、患者さんやご家族に説明をした上で、医師や看護師の指示の下であれば、医薬品使用の介助は可能」ということです。
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ヘルパーができる医療行為
「喀痰吸引」や「経管栄養」は「医行為」に当たるため、ヘルパーが実施可能な範囲は、準備や片付け、チューブの洗浄だけでした。
しかし、法律が改正されたことにより、平成 24 年4月から介護福祉士および一定の研修を受けた介護職員は、喀痰吸引、経管栄養の行為が可能となりました。
看護職員にしか許されていなかった「診療の補助」を、保健師助産師看護師法の適用除外規定を設けることにより、介護福祉士及び認定特定行為業務従事者が業として喀痰吸引等を実施できることを法律上明確化したのです。
実施可能な行為 | ・喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部) ※咽頭の手前までを限度とすること ・経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養) ※医師または看護職員が、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことの確認や栄養チューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認を行うこと |
実施可能な職種 | ・介護福祉士 ・一定の研修を修了した介護福祉士以外の介護職員等 |
実施する上での条件 | ・医師の指示 ・看護職員との連携、役割分担 ・「計画書」や「報告書」の作成 ・対象者本人や家族への説明と同意 等 |
介護職が、一部の医行為を行うにあたっては、在宅でも施設でも、医療職との連携の下、安全にサービスが提供されることを求めています。
まとめ:ヘルパーのできる行為の範囲を知り、安心安全に日々の業務に従事しよう
高齢社会の日本では、ヘルパーさんの存在は必要不可欠であり、求められる援助内容も拡大しています。
介護に関する知識だけではなく、医療に関する知識も充分に求められる時代です。
介護職ができる行為の範囲を知ることは、患者さん(利用者さん)だけでなく、自分を守ることにも繋がります。
日々の業務の中で、事業主や利用者さんたちから無理難題を押し付けられることもあるでしょう。
そんな時、介護職ができる範囲を知っておくことで、きちんと線を引くことができます。
今回の記事が、日々介護の現場で奮闘する方々の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
- 看護師・保健師としての経験後、現在は高齢者のケアマネジメント業務に奮闘中。ベビーから高齢者の方まで幅広く関わっています。
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