在宅での看取りの現状と問題点は?ケアマネが行うべき支援について教えます

訪問介護

ケアマネージャーをしていると、利用者さんの「死」に携わる機会は多いですよね。

筆者自身も、がん末期の方の在宅看取りを経験する機会が多く、ケアマネージャーとして何ができるか、どんな支援が必要かを考えさせられる日々です。

先日も、余命2か月のがん末期で、最期は自宅で亡くなりたいという希望が強く、なかば強引に退院してこられた方の在宅看取りに関わりました。

今回は、筆者自身の経験をふまえ、利用者さんが在宅での最期を迎えるにあたり、ケアマネージャーが行うべき必要な支援についてお伝えします。

在宅での看取りの現状と問題点

まずは、在宅看取りの現状と問題点についてお話しましょう。

厚生労働省 「第1回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173560.pdf

によると、「治る見込みのない病気になった場合、どこで最期を迎えたいですか」という質問に対し、54.6%が「自宅」と回答しています。

しかし、実際は74.6%が病院で亡くなっており、自宅で亡くなった人の割合は12.7%と、たった1割しかいないのです。

在宅で最期を迎えるためには、医師や看護師などの医療資源の確保が必要不可欠です。

厚生労働省「第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000842258.pdf

によると、在宅での看取りを行っている医療機関は年々増加しているものの、病院・診療所ともに全体の約5%に留まっているという結果が出ています。

訪問看護ステーションの数は増加し、在宅で「看護」は受けやすくなっていますが、看取りまで行ってくれる医師の数はまだまだ足りないのが現状と言えるでしょう。

在宅看取りに向けてケアマネージャーとして必要な支援

では、利用者さんが在宅での看取りを望まれたら、どのように支援していけばよいのでしょうか。

以下のポイントを押さえましょう。

  • 本人、家族の意向確認
  • 病院の主治医、相談員との連携
  • 在宅医、訪問看護事業所の手配
  • 介護サービスの調整
  • その他のサービスの調整

本人、家族の意向確認

本人、家族の意向を確認することは重要です。

「自宅で死にたい」と本人が思っていても、呼吸が乱れてきたリ食事が取れないようになってくると、家族は不安でつい救急車を呼んでしまいます。

救急搬送されると、入院してそのまま病院で亡くなることがよくあります。

身体状態が悪化してきたら、訪問看護師を呼ぶ、それから在宅医に指示を仰ぐ、といった流れになることを本人や家族にきちんと説明し、理解しておいてもらわなければなりません。

在宅で「看取る」ということは本当に大変なことです。

積極的治療を望まないというのであれば、ホスピスという選択肢もあります。

いくつかの選択肢を用意し、本人・家族の意向をきちんと聴き取ることが大切です。

病院の主治医、相談員との連携

入院していた病院の主治医や相談員との連携は必要不可欠です。

どんな状態で退院してくるのか、病院の治療経過や服薬状況など、確認しておかなければならない情報はたくさんあります。

可能であれば、退院前カンファレンスに参加しておくとよいでしょう。

病院によっては、地域連携室がうまく機能しておらず、充分な連携がないまま在宅に返してこられるケースも見受けられます。

関係者の連携がうまくいっていないと、困るのは利用者さんやその家族です。

利用者さんやご家族を取り巻く関係者が、地域包括ケアについての高い意識を持つことが望まれます。

在宅医の手配・連携

退院にあたり、病院側が、在宅医の調整と連携を図っておく場合がほとんどですが、まれにケアマネージャーがその役割を担う場合もあります。

在宅医の調整にあたり、まずはかかりつけ医が往診をしてくれるかどうかの確認が必要です。

往診してくれる医師は増えてきましたが、24時間、緊急時の対応を行っていない場合もあります。

さらに、がん末期の利用者さんの場合、「麻薬」が処方可能な医師かどうかが重要です。

医師なら誰でも「医療用麻薬」が処方できるわけではなく、都道府県知事の許可である(麻薬施用者免許)が必要です。

がん末期の看取りの場合、麻薬を使用し痛みをコントロールすることが必要になるため、麻薬が処方可能かどうかの確認が必要になるのです。

訪問看護事業所の手配・連携

訪問看護事業所は看取りに慣れているところを選ぶ方がよいでしょう。

訪問看護においては、がん末期(その他指定の疾患)の場合や特別訪問看護指示書が出ている場合は「医療保険」適応になりますし、その他の場合は「介護保険」適応になります。

どちらの保険が適応されるのか、ケアマネージャーとして把握しておく必要があります。

そして、訪問看護事業所の中には、点滴支柱台や吸引器を持っているところもあり、厚意で使わせてくれる場合もあります。

点滴支柱台や吸引器がなければ自費レンタルになるため、その辺りの確認も必要です。

介護保険サービスの調整

介護保険サービスとして、訪問介護や訪問入浴、福祉用具貸与の調整を行います。

独居なのか同居家族がいるのかで、訪問介護の必要回数は変わってきます。

筆者が関わった中には、独居で最期を自宅で過ごすことを希望された方の場合、週6回訪問介護を導入しました。

さらに、最期はさっぱり気持ちよくなりたい(させてあげたい)と訪問入浴を希望される本人・家族も多いです。

看取りの際の福祉用具貸与としては、特殊寝台の利用が多数を占めます。

看取りの状況であれば、要介護2以上の介護度であることが予想されますが、介護度が状態に追いついておらず、要支援の場合もあります。

その場合は、軽度者福祉用具貸与確認書を自治体へ提出し、許可をもらいましょう。

その他のサービスの調整

歯科訪問診療も調整すべきサービスの一つです。

経口摂取の量が減ってくると、唾液の分泌量が減るため、細菌が繫殖しやすくなり、口腔環境が悪化します。

免疫力が低下していることをふまえても、口腔内の環境を清潔に保つことは必須です。

特に、咽頭がんや舌がんの方の場合では、看護師による口腔ケアだけではなく、歯科医師・歯科衛生士による口腔内のチェックを導入した方がよいでしょう。

居宅において歯科訪問診療を提供している歯科診療所の割合は、平成29年では14.6%であり、微増傾向が見られます。

在宅看取りを行う上では、疾患や身体状態など必要に応じて歯科訪問診療の手配も行いましょう。

まとめ:在宅看取りの際のケアマネージャーとしての役割は大きい

今回、がん末期で最期を自宅で過ごされた方に関わり、「看取り」におけるケアマネージャーの役割の大きさを実感しました。

ケアマネージャーは、利用者さんやご家族、病院や在宅医、訪問看護師やサービス提供事業者の中心となって、全てが円滑に回るように調整していく必要があります。

ケアマネージャーには、「気づく力」「つなぐ力」「展望する力」が求められるのです。

非常に安らかな顔で眠る利用者さんの顔を見て、「自宅で亡くなりたい」という希望を叶えられて本当によかったと感じました。

希望に沿った最期が迎えられるように、本人・家族を取り巻く関係者の団結力と、医療・福祉・介護サービスの充実が社会の早急の課題です。

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