シフト表が見づらかったり、ついうっかり交代スケジュールをミスったり…。
利用者さんやケアマネージャーから「ヘルパーが来ていない」とクレームになる訪問忘れ。
どうしたらヘルパーの訪問状況を見える化し、確実な訪問ができるのでしょうか。
この記事では、様々な考えからICTで訪問忘れ対策をとって成功した事業所の事例や情報をお伝えしています。
思わぬメリットも生まれていますよ。
ぜひ、参考にしてください。
訪問介護事業所の訪問忘れとは?
訪問介護事業所では常勤のヘルパーさん以外に非常勤、あるいは登録という形のヘルパーさんで事業運営しているところが大半です。非常勤の多くを占める直行直帰の登録ヘルパーさんは事業所に顔を出すことがなかなかありません。
事前にもらっているシフト表で自分のシフトを確認しながら訪問していくわけですが、シフトの采配ミスや交代、時間変更などの細かい連絡が周知しづらいことがあります。
結局、利用者さんやケアマネージャーから「ヘルパーさんが来ない」という連絡が来て、初めて訪問忘れが判明するということになってしまって、事業所の対応が後手に回ることになります。
最終的に「複数の訪問介護事業所を使います」「事業所を変更します」などのクレームに繋がることもあるのです。
訪問忘れの主な原因
では、どうして訪問忘れが起こるのでしょうか。
訪問忘れの原因は、「業務に追われていて忘れた」「連絡ミス」「提供票のチェックミス」「思い込み」「パソコンの入力ミス」などです。
シフト表をサービス提供責任者が一人で作ることが多いため、最終チェックが確実にできにくいこともあります。特に、急な休みなどへの対応は、交代の要因を確保することに四苦八苦して、その後のことが抜けてしまっていたということもあるでしょう。
また、一日に複数の利用者宅へ訪問することでシフト表が複雑になってしまい、見落としや、時間の見間違え等々でミスが発生しやすくなることもあります。
訪問忘れの対策
では、こうした原因を改善し、訪問忘れをなくすにはどのような対策をしたらいいのでしょうか。
一つ目は、シフトの変更が素早く簡単にできることです。
そのためには、シフトを作成するサービス提供責任者が各ヘルパーさんの状況を分かっていて、稼働可能の予測が立てられる必要があります。併せて、変更したシフトがいつでもどこでもスムーズに各ヘルパーさんに確実に通達できるようにする必要があります。
もう一つは、ヘルパーさんがシフト変更などの通達事項をすぐに確認できて、行った・行ってないの実施状況がひと目で分かるようにすることです。
紙で配布したりLINEで連絡をしている事業所もありますが、抜けが出やすい問題点があります。
リアルタイムでシフト変更後の内容が通達され、行った・行ってないがひと目で分かるようにすると確実です。
これらの解決にはICTの導入が有効です。
例えば、もっと簡単にみんなが使える便利な機器(「字が小さくて見えない」「今どきの難しいICTはイヤ」と言い張る高齢のヘルパーさんでも)、しかも費用が手頃で事業所に負担が少ない。その上、常勤の職員の業務負担も軽減し、事務作業の効率化も図れる、そんなことが出来ればチームの士気も上がりますよね。
ICT導入で訪問忘れを防ぐ
では、実際に現場でICT化を導入した事業所の事例をみてみましょう。「訪問忘れ0」は達成できたでしょうか?
①ヘルパーの職員数:19人(登録ヘルパー17名) 最高齢68歳
職員の負担軽減のメリットも
この事業所は、ヘルパー数19人、内、登録ヘルパーさんが17人という中規模の訪問介護事業所です。
登録ヘルパーの出社は、週に一回、記録簿提出のみでしたが、利用者宅への訪問を忘れて訪問しないヘルパー等の訪問ミスが、年に数回発生していました。
また、利用者状況変化等の報告が遅く、他の担当ヘルパーとの連携も情報が遅いなどの理由で、次の訪問に間に合わないことなども度々発生していました。
そこで、職員間の連携を強化するためにICTを導入することに。スマートフォンを使って記録や連絡・報告が出来る簡単なものです。
68歳のヘルパーさんもプライベートでスマホを使い慣れていたことから、思っていた以上に抵抗なく使用ができました。
それまで介護記録の提出のときや、定期的なミーティングでしか顔を合わせない人も多い事業所でしたが、導入後は、スマホで個々にコミュニケーションをとるスタッフが増え、シフトの変更や交代要員の補充も短時間でできるようになり、サービス提供責任者やリーダーの負担がずいぶん軽減しました。
記録やミーティングもスムーズに実施できているため、ケアの質も上がったと思います。
②ヘルパーの職員数:50人(登録ヘルパー45人) 最高齢75歳
情報の共有化が格段にできるように
月に2,500回を超える訪問を行う事業所です。
様々な対策を講じても、ヒューマンエラーによる訪問の抜けが年に数回でてしまうことが悩みでした。そこでシフトや記録が管理できるICT機器を導入することに。
しかし、登録ヘルパーの半数近くが60代以上だったため、ヘルパーからは「スマホを持っていない」「使いこなせるかわからない」といった不安の声が上がりました。
そこで、スマホを持っていない職員や対応機種ではない職員には事業所から端末を貸与したり、自分のスマホを活用してもらえるヘルパーには費用を負担する補助制度を作ったり、不公平感がないように整備をしました。
導入後は、個々のシフトや、訪問の状況がリアルタイムに確認できるようになったため、訪問の抜け漏れがほぼなくなったそうです。
訪問抜けがなくなったことで事業所の評価も上がり、利用者が増えたり、今まで以上に職員が自分のシフトや訪問時間を意識してくれるようになり、責任感が増したという面でもICT機器を導入して良かったと思います。
③ヘルパーの職員数:15人(登録ヘルパー11人) 最高齢65歳
感染症対策やBCPの一つとしても有意義
新人の入職がほとんどない状態で、慢性的な人手不足による予期せぬ訪問ミスが、度々起こるようになっていました。事業所としては、できれば若い人に就業してもらい、活性化を図りたいと思っていたのですが、求人に対する反応がほぼない状況で何か手立てをしなければならないと切羽詰まっていました。
そこで、人手不足のなか、少しでも職員の負担を軽減し情報の共有化をするための一つの方策として、ICTの導入を決めました。
目指したのは、訪問忘れ0ゼロと新しい訪問介護のスタイルです。
ICTは、訪問スケジュールの調整および業務管理、伝達事項等を一斉に連絡できる連絡体制など、壁のない事業所作りにひと役買ってくれています。
事業所と職員、また、職員同士の連携がスムーズになったことで、利用者にその効果を反映させることができ、苦情が減少しました。
職員間の連絡もモバイル端末で共有できる仕組みになっており、職員の急な休みや時間変更にも対応でき、各利用者の介護情報に関する報・連・相や情報共有も速やかにできるようになりました。
ICTを導入したことを求人案内文に入れるようになって、徐々に若い方からの問い合わせも増えてきています。時代に合わせて事業所も変わっていくことで、大きなメリットがあると感じています。
また、コロナ禍による管理者の不在や事務所の一時閉鎖などに対して、残りの職員が連携して、サービスの質を低下させることなく介護サービスを利用者に提供し続けることができ、感染症対策やBCP(事業継続計画)にも役立っていくことが分かったのは、思わぬメリットでした。
まとめ
訪問介護員の高齢化により、活躍しているヘルパーさんは新しいことをするのが苦手であったり、新しいものへの不安が強かったりと、ICTは敷居が高いと考えがちです。
しかし、それぞれの職員に働きやすい環境を作ることは、人手不足解消になるかもしれませんし、ゆとりのある職場環境が、訪問忘れや休みの取りにくさなど、訪問介護事業所によくある多くの課題を解決できるかもしれません。
テレッサmobileは、サービス実施記録「テレッサ」のシステム版です。介護記録のみのストレージ版、シフト機能もついたベーシック版と、課題に応じて使用が可能です。
あなたの事業所もICTを導入して、『訪問忘れ0』対策の業務効率化や働き方改革を推進してみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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