同居家族がいたら介護ヘルパーは入れない、と思い込んでいませんか?
訪問介護を利用する際は同居家族の有無だけでなく、同居家族の状態も重要となります。同居家族の存在によるヘルパーの利用は、「身体介護」「生活援助」の2種類に分けて、それぞれの条件を確認することが大切です。
ここでは、同居家族がいる場合における訪問介護の利用条件を解説します。
同居家族がいても、利用者に必要なヘルパー支援が提供できるように、この記事が参考になれば幸いです。
訪問介護(ヘルパー)のサービスとは?
訪問介護は、身体介護や生活援助を受けることで、要支援・要介護者に認定された高齢者が自立した在宅生活を送ることを支援する介護保険サービスです。
「自立した生活を送る」ことを前提としているため、同居する家族がいたら支援に入れるかどうか迷う人も多いでしょう。
では、介護保険でいう「同居」とはどのような状態でしょうか?
介護保険での「同居」について
厚生労働省の通知によると同居の判断とは
- 同一家屋であること。
- 玄関、居室、台所、浴室等が独立でないこと。
- 玄関、居室、台所、浴室等が独立していても室内階段、室内扉でつながっていること。
- 同一敷地内に家族等が居住しており、家事の日常生活上の世話を行っていること。
としています。
同じ家に住んでいることだけが同居ではない、ということになりますね。
同居家族がいる場合におけるヘルパーの利用条件とは
訪問介護は主に「身体介護」「生活援助」の2種類に分けられます。
同居家族がいる場合における訪問介護の利用条件を身体介護・生活援助に分けてそれぞれ解説していきましょう。
身体介護
身体介護とは、利用者の身体に直接触れて生活に必要な援助を行ったり、利用者の生活意欲やADL(日常生活動作)の向上を目的としたりするサービスです。また、利用者の状態に合わせて、専門的な知識・技術を要する援助や相談・指導も行います。
身体介護は、同居家族の有無とは関係なく利用することが可能です。介護対象は利用者本人に限ります。他のケアプランを利用している同居家族は自身のケアプランでの調整となります。当該ヘルパーには依頼できません。
入浴や通院なども依頼できます。
ただし、身体介護サービスのなかでも「自立支援の見守り」に関しては、生活援助との線引きが曖昧になりやすいため注意しなければなりません。
生活援助に該当すると判断された場合は、身体介護としてのサービスは中止されます。
生活援助
生活援助とは、「利用者本人が日常生活を送るために必要な家事の一部を、利用者の身体に触れることなく代行するサービス」です。そのため、日常生活に当てはまらない家事や、日常生活に必要でない家事は生活援助では受けられません。
同居家族が代行できれば生活の支援は、その家族が行うものとなっています。
ただし、要介護者のケアプランを作成するときの書類には「生活援助中心型の算定理由」という欄があります。
そこには、「1.一人暮らし 2.家族等が障害、疾病等 3.その他( )」と記載されており、ケアプランに生活援助を組み込んだ場合、当てはまる部分に〇をつけるのです。
この項目があるということは、つまり「一人暮らしでなくても生活援助は利用できる」ということになります。
同居家族がいる場合の生活援助とは?
では、どんな場合であれば同居家族がいても生活援助が提供できるのでしょうか。
- 家族が病気や障害がある場合
同居家族が重度の障害を持っていたり、病気(疾病によっては援助を受けられる期間に差が出る可能性もあります)であることが明確ならケアマネがその旨を必要書類に記載し、プランに位置づけることができます。ケアマネージャーは障がい者手帳の有無だけで判断せず、実際に障がいを理由として、家事をすることが可能か否かを判断します。
- 家族が仕事で出払い日中独居になる場合
家族と同居している場合について、厚労省からは「きちんとアセスメントしたうえで必要であれば利用するように」という指導も出ています。
ただ、夜にできる家事については、援助が入れられない可能性が高いです。
下記のようなケースと支援内容が考えられます。
- 家族が昼間は仕事のために外出している場合の、昼食調理や配膳、洗い物
- 失禁が多く、トイレが汚れていて滑る危険性がある場合のトイレ掃除と、その都度の洗濯
- 日中独居(介護が必要なのに日中は家族が全員外出していて、実質的には一人暮らしになっている高齢者)の場合の、ポータブルトイレの掃除
元気な同居家族がいる場合の生活援助の利用は、ケアマネがかなり検討し、それでも必要だと認められた場合に可能だと思った方が良いでしょう。
ちなみに、元気なご家族がいる場合で生活援助をケアプランに取り入れる場合、後々になって保険者に介護保険を利用できないと言われないように、ケアマネージャーが事前に市町村の担当課に確認することが多いです。
どのサービスがどこまで必要なのかは各家庭の状況によって異なるため、ヘルパーは相談を受けたら、まずケアマネージャーに報告しましょう。
その他、介護疲れが著しくて共倒れの危険性がある場合も、利用できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003fwn-img/2r98520000003fy5.pdf
高齢者世帯でどちらも要支援・要介護の場合は要注意
家族がいても生活援助を利用したいケースとして注意したいのが、高齢者世帯でどちらも要支援・要介護認定を受けている場合です。
介護保険のサービスは個人単位なので、夫婦そろって要介護状態でも、妻の生活援助は妻のケアプランで、夫の生活援助は夫のケアプランで作成しなくてはいけません。
例えば掃除の場合、使う自室が別であれば話が簡単ですが、お風呂場やトイレ、台所などの共有部分は、どちらが多く利用しているかを検討し、どちらかのケアプランに組み込みます。
また、この共有部分についてのサービスは、ケアマネの判断だけではなく、保険者である市町村の判断を仰ぐことが多くあります。
共用部分とは?
生活援助で清掃の対象となる場所は、訪問介護の利用者本人のみが利用する場所です。同居家族も利用する場所は家族で清掃が可能と見なされ、生活援助の対象に含まれません。
ただし、共用部分でも下記のような事例であれば利用が認められるケースがあります。
- 就労などで同居家族の不在時間が多く、共用部分をほとんど利用していない
- 利用者の失禁回数が多く、同居家族の不在時に清掃する必要がある
- 同居家族の全員が要支援・要介護認定を受けている
同居家族の人数や生活実態によって個別に判断されるため、現状を詳細に報告しましょう。身体介護の区分でのサービス利用が可能になる場合もあります。
同居家族がいる場合のヘルパーの支援についての注意点
同居家族がいるときの生活援助・身体介護という介護ヘルパーのサービスには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 家事ができない、苦手は該当しない
- 共用部分や同居家族の使用分は基本的に依頼できない
- サービス内容は市区町村の指示に従うことになる
介護ヘルパーは、あくまでもやむを得ない理由で介護ができない場合に、利用が認められているサービスです。
家事ができないから依頼したい、苦手だから頼みたいといった個人的な理由では利用できないことをきちんとお伝えしましょう。
最終的な判断は…
同居家族がいる場合、生活援助でどこまでサービスを受けられるかの最終的な判断は、居住する市区町村が決定します。
訪問介護は、市区町村が保険者となる介護保険サービスです。介護保険がどこまで利用できるかは保険者に決定権があるため、市区町村が許可しなければ介護保険は適用されません。
介護保険が適用されなければ利用料金は全額自費負担となるため、事前にどこまでの生活援助が受けられるかを確認しておかなければ、利用者に多大な迷惑をおかけすることになります。
まとめ
同居家族がいる場合のヘルパー利用についてはケアマネージャー間でもいろいろ話題になります。
例えば、「仕事のある同居の一人息子さんからヘルパーに日中のご飯を作ってもらえないかと頼まれたけど行けるだろうか」、「老夫婦世帯の家事援助プランは妻の方にだけ生活で調理を入れて夫の分まで作れるか」、「同居の孫が家にいるが、全く世話をしていないようだ」「最近、甥や姪等との同居が増えていて家族関係が難しい」…様々な家庭の事情が一杯です。
ケアマネージャーはアセスメント等を踏まえて必要と判断した上で市区町村に相談し確認をします。大抵の保険者は「制度上、家族同居でも一律だめではない」と回答して一緒に検討してくれることが多いです。
困っている家族や利用者から相談を受けたら、ヘルパーは一番身近な専門職としてケアマネージャーに報告・相談してみるのが一番です。
また、自費サービスや有償ボランティア、配食サービスなど地域の資源も知識として入れておくと便利です。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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