通所介護(デイサービス)は、高齢者が可能な限り自宅での生活を継続できるよう支援する重要なサービスです。単なる送迎とレクリエーションにとどまらず、利用者のQOL向上や地域包括ケアの一翼を担う場として期待されています。
しかし、デイサービスの総量は増加しつつも廃業数も増え、 そのサービス内容はブラッシュアップが求められています。また、介護業界は人材不足が深刻化しており、若手職員の育成やキャリアップも必要です。
この記事では、キャリアアップを目指す若手介護職さんやリーダーの育成に尽力している職員さん向けに、通所介護のサービス内容を深掘りし、リーダーとして求められる視点やスキルについて解説しています。最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
デイサービスの仕事を極める

デイサービスの目的は、要介護者が自宅での生活を継続できるようにサポートすることです。『来た時よりも元気になって家に帰る』というキャッチフレーズは通所介護サービスの持ち味です。
それでは、デイサービスが提供する具体的なサービス・仕事内容を見ていきましょう。
送迎サービス:自宅と施設間の移動をサポート
利用者の自宅から施設までの送迎は、安全性と快適性を考慮する必要があります。最近では、送迎時の介助技術向上や車両のバリアフリー化が進んでおり、送迎そのものが利用者の信頼獲得につながります。
デイサービスは、社交の場です。たとえ歩けなくても、「行ける」ことが要介護者にとって大切なことです。
健康チェック:看護師や介護職員によるバイタル測定、服薬管理
看護師や介護職員によるバイタルチェックは、利用者の健康状態を把握し、適切なケアにつなげる役割があります。異常が見られた場合には家族や主治医と連携を取り、安心して通える場所になることが重要です。
機能訓練:理学療法士や作業療法士によるリハビリ
デイサービスの大きな役割の一つが、利用者の自立支援です。
理学療法士(PT)や作業療法士(OT)によるリハビリはもちろん、日常生活動作(ADL)向上を目的とした活動も重要になります。
何をどのように行って利用者のモチベーションを上げていくか、また継続していくかがカギになります。
食事・入浴サービス:栄養バランスの取れた食事の提供や身体機能に応じた安全な入浴支援
食事提供は栄養管理の視点からも重要で、個々の利用者の状態に応じたメニューの工夫が求められます。
また、入浴介助はデイサービスの差別化要素の一つでもあり、入浴設備の充実が施設選びのポイントになることもあります。食事やお風呂を楽しみに通所介護に通っている利用者は本当に多いです。
レクリエーション:認知症重度化予防や社会参加を促す活動
楽しく参加できる活動を提供することで、利用者の精神的な充実度を高めることができます。特に、認知症重度化予防を目的とした脳トレや社会参加を促すレクリエーションは、多くの事業所で力を入れている分野です。
今では、カフェや駄菓子屋を併設したり、仕事やボランティア活動に参加したりと様々な活動を行っているデイサービスがあります。
最近のデイサービスの取り組みには、「こんなこともできるの!?」と思うような内容もあります。要介護者だからとあきらめずに、隠れたポテンシャルを見つけることも大事です。
リーダーの視点とスキル

多人数の介護職員等をまとめて、それを単なるスタッフの集まりではなく、支援者のチームとしてまとめるリーダーの役割は非常に重要です。
リーダーには、通所介護の基本的なサービス内容を理解したうえで、その意義や目的から業務の質を向上させていこうとする視点が求められます。
そのための3つのスキルを紹介します。
コミュニケーションスキル
リーダーには、利用者とその家族のニーズを深く理解し、満足度を高める取り組みが必要です。
- 個別支援計画の策定に積極的に関与し、サービスの質を向上させる
- 家族とのコミュニケーションを密にし、信頼関係を築く
- 相手の立場に立った対応(クレーム対応、職員の悩み相談)
業務管理スキル
現場のリスクマネジメントもリーダーに求められるスキルの一つです。
- ヒヤリハット報告の活用、定期的な事故防止研修の実施
- 業務の効率化を図るためのICT活用への理解(記録ソフト導入など)
チームビルディングスキル
リーダーはチーム全体をまとめ、職員が働きやすい環境を整える役割を担います。
- 介護職員間の情報共有の仕組みを整える(申し送り、カンファレンスの活用)
- 若手職員への指導・育成に関与する
- 積極的に意見を発信する(会議での発言、改善提案)
デイサービスの現場での課題とリーダーとしての考え方

毎日時間に追われ忙しく働く中、業務優先になったり、ミスを繰り返してイライラしたり…そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
課題は?
デイサービスは、決まった時間の中で実施すべきサービスを確実に提供しなければなりません。それができなければ減算となったり、地域の中での信頼関係を失ってしまいます。
やるべきサービスとは、基本のサービスです。その中で利用者それぞれに適したケア、利用者が喜ぶ楽しいケアを提供しようとアレンジすると、職員によってケアの濃淡が出たり、「そこまでは無理」という職員がいたり…。職員間の考え方の違いによるジレンマや停滞を生むかもしれません。
リーダーの考え方
確実に利用者への適切なサービス提供を行うために、リーダーは、食事介助や入浴介助、排泄介助といった様々な介護業務が円滑に進められるように、職員の能力を識別して適材適所に割り振ることを考えなければなりません。
職員の得意な分野で力量を存分に発揮させることで、業務のタイムロスが少なくなり、ケアの質の向上も期待できます。
また、リーダーは自分は現場の職員であるという意識を持つことも必要です。現場の状況を見ながら個別ケアに結び付けたり、新しいケア方法を生み出していかなければ職員の不安や不満は募る一方だからです。現場優先の姿勢は、他の職員の大きな信頼を獲得できます。
そして、報告・連絡・相談を活用することで事業所全体が一つのチームに成るように考えなければなりません。
リーダーは、現場の課題を解決しながらチームをまとめる役として重要なポジションです。
リーダーへのステップアップするために必要なもの

これから自分の事業所はどのようなケアを目指していくのでしょうか。リハビリを強化するのか、レクリエーションを拡大するのか、他にない認知症ケアを目指すのか…。自分の事業所の事業計画書などを読んでみるのも、サービス内容を深く理解してスキルアップを目指すために良い方法です。
次に、リーダーを目指すために具体的にどんなことがあると良いか、3つ紹介しましょう。
資格取得・スキルアップ
リーダーを目指すには、資格取得や研修の受講が有効です。
- 介護福祉士・社会福祉士(国家資格)・社会福祉主事の資格取得
その他にもガイドヘルパーや福祉用具相談員など、違う視点のための資格に挑戦するのも良いと思います。
- 認知症介護実践者研修等
認知症の人は、これからますます増加します。認知症に特化した研修に参加すると、利用者に対するゆとりある声掛けや対応ができるようになり、介護をしている家族へもっと寄り添えます。
施設運営への理解を深める
通所介護事業を支える視点を持つこともリーダーに求められます。
- 加算の取得(機能訓練加算、入浴介助加算など)
- 収支管理の基礎(人件費、利用者数、経費管理)
今はよくわからなくても、少しずつ調べたり見たりして慣れていきましょう。
契約書や重要事項説明書、予算案や決算書は、事業所が公表しないといけないものです。家族はもとより誰でも手に取って見れるよう事務所に備え付けられています。
自事業所のあらゆる数字を知ることで、多方面からの考え方が出来るようになります。

あのデイサービスには、なぜ人が集まるのか
施設選びで失敗したくない人・事業者・求職者 必読!介護経営コンサルタントの草分け的存在であり、日本デイサービス協会理事も務める編著者は、「デイサービスは、これからの在宅ケアの中核的存在だ!」と言う。
幅広い機能を持ち、個別サービスと比べてリーズナブル(費用対効果が高い)であり、さらに、介護職員の不足解消の救世主になりえるからだ。
本書では、2022年デイサービス5選(日本デイサービス協会主催)受賞企業を含む、ユニークな取り組みをしている全国の15法人を紹介。
コミュニケーション能力の向上
コミュニケ-ション力をアップさせるためには、挨拶と笑顔が大切です。
元気な挨拶と笑顔は、自分も気持がいいし、相手も嬉しくなります。
コミュニケーション研修は、接遇研修やアンガーマネジメント研修など数多くあります。自分に合った研修に参加して、相手の気持ちを想像する力や必要なときに必要なことが言える力を育てましょう。
リーダーとして活躍するためのチェックリスト

リーダーとして成長し、チームを成功に導くために必要な要素をチェックリストにしました。
- 基本的なリーダーシップスキル
- ✅ビジョンの共有:組織やチームの目標を明確に伝えられているか?
- ✅ 意思決定力:情報をもとに迅速かつ的確な判断ができるか?
- ✅問題解決能力:課題に直面しても焦らず、論理的かつ柔軟に解決策を考えられるか?
- コミュニケーション能力
- ✅明確な指示:メンバーにわかりやすい指示を出しているか?
- ✅ 傾聴力:メンバーの意見や悩みをしっかり受け止めているか?
- ✅フィードバックの提供:建設的なフィードバックを適切なタイミングで伝えているか?
- チームマネジメント
- ✅報連相の徹底:報告・連絡・相談が滞らず、チーム全体で情報が共有できているか?
- ✅モチベーション管理:チームの士気を高める工夫ができているか?
- ✅ 信頼関係の構築:心理的な安全性を確保し、メンバーが自由に意見を言える環境を作っているか?
- 成長と自己管理
- ✅学び続ける姿勢:新しい知識やスキルを積極的に学んでいるか?
- ✅自己管理能力:ストレスストレス管理や時間管理を正しく理解しているか?
- ✅ ロールモデルの意識:自ら模範となる行動を取っているか?
- 経営視点(リーダー以上を目指す場合)
- ✅収益の認識:組織やチームのコストと利益のバランスを意識しているか?
- ✅ 業務効率化の提案:無駄を省き、より効果的な業務プロセスを提案できるか?
- ✅ 革新の推進:新しい発想やアイデアを実現することに前向きか?
このリストは、今の能力をチェックするためのものではありません。
チェックがつかなくてもがっかりしなくて大丈夫です。
例えば、「『ビジョンを共有する』ためには、組織やチームの目標を理解しなくてはならないんだな」ということがわかります。これから、組織やチームの目標についてもっと知っていこうとすることがとても重要なことです。
まとめ

基本的なデイサービスの本質を理解して、利用者個々に必要なサービスやケアが提供できるようになると、自然に利用者から選ばれる施設・利用者から信頼される職員になっていきます。
デイサービスの意義や目的を理解したうえで、現場で実践してみましょう。
そして、今後自分がやりたい介護や活動に繋げていけるようになると良いですね。
投稿者プロフィール

- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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