利用者さんの自宅に訪問し、介護サービスを提供するホームヘルパー。
この記事では、ホームヘルパーの給料を様々な角度から分析し、ホームヘルパーが給与アップを目指す方法などを詳しく解説しています。
また、体験談として、現役男性ヘルパーから聞いた給料や生活事情などについても紹介しています。
収入や働き方について、不安を抱えているヘルパーさんたちに少しでも役に立てたら嬉しいです。
ヘルパーの給料はどれくらい?
訪問介護の勤務形態は、正社員・非常勤(パート)・登録の3種類があります。
正職員は月給、非常勤・登録は時給で給料が支給されます。
非常勤のヘルパーは事業所のシフトに合わせて決まった時間に働き、登録ヘルパーは希望する曜日や時間帯を指定して都合のよいときに働く働き方です。
ヘルパーの給料は事業所ごとに異なるため、あくまで相場として参考にしてください。
年収・月収・手取り額について
令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省によると、ヘルパーの平均年収は約353万円、非常勤の時給は約1,600円でした。
ただし、資格の有無や働く時間帯、地域、業務内容などによって違いがあります。
また、最近では介護職員の賃金アップなども積極的に実施されており、介護職員の平均年収は今後上がっていくと予想されます。
訪問介護の時給は高い?
訪問介護は、資格や業務内容等で他の職種より時給が高い傾向にあります。
人手不足、有資格者や経験者が高齢化している事もあり、供給が需要に追いついていない現状があるからです。また、訪問介護は利用者の自宅で1対1での介護の提供となるため、専門性も高く介護報酬も他介護サービスより高い設定となっていることも理由です。
地域差はある?
全国で最も年収が高い県は群馬県で、約458万円と日本の平均年収以上の結果です。
ヘルパーの年収相場は約353万円ですが、地域によって年収はまちまちです。お住まいの地域の年収を下記HPから探すことが出来ます。
訪問介護員/ホームヘルパー – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
男女差はある?
ヘルパーは資格や業務内容によって時給や給与が異なります。これはほかの業種でも同じことで、業務上有利な資格を持っていれば、持っていない人と比べると賃金は高くなりますよね。
介護の世界では、経験が長くて有資格者であれば女性でも短期間で管理者や幹部に上がることができます。ただ、現実ではやはり男性の方が正職員の率が高いこともあり、どの年代も男性のほうが若干高くなっているようです。
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課P197
正職員と非常勤の給料はなぜ違う?
正職員であっても非常勤であっても、ヘルパーの仕事は利用者宅での介護業務ですが、一般的に正職員は労働時間内に利用者宅を複数回訪問することが多いです。
つまり、非常勤職員は、週〇時間という契約で働くことになりますので、その時のシフトによって時間数に変化が生じる可能性があります。登録ヘルパーだと、1日に1軒、例えば1時間の訪問から勤務する場合もあります。
正職員と非常勤・登録ヘルパーとの違いは、「働く時間」です。
また、正職員の場合は会議や事務作業、新人指導など人材マネジメントや管理業務も発生しますが、非常勤職員の場合は利用者の介助業務が主です。
ですから、両者の大きな違いは「働く時間」と「業務内容」と言えます。
生活援助と身体介護で時給が異なる
ヘルパーの非常勤は、「生活援助」に従事するのか、「身体介護」に従事するのかによって時給が異なる事業所が多いようです。
生活援助とは掃除、洗濯、調理、買い物代行などを援助することで、身体介護とは、ご利用者の身体に直接触れるような介護で、排泄、食事、入浴介助などが該当します。
首都圏では、生活援助は1,200円〜1,400円程、身体介護は1,300円〜2,000円程でした。
つまり100円~600円の違いがあるということです。地方でもこの程度の時給の差は、生じることが多いです。
実労働時間しか給料が出ない場合もある
実際に介護業務を行っている時間を基準に給料を算定する雇用が、登録ヘルパーです。
登録ヘルパーは、訪問介護事業所に立ち寄ることなく、自宅からご利用者宅へ直行、直帰することが多く、介護サービスを提供している時間が労働時間となります。
つまり、移動時間は労働時間に含まれません。
ただし、非常勤や登録ヘルパーは、自分に合った勤務時間が選びやすいのが特長です。
働きたい曜日や時間を自由に選べるので、フルタイムで働くことが難しい人には働きやすく、掛け持ちやWワークもできるのでやり方次第で収入を上げることもできます。
※非常勤の人は、Wワークが可能か会社に確認が必要です。
正職員と派遣職員のどちらが給料が高い?
介護職における派遣社員の給料は、厚生労働省の「令和2年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によると日額14,973円です。時給換算すると約1,870円なので、月22日間8時間勤務すると月額329,120円になります。
ただし、派遣先によっては毎日必ず勤務できるとは限らないので、正職員や常勤と比較すると安定して稼ぐのが難しい場合もあります。ゆくゆくは正職員になりたいと考えている人は、紹介型派遣を利用するのも一つの手です。
ヘルパーが給料アップを目指す4つの方法
では、ヘルパーが給料を上げるにはどうしたら良いでしょうか。おすすめの4つの方法をお伝えします。
1.正職員になる
収入を上げる意味では、正職員として働くことも選択肢の一つです。
労働時間が違うため比較するのは難しいですが、正職員の方が資格手当やボーナスなどが支給され、収入を上げられる可能性があります。
2.資格を取得して手当や時給のアップを目指す
正職員として働いている場合は、新たに資格を取得すれば手当を付与してもらえます。非常勤・登録ヘルパーは時給が上がります。
資格を取得することでスキルが評価され、より高い収入が得られます。
3.キャリアを積んで転職する
より高い給料で働くためには、給料の高い職場に転職することも有効な方法です。
しかし、転職先を選ぶ上で職場の雰囲気や教育体制なども気になりますよね。
例えば、給料が高いところに転職できたとしても、訪問スケジュールが過密であったり、教育環境が全く整っていなかったりすると、結果、長く続けられないということにもなりかねません。
転職を決める際には同業種の知人や先輩などに話を聞くなどして、じっくりと焦らずに自分に合った職場を選ぶことが重要です。
4.サービス提供責任者や管理者、経営者を目指す
サービス提供責任者や管理者へキャリアアップすれば、基本給のアップが期待できます。基本の給料が上がると賞与や退職金等も違ってきますので、総体的に収入がアップするということです。
さらに、自分で訪問介護事業所の経営者を目指すことも可能になります。
キャリアアップすることで人材育成や運営管理など業務の幅も広がることから、給料アップ以外にも仕事を通して自己成長できるメリットもあります。
【体験談】現役ヘルパーさんが語った給料事情
先日、41歳の男性ヘルパーさんと話をする機会がありました。
彼は、訪問介護と定期巡回訪問介護のサービスを提供している事業所のヘルパーです。その事業所は定期巡回のサービスが入っていることもあり、男性ヘルパー率が高いそうです。夜間に巡回したりオペレーションに入ることもあるので、訪問には珍しく夜勤手当が出ると言っていました。
彼には、専業主婦の妻と乳幼児2人の家庭があります。
「生活はやりくり出来てる?」と尋ねたら
「僕、営業からの転職組なんです。前の職場では始発から終電まで長時間仕事をしていたし、休みもろくになかったので、身体を壊す前に介護の仕事で少し息抜きして、休もうと思って。すぐに働けるところって介護しかなかったから。」
「お給料は減りましたか?」
「給料は半分になりましたよ。でも、自分の時間が倍以上になったんです。こんな世の中があるんだって、本当にびっくりしました。その時間で妻とも話ができる、子どもとも一緒に遊べる、自分の趣味や勉強もできる。下の子どもが3歳になったら私も働きたいって妻も言ってるし、僕はしっかり勉強して資格を取って、この働き方でもっと給料を貰えるように頑張ろうかなって。」
「前の仕事に戻ろうとは思わない?」
「給料の補填を賞与でするみたいな、結構カツカツで生活してるんですが、人並みに家族で旅行に行ったり、遊びに出かけたりできるんです。以前の仕事ではこんな生活は夢でもできなかった。」
「他のヘルパーさん達ともそんな話をする?」
「しますよ、特に男性と。将来のこともあるし。幹部や管理者は数が少ないから、どうやって上に登っていこうかって策を練っています(笑)。」
「介護職の賃金アップの話が出てますね。」
「月額6,000円でしょう?そうやって少しずつでもアップしていってくれればいいな、と。僕らの仕事はやっぱり社会に必要ですから。」
彼とは、次世代の介護職員を養成する研修の講師として出会いました。無資格の介護士として働き出し、資格を取って6年目。ヘルパーのリーダーとなった彼は「ヘルパーの仕事って、大変だけど好きです。」と言いました。
頑張れ!と拍手して背中を押したくなる会話でした。
まとめ
高齢化が進む日本では、介護を必要とする高齢者の増加に対して、介護職員の不足が社会問題になっています。そのため、国が施策として処遇改善に取り組んでいて、その結果、介護職員の平均給料は年々上がってきました。
中でも、訪問介護は他の業種に比べ平均時給が高く、働き方によっては効率よく稼ぐこともできる職種です。
非常勤・登録ヘルパーであれば、希望の時間に働けるのも魅力です。例えば、経験者が隙間時間を使って働いたり、副業や将来のため資格を取って働き始める人も多くなってきました。
訪問介護は、利用者とじっくり関われる、やりがいのある仕事です。
収入だけでなく、仕事のやりがいにも目を向け、職業選びの参考にしてください。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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