介護現場で外国人技能実習生を受け入れる|受け入れ要件と準備

訪問介護

介護現場では近年、外国人の力がなくてはならない状態になっています。
この記事では、外国人技能実習生の受け入れについて、受け入れ要件と準備に焦点を充て説明しています。
様々な実例も含めて書いていきますので、ぜひお役に立ててください。

介護の外国人技能実習制度とは?

技能実習制度は1993年に創設され、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的とし、日本の技術・技能・知識の習得を支援する制度です。具体的には、3年〜5年の期間において、外国人技能実習生が、日本の事業者との雇用関係の下、職業上の技術等の習得を目指します。2020年6月末時点では、約40万人の技能実習生が日本国内に在留しています。

技能実習生の受け入れ方は、大きく分けて「企業単独型」と「団体監理型」があります。

企業単独型:日本の企業が単独で、現地の人材を受け入れて実習を実施
団体監理型:監理団体が受け入れ、その団体の会員企業などで実習を実施

多くの場合は、団体監理型で実習生を受け入れており(2021年末では全体98.6%)、送出機関、実習を行う受入企業、監理団体、外国人技能実習機構、そして地方出入国在留管理局などが連携して、技能実習を実現しています。

仕組みについては以下の図を参照してください。

厚生労働省HPより引用

介護職種の技能実習生は、技能実習制度本体の要件に加えて、介護職特有の要件を満たす必要があります。
基本の考え方は、以下の3つです。

  1. 介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすること。
  2. 外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
  3. 介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。

これら3つの考え方に対応するため、介護職種に次の要件が整備されました。

【技能実習生に関する要件】

日本語能力

介護職種で技能実習を行うには、技能修得の指導を受ける技能実習指導員や、介護施設利用者等とのコミュニケーションを図るために、技能実習生の日本語能力が一定水準以上であることが必要です。そのため、高い日本語能力が要求されます。

同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)

厚生労働省は、『技能実習「介護」における固有要件について』で、「「団体監理型技能実習の場合は、技能実習生は、日本において従事しようとする業務に従事した経験を有すること、又は、その特別な事情があることが必要」としています。

同等業務従事経験については、職歴とともに、外国政府による看護師資格や介護士認定等が該当します。団体監理型の場合は、監理団体がそれに見合う送り出し機関を選定します。

【実習実施者に関する要件】

①技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること。
②技能実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任していること。
③技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く。)を行うものであること。
④技能実習を行わせる事業所が、開設後3年以上経過していること。
⑤技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること。(※)具体的には、技能実習制度の趣旨に照らし、技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨を規定。また、夜勤業務等を行うのは2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定。
⑥技能実習を行う事業所単位で、介護等を主たる業務として行う常勤職員(常勤介護職員)の総数に応じて設定(常勤介護職員の総数が上限)した数を超えないこと。
⑦入国後講習については、基本的な仕組みは技能実習法本体によるが、日本語学習(240時間(N3程度取得者は80時間)。)と介護導入講習(42時間)の受講を求めることとする。また、講師に一定の要件を設ける。

厚生労働省HPより引用:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000995317.pdf

外国人技能実習生の受け入れと入国までの流れ

受け入れの流れ

次に、受け入れの流れについてみていきましょう。
ここでは、主流となっている団体監理型の受け入れについて説明します。(番号は下記の図に対応。)

  1. 監理団体に技能実習生の人数等を申込む(図の④)
  2. 送出機関による応募・選考を経て技能実習生と雇用契約(図の⑤⑥)
  3. 外国人技能実習機構に実習計画認定を申請(図の⑦⑧)
  4. 実習計画認定後、出入国在留管理庁に在留資格の申請(図の⑨⑩)
    *企業単独型は、送出機関と監理団体がすることを自社で行うことになります。

厚生労働省HPより

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入国までの流れ 

実習実施者と送り出し機関で、実習生の面接・内定を行います。実習生は、送り出し機関で、介護技能実習に必要な座学や実技講習を受講します。その後、入国申請手続きを済ませて、実習生は来日します。
来日後は、監理団体による約1か月間の所定の研修や講習を受けて、実習事業所へ配属となります。
団体監理型の場合、監理団体が全体の支援を行いますので、実習実施者はそのフォローを受けながら実習生を受け入れて行くことが可能です。

受け入れ前の準備 4つの注意点

体制の整備

受け入れが決まったら、事業所内の受け入れ体制の整備を行います。

  • 技能実習指導員、生活指導員、技能実習責任者を選任する
  • 技能実習生に夜勤業務、その他少人数の状況下での業務、又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合は、複数の指導担当者を付けるなどの体制を整える

【そのほかに、事業所で実施しておくべき準備】

  • 外国人技能実習生の受け入れについての「施設の方針」の職員への周知
  • 制度の仕組みについて学ぶ
  • 受け入れ側の職員全体のレベルの確認
  • 実習生の特徴の理解の勉強会

特に、技能実習制度の目的は「技能習得」ですので、実習生たちの目的と目標を考慮して、実習事業所の協力体制を作ることが大事です。
さらに、

  • 技能実習指導員が、職員全体で計画的に同じ指導が行えるように、育成プログラムを作成する
  • 生活指導員が、日本の生活文化をサポートして、地域の一員として生活ができる手助けを行っていく

等の体制があれば、実習生も安心できるでしょう。

言語に関する整備

実習生は、N3レベル(日常的な日本語が理解できる)程度の日本語レベルを習得していますが、専門用語などの理解は難しいことがあります。監理団体と相談して、必要な母国語のメモや、マニュアルの整備などの準備をしましょう。通訳が可能なアプリや機器を用意するのもひとつです。

医療や介護の専門用語や感染対策などは、カタカナ語が非常に多いので、目で見て理解ができるような研修を組むのも良い方法です。

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生活環境等の整備

実習生の生活環境を整えることは大変重要です。

宿舎の提供(夜勤をする可能性がある実習生には、個別の寝室の整備が必要です。)

  • 寝具(ベッドや布団)の準備
  • 台所用品(炊飯器、鍋、食器、その他)
  • 会社と連絡を取るため携帯電話
  • Wi-Fi環境は必須。(実習生のスマートフォンは、家族や友人、学校等の唯一の連絡手段です。)
  • 冷暖房機器、家電(洗濯機・冷蔵庫・掃除機・扇風機など)

宗教の問題もあります。来日前に実習生の宗教と、それにまつわる儀式や考え方を理解しておきましょう。

職員寮などではなく、一般賃貸物件に住む場合、地域の自治会や民生委員、隣近所の方々に、実習責任者と技能実習生が「顔見せ」をした方が無難です。居住後に、思いもよらぬトラブルが生じることがあります。


※ちなみに、私が受け入れた実習生はミャンマーから来ていましたが、掃除の習慣がない、冷蔵庫で何を冷蔵・冷凍して良いのか分からない、ゴミのまとめ方がわからない、家電の使い方がわからないなど、「えっ、こんなことがおきるのか!」と、びっくりすることが結構多かったです。                                   家族や兄弟の写真、大ファンだというミャンマーの俳優さんの動画も見せてもらいましたし、友達や家族ともSNSで頻繁に連絡を取り合っていました。驚くほど上手にスマートフォンを操作していました。

技能実習生の保護に関すること

外国人技能実習生の人権の保護に関しては、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の第3節に禁止行為として取り扱いがあります。暴行・脅迫・監禁等による技能実習の強制や契約不履行への違約金や損害賠償金の徴収、預貯金等金銭の管理、旅券・在留カードの保管管理、私生活の不当な制限等の禁止などです。

まとめ

今回は、制度の目的や概要、受け入れ、そして事業所に迎え入れる時に気を付けたい注意点などについて話してきました。
日本の在留外国人において、永住者に続いて多いのが「技能実習生」です。その数は増加傾向にあり、外国人と一緒に働く企業が増えてきています。
次の№2では、一緒に働く介護の職員さんへ、事例を通してお伝えしていきます。 

投稿者プロフィール

Mrs.マープル
Mrs.マープル
介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。

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