介護業界の外国人人材は今、どうなっているのでしょうか。
人手不足は深刻な問題です。特に、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、少子高齢化の問題が一気に表面化してくる「2025年問題」は今後日本が抱える最大の課題点です。
この記事を読んでいる人の中にも、実際に外国人人材の採用を検討している人もいるのではないでしょうか。
今回は、在留資格「介護」で介護福祉士を目指して特養で働く2人のネパール人女性と、特定技能1号の資格でDSで働くミャンマーの女性に話を聞いてみました。
言語も文化も異なる日本で介護の仕事をすることや、現在の世界情勢の中で彼女たちが考えるこれからのことなど、リアルな声を聞いてください。
外国人介護人材の受け入れの現状
介護業界での外国人受け入れについては、2017年11月に外国人技能実習法が施行されたことを契機にスタートしました。介護業界での外国人受け入れの制度的枠組みは現在「技能実習」を含め、「特定技能1号」「在留資格『介護』」「経済連携協定(EPA)」の4種類があります。
現時点でこれら仕組みを利用して介護に関わっている外国人は、EPA介護福祉士・候補者が3,213人(2023年6月1日付、国際厚生事業団)、在留資格「介護」が6,284人(2022年12月末、入管庁)、技能実習が1万5,011人(2022年6月末、入管庁)、特定技能1号が1万9,516人(2023年3月末、入管庁)となっています。
技能実習、特定技能1号で介護業界に従事している外国人の出身国は、EPA締結国のベトナム、インドネシア、フィリピンに加え、ミャンマー、ネパール、中国、モンゴルが多いのが特徴で、これらの国の出身者が9割以上を占めます。
しかし、実際に外国人の人材を採用しようとすると、受け入れ準備が必要となり、大変な面もあります。
まずは実際に働く彼女たちの声や介護に対する姿勢を知り、理解を深めていただければと思います。
特養とDSで働く外国人介護職員たちの本音
特養で働く2人(在留資格「介護」)
特養で働く外国人職員のガルティ(G)さん24歳とシュレスタ(S)さん21歳は、ネパールから来日しました。日本語学校で日本語を学び、短期大学で介護の勉強をして在留資格「介護」で就職しました。
なぜ日本に来ようと思ったのですか?
Sさん:女性が一人で海外で勉強するのは、やっぱり安全なところが一番だと。外見も多分あまり違和感がないだろうって、家族が言いました。日本人は優しいとみんな言います。
介護を勉強しようと思ったのはどうして?
Sさん:私も同じ。介護の勉強をしたいと思いました。実はネパールって50歳以下の人が約90%なので、あまりお年寄りを知らなくて、「介護」ってちょっとよく分からなかったんですが、お年寄りのお世話をするって聞いたからやってみたいと思いました。
介護福祉士の試験はどうでしたか?
日本に来て困ったことは?
Sさん:日本語での会話は大体できます。でも、早口や方言は分かりにくい。時々、ご利用者が喋る昔の言葉が分からないことがあります。でも、他の職員さんも分からないって言ってるのであまり気にしていません(笑)。
ご利用者や職員との関係はどうですか?
仕事で気を付けていること、困っていることは?
Sさん:私のユニットは介護度が高くて食事や排泄の介助、オムツ交換などの身体介助が多いです。他の職員と同じように、一人でやるべきことは一人で出来るようになりました。困った時や分からない時は他の職員にすぐに尋ねます、不安だから。記録は難しいと思うときがあります。でも、職員さんが普段から結構色々話しかけてくれるので、とても働きやすいです。日本語の上達にもなります。
日本での生活はどうですか?
Sさん:私も同じです。もっとお金を稼いで少しでも多く家族にお金を送りたいと思います。だから、自分の買い物は必要なものだけと決めています。
自分たちの将来、今後についてどう考えていますか?
Sさん:ネパールでは、まだ自分の家族の世話を誰かに頼むという感覚はないので、国に戻って介護の事業をするということは考えられません。でも、ほかの国の事情を見ると将来そのようになるかも知れません。今は日本で、もっとお給料が上がるように頑張ろうと思っています。
DSで働くミャンマー人のモンさん(特定技能1号)
DSで働くモンさん(25歳)は、2020年にミャンマーから技能実習生「介護」で来日し、2023年に特定技能1号になりました。
日本に来ることの不安はあった?
日本に来てからは、言葉や文化の違う外国で仕事をすること、実際に介護をするということの難しさを実感しましたが、それと同じくらい楽しかったです。
ご利用者や職員との関係はどうですか?
介護の仕事を実際にしてみてどうですか?
今後についてどう考えていますか?
介護の仕事は大好きです。日本で介護を勉強して本当に良かったと思っています。これからもずっと頑張って勉強を続けます!
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まとめ
今回の3人の声を読んで、どう感じられたでしょうか。
彼女たちの「日本で働くこと」の根底には、収入があります。母国よりも収入の良い日本での仕事で、できるだけ多く稼ぎ、家族へ仕送りすることを目標にしています。
しかし、それゆえに人一倍の努力もし、日本や介護の仕事を大切にしている姿勢もうかがうことができます。今の日本の介護業界は、彼女たちの力なくてはならない状況にあります。彼女たちの背景も知り、日本で働くための受け口、受け入れ体制をしっかりと私たちが作っていく必要があるのです。
少子高齢化は日本だけの問題ではありません。欧米などの先進諸国も抱えている問題であり、既に介護人材は争奪戦になっています。
厚生労働省が新たに設置した「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会で(1)訪問系サービスなどへ従事拡大(2)事業所開設後3年要件の緩和(3)人員配置基準算定の緩和、の3点が検討され、緩和の方向に舵が切られる方向です。
「人材補填のため安い外国の労働力を入れる」といった考え方ではなく、人と人との信頼関係を理解したうえで外国の介護人材を受け入れていけば、日本の将来は変わるかもしれません。
今回話を聞いた彼女たちは、「介護が好き」「日本が好き」「みんなが好き」と言ってくれました。受け入れる私たちは、そんな思いに応えていきたいものです。
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投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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