介護現場のチームケアとは?チームワークを高める3つのポイントと事例を紹介

訪問介護

介護現場で働いていると、チームワークの重要性を感じる方は多いのではないでしょうか?介護現場は介護職だけでなく、さまざまな職種の方々が日々協力して、利用者さんにより良いサービスを提供するため日々奮闘しています。

本記事では、介護現場でのチームワークを高めるためのポイントや、チームワークを活かしたチームケア事例を紹介しています。

ぜひ職場のチームケアの質向上に役立ててくださいね。

介護現場に必要なチームケアとは?

介護現場では介護職以外に、看護師や栄養士、ケアマネージャーなど異なる職種が協力しながら介護サービスを提供しています。いわゆる「チームケア」と呼ばれており、介護現場では非常に重要な考え方です。

ここではチームケアについて、以下のことを解説します。

  • チームケアの目的
  • チームケアのメリット
  • チームケアのデメリット

チームケアの目的や効果を知ることで、現場で実践しやすくなるのでぜひご覧ください。

チームケアの目的

介護現場でのチームケアの目的は、以下のことが挙げられます。

  • 介護サービスの質の向上
  • 利用者様の自立支援や満足度向上
  • 利用者様と地域をつなぐ

まずチームケアをすることで介護サービスの質が上がります。そして質が上がれば、利用者様の満足度向上や自立支援にもつながってくるでしょう。

介護サービスの質が上がるということは、どの職員が関わっても統一した介助ができることであり、人によって介助方法が異なるというムラがなくなります。

またチームケアは介護に携わる職員だけでなく、地域住民や社会資源も巻き込むことで、利用者様が住み慣れた地域で生活を続けていくきっかけになるでしょう。

チームケアのメリット

チームケアのメリットは、以下の3つです。

  • 利用者様の状態変化にすばやく対応できる
  • 多角的に利用者様を観察できる
  • 少ない人員でも効率的に介護サービスが提供できる

特に3つ目のメリットは、慢性的な人手不足が続く介護業界において、非常に重要なポイントです。チームケアでは1+1=2ではなく、1+1+1=5のようにチームで協力することで、一人ひとりの力を最大限に活かせます。

介護はひとりではできません。各専門職や利用者様の家族など、かかわるすべての人が協力することで質の高い介護サービスの提供が可能です。

チームケアのデメリット

逆にチームケアのデメリットは、以下の2つです。

  • さまざまな職種が関わるため意見が対立しやすい
  • コミュニケーションコストがかかる

冒頭でもお伝えしたように、介護現場には多くの職種の方々がかかわっており、職種ごとに意見や価値観も異なります。そのため、対立しやすくまとめるのが大変です。

またかかわる人数が増えれば、その分コミュニケーションの量も多くなり、情報を処理するのが大きな負担にもなり得ます。

以上のようなデメリットがあることを理解した上で、メリットを最大限に活かせば、デメリットを軽減できるでしょう。

介護現場におけるチームワークを良くするポイント3選

介護現場におけるチームワークを良くするポイントは、以下の3つです。

  • 介護職の仕事をあらためて理解する
  • 介護職以外の専門職の仕事を知ろうとする
  • チーム内での情報共有を徹底する

それでは、ひとつずつ詳しい内容を解説します。

介護職の仕事をあらためて理解する

チームケアでは、それぞれの専門職が与えられた役割を全うすることが重要です。したがって、介護職は自分自身の役割を理解しなければいけません。

たとえば排泄介助や入浴介助などの場面は介護職にしかわからないため、介護職にはその時の利用者様の様子を記録に残し共有することが求められます。

介護職はあらためて自分自身の仕事内容や求められている役割を理解し、チームワークを良くするためにもまずは自分自身の仕事をがんばりましょう。

介護職以外の専門職の仕事を知ろうとする

介護職以外の専門職の仕事内容を知ろうとすることも、チームワークを良くするために大切なポイントです。

なぜならデメリットの部分でも解説したように、職種が違うと意見や価値観が対立しやすいからです。

実際に行なうのは介護サービスのみですが、看護師やリハビリ職員など違う職種の方々が、どのような仕事をしているのか知るのは非常に大切です。介護職としての視野が広がるきっかけにもなるでしょう。

介護職は、普段から他の専門職が利用者様にどのような関わりをしているかを観察しましょう。介護職の仕事内容だけでは知れなかったことも含まれているかもしれません。

チーム内での情報共有を徹底する

チームワークの向上のためには情報共有が必要不可欠です。普段から些細なことでも情報交換することで、いざ利用者様の体調が変化したときに対応しやすくなります。

「気付いてはいるけど言わなくてもいいかな」というような情報でも、他の専門職と必ず共有しておきましょう。たとえば杖を使って歩いている利用者様の歩行が、普段より不安定に感じたとします。そのときにリハビリ職員に内容を伝えると、もしかしたら杖が合っていないから変更を検討しましょうという意見が出るかもしれません。

このように、些細なことでも情報共有することは、利用者様の状態を改善するために重要なポイントです。

介護現場でのチームケア事例3選

では実際に、介護現場でチームケアを活かした事例を見ていきましょう。

チームケアは認知症対応や看取りケア、在宅介護などのさまざまな介護現場で必要です。

ぜひ事例を参考に、自分の職場でも活かしてみてください。

認知症対応の声かけを統一

Aさんはいつも夕方になると「帰りたい」と言い、落ち着きがなくなる女性の利用者様です。「息子が家でお腹を空かせているから、ご飯の支度をしなきゃいけない」「子どもを迎えにいかなきゃ」など、子どもに対する心配を口に出していました。その都度、現場の介護職員は「息子さんはもう大きくなられたので自分でできますよ」と伝えますが、「息子はまだ小学生ですよ!」と苛立ちや興奮する姿が見られました。

そこで他職種間のカンファレンスを実施し、Aさんへのかかわり方について話し合いました。まず認知症の方に対して否定するのは逆効果なので、小さな子どもがいるというAさんにとっての事実を受け止めることにしました。あとは不安な気持ちに共感し「心配ですね」と声をかけることで、Aさんに安心してもらうことを心がけました。

声かけを統一しても帰宅願望は続きましたが、苛立ちや興奮する姿などが見られず、落ち着いた口調で話すようになりました。

看取り対応にはチームケアが不可欠

Bさんは特別養護老人ホームで看取り対応中の女性利用者様です。看取りケアでは、できるだけ苦痛を取り除き、穏やかに暮らすことが重要です。

そのため無理な食事や水分摂取は促さず、声をかけて「食べたい」「飲みたい」と言われた時のみ提供することにしました。また1日2回の朝と夕方で、全身に保湿クリームを塗って肌の保湿や清潔を保つことにしました。

その他にも、朝昼夕でバイタル測定をして看護師に報告することや、相談員に毎日の様子を伝えることで、Bさんの家族にもスムーズに情報を伝えることができました。

看取りケアでは家族を含めたチーム構成で情報共有を徹底し、徐々に衰えていく利用者様の姿を前向きな気持ちで介助することが大切でしょう。

チームケアは在宅介護の柱

Cさんは施設で生活している男性利用者様で、「自分はもうそこまで長く生きれないから、自宅に帰ってゆっくりしたい」という希望を言われました。しかし、Cさんは呼吸器の疾患がで酸素療法をしていたり、トイレで立つときも不安定だったりするため、在宅での介助が難しい可能性がありました。

そこで施設のケアマネージャーを中心に、まずはCさんが外泊できるように話を進めていきました。まず呼吸器の疾患については、主治医に相談して対応を仰ぎました。酸素供給機が自宅になるのであれば、特に心配なく過ごせるとのことでした。ただし、酸素チューブがしっかり装着されているかこまめにチェックする必要があるとのことでした。

またトイレでの立位については、外部のリハビリサービスを利用して週に1〜2回ほど、立って座る動きをするリハビリを取り入れました。Cさんは徐々に立位が安定してきたことと、体調不良なく健康に過ごせたため、1ヶ月ほどで自宅での外泊が可能になりました。

そのほか状況に応じて、さまざまな専門職の方々がかかわることもあります。その場合は、まずカンファレンスを開催し、利用者様の達成したい目標を共有しましょう。そこから、具体的に何をすればいいか見えてくるでしょう。

まとめ

今回は、介護現場のチームワークを高める方法として、3つのポイントとチームケア事例を紹介しました。

介護職だけでは良い介護サービスは提供できません。常にチームワークを意識し、他の専門職の方々とこまめに情報共有を行なうことで、より良い介護サービスを提供できます。

本記事を参考に、あらためて介護現場のチームワークの重要性を理解し、自分が働く介護現場で活かしてみましょう。

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投稿者プロフィール

津島武志
津島武志
介護業界17年目の現役介護職。介護リーダーや管理職の経験もあり、現在は地方法人のグループホームに勤務。介護職の傍ら、介護士の転職メディア「介護士の転職コンパス」の運営や、複数のメディア(介護に限らず)でWebライターとしても活動中。主な保有資格は、介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士など。

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