特定施設入居者生活介護とは?人員基準や介護報酬などについて解説

居宅介護

ケアマネージャーは、居宅と施設の両方にいます。

居宅ケアマネは施設サービスのことについて、施設ケアマネは居宅サービスのことについて知らないことが多いのではないでしょうか。

私自身、「月途中で介護付き有料老人ホームへ入居する利用者の給付管理はどうなるのか」悩んだことがあります。

今回は、施設サービスの中でも「特定施設入居者生活介護」についてまとめましたので、参考になれば幸いです。

特定施設入所者生活介護とは?

特定施設入居者生活介護とは、介護保険法第8条第11項に基づき、特定施設に入居している要介護者を対象として行われる、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のことであり、介護保険の対象となります。

特定施設の入居者は、全ての介護保険サービスが施設内で完結するのです。

後で詳しく説明する「一般型」と「外部サービス利用型」で介護保険サービスの提供方法は多少異なりますが、どちらにしても、入居者が外部の事業所と契約する必要はありません。

介護保険サービス利用のためのケアプランは施設のケアマネージャーが作成しますし、入居者にとっては全てお任せする形になります。

特定施設の対象となる施設は?

特定施設入居者生活介護の適応となる施設は以下のとおりです。

有料老人ホーム
軽費老人ホーム(ケアハウス)
養護老人ホームサービス付き高齢者向け住宅(「有料老人ホーム」に該当するもの)

有料老人ホームは、「介護付き有料老人ホーム」「在宅型有料老人ホーム」に分かれます。

介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けているもの住宅型有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないものを指します。

「介護付き」は施設が直接介護保険サービスを提供するのに対し、「住宅型」は介護保険サービスを利用する場合、入居者が外部の事業所と契約する必要があります。

特定施設の人員基準は?

事業者が特定施設入居者生活介護の指定を受けるためには、以下の基準をクリアする必要があります。

  • 管 理 者― 1人[兼務可]
  • 生 活 相 談 員― 要介護者等:生活相談員=100:1
  • 看護・介護職員― ①要支援者:看護・介護職員=10:1 ②要介護者:看護・介護職員=3:1

※ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は、50人ごとに1人

※夜間帯の職員は1人以上

  • 機能訓練指導員― 1人以上[兼務可]
  • 計画作成担当者― 介護支援専門員1人以上[兼務可]

※ただし、要介護者等:計画作成担当者100:1を標準

特定施設入所者生活介護における「一般型」と「外部サービス利用型」の違い

特定施設入居者生活介護には、特定施設の事業者が自ら介護を行う「一般型」と、特定施設の事業者はケアプラン作成などのマネジメント業務を行い、介護を委託する「外部サービス利用型」があります。

 一般型外部サービス利用型
介護報酬包括報酬
※要介護度別に1日当たりの報酬算定
定額報酬 (生活相談・安否確認・計画作成)
+出来高報酬 (各種居宅サービス)
サービスの提供方法3対1で特定施設に配置された介護・看護職員によるサービス提供特定施設が委託する介護サービス事業者によるサービス提供

「外部サービス利用型」は、入居施設である事業者が介護サービス提供事業者へ委託料を支払うことでサービスが成立するため、入居者から介護サービス提供事業者へ直接費用を支払うことはありません。

特定施設入所者生活介護における介護報酬

【一般型】利用者の要介護に応じた基本サービス費(一日につき)
要介護1538単位
要介護2604単位
要介護3674単位
要介護4738単位
要介護5807単位
【外部サービス利用型】(一日につき) 83単位
委託先である指定居宅介護サービス事業者により居宅サービスが行われる場合、訪問介護にかかる単位などが加わります。

上記の基本サービス費にプラスして、利用者の状態に応じたサービス提供や特定施設の体制に対する加算や減算が付きます。

加算:入居継続支援加算、生活機能向上連携加算、個別機能訓練加算、ADL維持等加算、夜間看護体制加算、若年性認知症入居者受入加算、医療機関連携加算、口腔衛生管理体制加算、口腔・栄養スクリーニング加算、科学的介護推進体制加算、退院・退所時連携加算、看取り介護加算、認知症専門ケア加算、サービス提供体制強化加算、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算

減算:人員基準欠如減算、身体拘束廃止未実施減算

2024年度版介護サービスコード表

2024年4月の報酬改定に対応した【全サービス掲載】介護サービスコード表 です。
携帯用サービスコード表として、介護サービス・介護予防サービス・地域密着型サービス全般について基本的なサービスコードを抜粋し、その合成単位・内容の概略について記載しています。

ケアマネジメントにかかる介護報酬の取り扱い

在宅で介護保険サービスを利用する場合、居宅介護支援事業所のケアマネージャーがケアプランを作成し、居宅介護支援費を請求します。

特定施設入居者のケアプランは特定施設のケアマネージャーが作成することになりますが、その場合のマネジメントにかかる費用はどうなるのでしょう。

特定施設入居者生活介護の指定施設の場合、介護報酬は包括報酬もしくは定額報酬になるため、ケアマネによるケアマネジメントにかかる費用も含まれています。

よって、ケアマネジメントに係る費用だけを別途請求することはないのです。

月途中で特定施設へ入居した場合

月途中で、在宅から特定施設へ入居した場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。

給付管理について、居宅サービスは居宅介護支援事業所、特定施設入居者生活介護は特定施設が行うことになります。

在宅で介護保険サービスを利用していた間のケアマネジメントにかかる居宅介護支援費についても、居宅介護支援事業所は請求することができます。

特定施設入居者生活介護の現状と課題とは?

特定施設入居者生活介護の利用者は、要介護3以上が約半数を占め、契約終了理由の約半数を死亡退去が占めます。

特定施設が、介護度の重い者の受け皿であり、終の棲家としての機能を果たしているのです。

しかし、特定施設の中で「看取り」を実施していない施設は約4割あり、その理由として「夜間の看護職員が確保できない」が第一位を占めます。

今後、ますます独居高齢者が増加していくことを考えると、施設での看取りは必要不可欠となるでしょう。

介護施設における職員の離職を減らし、新規の人員を確保していくことが早急の課題であり、介護現場における指導・研修体制の確立、ICT活用による業務の効率化などの対策が必要です。

まとめ:特定施設入居者生活介護とは、介護保険における施設サービスのことです!

特定施設入居者生活介護に指定される施設の入居者は、介護保険サービスを施設にお任せで受けることができます。

施設のケアマネージャーがケアプランを作成し、看護や介護、リハビリなどのサービスが丸ごとセットになっているイメージです。

介護保険サービスを利用した分だけ費用がかかってくる居宅サービスと違って、特定施設入居者生活介護は包括報酬のため、施設のケアマネージャーは入居者の不利益にならないようにしっかりマネジメントする必要があります。

私自身、日々ケアマネ業務をしていて、勉強不足を痛感しています。

利用者さんに信頼してもらえるためには、日々知識をアップデートしていかなければなりません。

今回の記事が、介護の現場で働くみなさまの参考になれば幸いです。

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