介護施設などでは、特に冬場などの感染症が流行る時期にご利用者の嘔吐の対応をすることがあります。突然の嘔吐に慌ててしまったことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、施設で感染症を起こさないようにする対策・嘔吐の処理・二次感染対策の方法を解説します。
老人ホームは感染によるリスクが非常に高い場所です。高齢者を守るために日頃からの備えを大切にしましょう。
介護施設でよくある嘔吐の原因
嘔吐は誰にでも起こる症状ですがその原因はさまざまで、特に高齢者が嘔吐した場合は注意が必要な症状の一つです。
高齢者が嘔吐した場合はどのような原因が考えられるのでしょうか。
突然の嘔吐はノロウイルスによる感染性胃腸炎を疑う
ノロウイルスはとくに冬場に流行することが多い感染性胃腸炎の一つです。少量のウイルスでも感染力が強いため集団感染のリスクが非常に高いのが特徴です。
感染者の吐物や便にノロウイルスが含まれているため、ウイルスが手などについて口から感染する場合や吐物の飛沫から感染する場合、食べ物を介して感染する場合などがあります。
症状は吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱などです。健康な方は軽症で回復することもありますが、介護施設に入居する高齢者は重症化リスクもあるため注意が必要です。
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感染症以外の原因も頭に入れておく
嘔吐には、感染性胃腸炎の他にもさまざまな疾患が隠れていることがあります。高齢者の場合は食べ物を詰まらせたり、むせたりして吐いてしまうこともあるでしょう。
嘔吐を症状とする疾患は以下のような疾患です。
- 脳出血・脳梗塞・くも膜下出血
- メニエール病
- 突発性難聴
- 急性胃腸炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 腸閉塞
- 急性胆のう炎
- 胆石
- 便秘
- 薬の副作用
上記以外にもさまざまな原因疾患が隠れているケースがあります。重大な疾患が隠れている場合もあるので注意が必要です。
介護施設で大切な感染性胃腸炎に対する備え
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は感染力が非常に強い感染症です。体力や免疫力などが低い高齢者は重症化リスクが高いため、集団感染のリスクを回避しなければいけません。
普段からの感染症対策を徹底する
介護施設では、高齢者と近い距離で身体介護をするため介護者を介して感染してしまうリスクがあります。そのため、感染症が流行する季節に関わらず常に感染症対策を意識して介護に当たらなければいけません。
普段からできるのは以下のような対策です。
- 1ケア1手洗いの徹底
- ご利用者にも手洗いの声かけ
- 普段の掃除でも消毒をする
- こまめな換気
- ゴミ・排泄物の適切な処理
- 普段の健康観察
- 体調がすぐれないスタッフは休んでもらう
普段から当たり前のことを徹底することが大切です。
施設を出入りする方への注意喚起
外部からウイルスを持ち込まないように、面会に来られた家族や出入り業者の方などにも手洗いやうがいをしてもらうようにお願いしましょう。少しでも体調がすぐれない方は、面会を控えていただくようにします。
お知らせを貼っておいたり、家族へのお便りに一言伝えておいたりすると注意喚起になります。
嘔吐処理に必要な物品をセットしておく
ご利用者が急に嘔吐してしまった時に備え、嘔吐処理に必要な物品を準備しておくのも大切です。蓋付きのバケツなどにセットしておくとよいでしょう。
嘔吐処置に必要な物品には以下のようなものがあります。
- バケツ
- 使い捨て手袋
- ガウン
- シューズカバー
- マスク
- ペーパータオル
- 新聞紙
- ごみ袋
- 次亜塩素酸ナトリウム
嘔吐処理の手順は施設により決められているので、手順に沿って必要物品を揃えておきます。セットした後は、急な嘔吐で慌てないように設置している場所を共有しておくのも大切です。
嘔吐物の対応方法
嘔吐は突然起こり、すぐには原因がわかりません。
消化管の疾患や脳や中枢神経系の病気などが原因の嘔吐もありますが、高齢者施設ではどのような場合でも「感染症」を疑い対応することが集団感染のリスクを回避につながります。
消毒には消毒効果が高い次亜塩素酸ナトリウムを使う
ノロウイルスなどの嘔吐物処理には、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。次亜塩素酸ナトリウムとは塩素系除菌漂白剤の主成分で、家庭用の洗濯・食器保漂白・哺乳瓶の殺菌などに使われている成分です。
次亜塩素酸ナトリウムは原液ではなく希釈して使用します。希釈すると消毒効果が徐々に弱くなってしまうため、必要なときに必要な分だけ希釈して使用しなければいけません。多くの液剤は作り置きはNGなので注意してください。
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汚物処理の手順
一般的な汚物処理の手順は以下の通りです。
- 使い捨てのガウン・手袋・シューズカバー・マスクを装着
- 窓を開けて換気をする
- バケツに次亜塩素酸ナトリウムを希釈し新聞紙やペーパータオルなどを浸す
- 嘔吐物を新聞紙やペーパータオルで覆う
- 嘔吐物を外側から包みながら取り除き、拭き取る
- 拭き取った新聞紙やタオルはビニール袋へ入れる
- 次亜塩素酸ナトリウム希釈液を入れてビニール袋の口を縛る
- 嘔吐のあった場所をしばらく次亜塩素酸ナトリウム希釈液で湿らせたもので覆っておく
- 覆っていたもの・着用していたもの・嘔吐物入りのビニール袋を新しいビニール袋に入れて縛る
- 着用していたものを脱いで一緒に縛る
- しっかりと手を洗い、うがいをする
処理方法のルールは施設によって決められているため、普段からいざという時に備えてシミュレーションしておきましょう。
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介護施設で二次感染を防ぐには
感染者が発生した後は、迅速に二次感染を防ぐための適切な処理が重要です。
吐物がついたものを消毒する
嘔吐物・排泄物が付着したものは、迅速に処理しなければ感染拡大の原因になってしまいます。
衣服などの布類は汚物を落とした後に次亜塩素酸ナトリウム希釈液に浸すか、80℃以上の熱湯消毒が有効です。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは色柄物を漂白させてしまうので注意が必要です。消毒した後はただちに洗濯機で洗濯します。
洗濯機を使用した後も次亜塩素酸ナトリウム希釈液で消毒しておきます。汚れのひどいもの、洗いにくいものは処分してしまうのも一つです。
施設内で手の触れるところを消毒する
感染者が発生した場合は、感染者が触れたと思われる場所を中心に消毒します。ノロウイルスは感染力が強いので、すでに他の方が感染している可能性も高いです。感染者が触っていない場所でも、施設内の人が手で触る場所を中心に念入りに消毒します。
嘔吐した方を隔離する
嘔吐した方は、可能な限り個室で過ごしていただきます。相部屋などで隔離できない場合は、ベッドの間隔を空けたり仕切ったりすることで感染しにくいような状況にすることが必要です。隔離する際はご本人やご家族にしっかり説明しておくことも大切です。
隔離している間の食事は居室に配膳し、食器類なども次亜塩素酸ナトリウム希釈液で消毒した後に厨房に下げるようにします。可能な限り使い捨ての食器を使うのも一つです。
入浴はその日の最後に入っていただくようにします。下痢がひどい場合はシャワー浴で済ますほうが良いでしょう。
ノロウイルスは体調が回復してからも、最大4週間程度は排便内にウイルスが見つかることがあります。トイレ介助やおむつ交換などの対応にも十分注意が必要です。
下痢や嘔吐で、脱水症状にならないようにこまめな水分補給も忘れないようにしましょう。
他のご利用者の経過も観察する
新たな新たな発症者がいないか、他のご利用者の経過観察も大切です。特に嘔吐した時に近くにいた方、食事のテーブルが同じ方、居室が隣の方などは要注意です。
感染が広がりつつある場合は、複数で集まるようなレクリエーションなどをしばらく中止するなどの対策も必要です。
すぐに次の発症者が現れる可能性が高いため、感染症グッズの補充や他のご利用者やご家族、職員への注意喚起などを迅速に行いましょう。
高齢者を守るために日頃からの備えを
今回の記事では、施設で感染症を起こさないようにする対策・嘔吐の処理・二時感染対策の方法を解説しました。
介護施設は介助の必要な方が生活されている場所であるため、スタッフが媒介してしまうことは避けなければいけません。
ノロウイルスは免疫力が低下した高齢者にとっては命取りになってしまいます。日頃の備えを十分に行い、施設全体で対策しておくことが大切です。
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投稿者プロフィール
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特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援事業所での勤務経験。
介護福祉士、介護支援専門員の資格を活かし、高齢者やその家族、介護現場で働く方々のお役に立てる情報をウェブメディアなどで執筆中。
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