ヘルパーの病院付き添いについてはよく議論される内容です。
訪問介護の「病院付き添いサービス」は介護保険の適用に条件があり、複雑で難しい部分があります。
この記事では、まず「介護保険サービスにおける病院付き添いとは」「どのような人が通院介助を受けられるのか」「介護保険改正後の通院介助のサービス内容」などを解説し、併せて利用者や介護者の要望に寄り添ったアドバイスの方法やよくある質問などもお伝えしています。
いろんな場面での病院付き添いについて一緒に考えていきましょう。
ヘルパーの「病院付き添い」の内容は?
「病院付き添い」とは、1人で通院することが困難な人の介助を指し、通院する際のお手伝い、通院する車への乗り降りの介助、病院での受付手続きや薬の受け取り、通院先での移動介助などを行います。
基本的に、病院内の移動などの介助は、「介護保険」ではなく「医療保険」の適用範囲となりますので、病院に着くまでの介助がメインです。
同じように通院の介助を行うサービスとして、通院等乗降介助があります。それぞれの違いをみていきましょう。
通院介助
要介護者の通院時にヘルパーが付き添うことを指します。1人での通院が困難で、家族が付き添うことができない場合に、ヘルパーが付き添って以下のような内容のサービスを提供します。
- 徒歩や公共交通機関(タクシー含む)などを利用して移動
- 身体介護中心型で算定
- 通院の準備(着替えや持ち物の用意など)
- 自宅から病院までの付き添い
- 公共交通機関やタクシーへの乗降介助
- 診察券など受診の手続き
- 病院から自宅までの帰り道の付き添い
通院等乗降介助
- 訪問介護事業所が所有する自動車に利用者を乗せ、ヘルパーが運転して移動
- 通院等乗降介助(片道98単位)で算定
ただし、ヘルパーが自ら運転する自動車に利用者を乗せて通院介助を行う場合であっても、利用者の介護度や乗降介助に前後して行われる介助内容・時間によっては、通院等乗降介助ではなく身体介護で算定するケースもあるため要注意です。
病院の中での介助を行う「院内介助」
院内介助とは、要介護者が病院内で1人で行えない行動をヘルパーがサポートすることを指します。
例えば、病院内での移動や排泄が該当します。
先に述べたように、病院内の移動などの介助は、「介護保険」ではなく「医療保険」の適用範囲となりますが、複数の診療科を受診する際の移動やトイレ介助などで、医療スタッフが対応できない介助に関して、その時間のみが病院内であっても介護保険適用になる場合があります。
院内介助が必要な理由がアセスメントに挙げられており、それに沿ってプランが立てられていることが重要です。
また、診察時間や検査時間、単なる待ち時間については介護保険適用外になります。
付き添うヘルパーは、身体介護をした時間・していない時間をそれぞれ分けて、その時間を「分単位」で記録に残しておく必要があります。
院内介助の取り扱いについては、あらかじめ市区町村に確認しておきましょう。
参照:厚生労働省老健局振興課「訪問介護における院内介助の取り扱いについて」
ヘルパーの「病院付き添い」に介護保険が適用されるためには?
「病院付き添い」が介護保険適用の対象となるには、要介護1〜5に該当し、かつ、ケアマネージャーが通院介助の必要性を判断してケアプランに組み込んでいる必要があります。
ケアマネージャーによって「病院付き添いが必要である」と判断されていること、「自宅から病院までの往復の介助」を目的とすることなどが挙げられます。
要支援1〜2の認定を受けた人は、自治体が実施主体である介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービス(旧介護予防訪問介護)により通院介助相当のサービスがあります。
利用者や介護者からの個別の要望へのアドバイス
通院介助に介護保険が適用されても、自己負担分がどうしてもかかってしまいます。また、交通費などの費用も別途で発生します。費用面で利用を躊躇する人、もしくは、介護サービスとして行うことのできる内容以上に、より手厚い介助を希望する人もいるかもしれません。
以下、そんな場合のアドバイスを紹介します。
通院介助にお金をかけたくない場合
できる限り費用を抑えたいという利用者に対しては、違う方法も検討出来ることを情報として伝えてみましょう。丁寧に説明して、ケアマネージャーに報告してみましょう。
- 家族が通院介助ができないか?
- 自治体やボランティアが提供するサービスを利用できないか?
- かかりつけ医の訪問診療はお願いできないか?
手厚いサービスを使いたい場合
もっと細かなサービスの要望には、介護保険外サービスの利用を伝えてみてはいかがでしょうか。
介護保険外サービスを利用することにより、以下のようなより自由度の高いサービスを受けられます。
- 診察室で一緒に医師の話を聞く
- 複数の診療科を受診する際の付き添い
- 入退院や転院時の手続きや付き添い
- 通院のついでにスーパーへ寄りたい
自費サービスとして訪問介護事業所が行っている場合やこのようなサービスを提供している会社などを、お伝えできるといいですね。
令和3年の通院介助の算定要件の緩和
これまでの通院介助は、必ず自宅が始点・終点にならなければいけなかったことで、利用者にとって、不要な移動が多くなることが負担となっていました。また、移動の回数が多いことで、経済的にも負担が掛かっていました。
令和3年にこの部分の算定要件が緩和され、一度の外出で複数の目的地に向かうことが可能になりました。目的地間に自宅を挟まなくて良くなったため、移動や経済的な負担も軽減されます。
例えば、自宅へDSが迎えに来た後に病院に通院する場合、以前はDSの送りで自宅に戻り、自宅から通院介助が開始されていたのが、改正後は、DS→病院→自宅の通院介助が可能になりました。
また、自宅→病院→別の病院→自宅などの通院介助も可能になったということです。
下記、参考の38ページを参照してください。
通院介助を利用する利用者と家族の負担が軽減されることが、大きなメリットです。
よくある質問
通院に関わるサービスにおいて、明確に理解できていないこと、利用者から尋ねられてどう答えればいいか不安になることもありますね。そんな不安を解消しておきましょう。
ヘルパーの交通費は誰が負担する?
公共交通機関などを利用して通院介助を行う場合、ヘルパーの交通費は利用者が負担するのが基本です。
ただし、これは介護保険制度で決まっているわけではなく、訪問介護の事業所がそれぞれの対応方法を定め、それを事業所が事前に書面などで説明します(※自費サービスの内容や時間も同様です)。
『すべての介助に介護保険が適用されると思っている利用者』と、簡単な事前の説明で『これは自費で払うことが当然だという事業所』で発生するトラブルは、非常に多いです。
さらに、間に立った介護職がよくわからないまま曖昧な返答をすると、さらに大きなトラブルになる可能性があります。不明なことは、事業所に戻って管理者から報告すると答えることを心がけましょう。
入退院日の通院介助は介護保険が使える?
令和3年度の介護報酬改定以降、「通院等には入院と退院も含まれる」の記載により、可能となりました。
参考:「老企第36号第2の2-(7)-④通院等乗降介助の単位を算定する場合」(院内介助の算定は原則不可)
ただし、上記内容の解釈は自治体によって異なるため、具体的な取り扱いについては市区町村への確認をしたほうが良いでしょう。
交通機関の車内での見守りは算定可能?
電車やバス、タクシーなどの交通機関の乗車中は、車内において気分確認や体位の調整、安全確保のための見守りなどの介助を行った場合に限り算定対象となります。
したがって「ヘルパーが単に利用者の隣に座っている」など介助を行っていない場合、乗車中の時間帯は原則算定できません。
また、通院・外出介助を算定するにあたっては、バス停や病院など自宅以外の場所で待ち合わせることはできません。
通院後の寄り道は介護保険が使える?
通院の帰りにスーパーや銀行に寄るなどの寄り道は、原則的には介護保険適用外です。
ただし、市区町村によっては通院後の処方薬の受け取りや、水分補給の為の飲料水購入などが介護保険の対象になることもあります。事前にケアマネージャーから市区町村に確認しておいてもらうと安心です。
認知症の人の待ち時間の見守りは介護保険が使える?
病院内での待ち時間や診察室内への付き添いは、病院のスタッフがすることなので、原則として介護保険は適用されません。
しかし、院内での待ち時間に付き添いが必要な状態だとケアマネ-ジャーが判断し、病院側による対応が難しい場合には、病院内であってもヘルパーに付き添いをお願いできる場合があります。
ただし、自治体によって取り扱いが異なりますので、ケアマネージャーに確認を取ってもらうことが必要です。
訪問介護の2時間ルールに通院等乗降介助は該当する?
いわゆる「2時間ルール」とは、1人の利用者に対し同日中に、2回以上、訪問介護サービスを提供する際に原則適用されるルールです。具体的には「同じ利用者に対して同日中にサービスを2回以上提供する場合、その間隔が概ね2時間未満であればひとつのサービスとみなす」とするルールを指します。
スタッフが運転する車両への乗降・降車、乗降前・降車後の移動、受診などの手続きを支援する通院等乗降介助は、同ルールの適用を受けません。例えば、行きと帰りの間隔が1時間であっても別々のものとして算定できます。
ちなみに、通院介助(身体介護)の院内で過ごす時間は、サービスを提供していない時間(中抜き時間)として扱われるため、中抜き時間が2時間以上であった場合も往路と復路を合算するか否かは市町村により異なります。
通院介助は一連のサービス行為であるため合算するとしている所や、中抜きが2時間以上ある場合は別々に算定しても良いとしている所などさまざまですので市町村へ確認しておきましょう。
鍼灸・整(接)骨院・マッサージへの通院介助は可能?
自治体により「医師がいる所ではないとNG」「医療保険の対象でないとNG」としているところもあれば、利用者の状況に応じて必要であれば認められるところもあります。
市区町村の担当課に確認した方が良いでしょう。
まとめ
病院付き添いのサービスは、利用者さんやご家族からクレームにつながるといったトラブルがよくあるサービスでもあります。
実際に、やむを得ずケアマネジャーが通院介助や外出に付き添うといったケースも少なからずあります。
そのため、自分の提供するサービス以外のことで何か聞かれたら、その場では答えずに、必ず管理者かケアマネジャーに相談・確認するようにしましょう。
また、介護保険の制度としては不可能なことでも、地域によって考え方が違う場合もあります。
特に訪問介護は地域性や地域の事情と密接な関係があるため、そこそこで実情に合わせたルールがある場合が多いです。何かあればケアマネジャーに相談して自治体と連携する姿勢が大事です。
利用者さんが、いつまでも安心して在宅で生活できるようにサポートしていきたいものですね。
投稿者プロフィール
- 介護福祉士・主任介護支援専門員・認知症ケア専門士・社会福祉士・衛生管理者・特別養護老人ホーム施設長・社会福祉法人本部長経験と、福祉業界で約25年勤務。現在は認知症グループホームでアドバイザー兼Webライター。
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