疲れは癒えるが、悲しい顔は忘れられない

たかが髪、されど髪

どんな仕事でも達成感や、やりがい、楽しさといった明るい面の裏側には辛い経験や苦労があります。

もちろん訪問理美容業も例外では無いのですが、現場の辛さは現場のスタッフが一番知っていて、あまり表には出てこないものです。

このコラム「たかが髪、されど髪」は訪問理美容の認知度を高めることを目的に書いていますので、明るい話題だけでは無く、たまには少し暗い話もしなければ(笑)。

ということで今回は弊社のスタッフにこれまで訪問理美容の現場で辛かった経験についてインタビューし、その中で多かった意見をまとめました。

ご利用者様の意向に沿わない施術

ご利用者様は髪を切りたくない中、ご家族や病院施設のスタッフの要望で半ば無理やりに施術をすることがあるそうです。

時には「助けてください!」と叫びながら暴れたりと、施術が難しいことも。

もちろん整容・衛生面の観点からカットやシャンプーをしないといけないこともあり、致し方ないことではありますが、複雑な気持ちになるそうです。

上記に近いケースで「ご利用者様の好きなスタイルが認められない」ということもあります。

ご利用者様がカラーやパーマをかけたくても、ご家族から「もう年なんだから」とかお金を管理されているといった理由から諦めなければならず、悲しい顔をされているのを見ることがあるそうです。

カラーやパーマだけでなく髪の長さも、必ずしもご利用者様本人の意向に沿っているわけではありません。

「自分らしさの表現のお手伝い」が理美容師の仕事ですが、ご利用者様の意向に沿わない施術を行うことはいつも心苦しいようです。

ご利用者様の気持ちを汲み取れなかった

言語障害や気管切開などで発声が困難な方の対応で、ご利用者様が懸命に伝えて下さっても中々理解が出来ず、とても悲しい顔をされたことがあるそうです。

ホスピス病棟での施術で「もう一度散髪出来たらいいな」とご利用者様が仰った時、言葉が出なかったこともあります。ご利用者様の発言に否定的な返答は出来ないし、励ましの言葉も軽率な感じがして、ただただ一生懸命に言葉を聴き続けました。

ご利用者様とのコミュニケーションも訪問理美容師の大切な仕事の1つではありますが、私たちの力不足が故にご利用者様の気持ちや伝えたいことを上手く汲み取れなかった経験は、私たち自身も辛く、そして悔しく、心残りになってしまうそうです。

どんな状況でも一生懸命に対応する

以上が弊社のスタッフに「これまでの現場で辛かったこと」をインタビューした中で、多かった意見です。

訪問理美容はベッド上のシャンプーなど施術者の身体に負担がかかる仕事も多く、体力面での辛い経験が意見として多くなるのかと思いきや、ご利用者様とのコミュニケーション、誰の意向で施術を行ったらいいのかわからなかった経験といった精神面の辛さを多く語ってくれて、正直少し驚きました。

肉体的な疲れは休めば癒えますが、目の前で見たご利用者様の悲しそうな顔はいつまでも忘れられないだと思います。

そして、これからも訪問理美容を続けていく以上、同じような経験や新たな辛い経験も待ち構えているでしょう。

ですが、そんな場面に直面してもまずは自分たちが後悔しないよう、どんな状況でも自分たちに出来ることをこれまで通り一生懸命に対応していきます。

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