訪問看護におけるBCP(事業継続計画)とは?

訪問看護

2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、介護事業所でも感染症への対策がこれまで以上に強く意識されています。

このコロナ禍をきっかけに、台風や豪雨、土砂災害などの状況下でも安定した介護・看護サービスを行うために、3年間の経過措置を経て2024年から「BCP(事業継続計画)」の策定が義務化されることになりました。

介護事業者はもちろん、利用者にとっても重要な問題であるBCPについてご紹介します。

訪問看護におけるBCP(事業継続計画)とは?

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略であり、「事業継続計画」「業務継続計画」とも呼ばれます。内閣府のガイドラインによると、BCPは以下のように定義されています。

「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のこと」

参照:内閣府「事業継続計画ガイドライン」(PDF)

社会福祉施設は高齢者や障害者など、日常生活において様々な支援が必要な方が利用されています。

そのため、もし災害などにより電気、ガス、水道などのライフラインが寸断されると、サービス提供の維持が困難となり、利用者の生命・身体に著しい影響を及ぼすおそれがあります。

災害以外でも、新型コロナウイルス感染症などの感染症が発生した際、サービス提供に必要な人材は確保しながら、利用者への感染防止対策を徹底して継続的にサービスを提供することが求められます

BCPはそういった体制を整えるために欠かせないものなのです。

介護事業所でBCP(事業継続計画)が義務化

「感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する」という観点を基本に、 全ての介護サービス事業者を対象として、業務継続に向けた計画などの策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施などが義務づけられました

事業形態を問わず全てのサービスに適用され、3年間の経過措置が設けられています。

訪問看護でBCP(事業継続計画)が必要な理由

BCP以前にも、介護事業所や介護施設には防災計画が用意されていました。

防災計画も天災などの有事の際に利用されるものですが、BCPと防災制度とはどう違うのでしょうか。

結論からお伝えすると、防災計画は「人命の安全や建物などの財産を保全すること」、つまり「守る」ことに焦点を当てています。

一方、BCPは「天災や感染症などの状況下でも安定したサービスを提供すること」、つまり「続ける」ことを目的としています。

介護事業所や医療機関などは有事の時こそ事業継続が求められます。例えば新型コロナウイルスのような感染症が蔓延したからといって、利用者へのサービスを一切停止することはできません。

介護サービスを受けられなければ、日常生活を送ることが難しい利用者がたくさんいるからです。

災害が発生した際に、できるだけ事業をスムーズに継続するためには事前の準備が欠かせません。

そのためにBCPを策定しておく必要があるのです。

訪問看護でBCP(事業継続計画)が想定する場面

BCP(事業継続計画)は「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態」に対応するためのものと定義されています。

ここでは想定される不測の事態のうち、代表的なものを紹介します。

自然災害

具体的には地震、風水害、噴火などあらゆる自然災害を指しますが、近年は特に風水害による影響が顕著となっています。

感染症

介護事業所や介護施設では、新型コロナウイルス感染症以前から様々な感染症の危険にさらされてきました。

例えばインフルエンザやノロウイルスなどの季節性の感染症は毎年のように発生しますから、その対策のため介護施設内での面会の制限や禁止、消毒の徹底など、様々な対応が必要となります。

その他

その他の不測の事態としては、以下のようなものが考えられます。

  • 情報の漏洩等情報セキュリティ上の問題
  • 情報の漏洩等情報セキュリティ上の問題
  • 火災や爆発事故
  • 取引先の被災や倒産
  • 自社業務管理システムの不具合・故障
  • 経営者や管理者の不測の事態(急死、急病、逮捕など)
  • 戦争やテロ

BCP(事業継続計画)

これまでご紹介してきたように、BCPが想定する場面は多岐にわたります。

BCPの策定で難しいのは、想定される事態によって職員、設備、利用者などの状況が大きく異なるため、統一的な策定をしにくいことにあります。

例えば取引先が被災や倒産をした場合は、職員、設備、利用者等には直接的な影響はありません。この場合は備品などの仕入れ先を変更したり、備蓄をしたりしておくことが重要となります。

一方、経営者や管理者に不足の事態があった場合は、指揮系統の再構築が早急に必要です。

このように、不測の事態の内容によって準備しなければならないことはそれぞれです。

災害や感染症蔓延などの非常時に重要なことは、様々な不測の事態はあるもののBCP(事業継続計画)の運用を念頭において、実際にその場面で使えるBCPを策定するため、焦らず取り組んでいくことです。

訪問看護事業所が本格的にBCP策定に取り掛かる前におすすめ!簡易版BCP

キャプス 2021年5月1日初版発行 定価440円(税込) 水に強いレインガード紙を使用

「訪問系サービス事業所のための命と会社を守る防災マニュアル(簡易版BCP)」は、実際のBCPでも策定する内容のポイントを、わかりやすく1冊にまとめています。

「業務継続のための取り組みって何をしたらいいの?」

「BCPのイメージが湧かない」

そんな事業所の皆さんにぜひ手に取っていただきたい1冊。

従業者の皆さんと一緒に考えながら、事業所独自のマニュアルが完成するように作られています

BCPでも策定する内容を分かりやすく収録

「事業継続基本方針」「重要業務と復旧目標」「緊急事態発生時の危機管理体制」

文字だけみると難しそうに見えますが、これらは実際のBCP策定時に最も大切になる重要ポイントです。

緊急事態が発生したときに、何を最優先に・誰がどのように対応するか、といったところを決めておく部分となります。

最も複雑で取り決めが難しい部分を、わかりやすく、従業者の皆さんにもBCPの必要性を理解してもらいやすいように構成しています

緊急時に役立つ情報満載

地震や水害等の自然災害が起こったときの対応について、事業所内・訪問先での対応方法をマニュアルとして収録しています。

新型コロナウイルス感染症については、厚生労働省のガイドラインに沿った対応マニュアルをまとめました。

また、訪問系サービス事業所で起こりやすい緊急事態への対応の注意点や、応急処置などの情報はもちろん、事業所が緊急時に連絡すべき連絡先をまとめておくことができます。

書き込み式で事業所独自のマニュアル作成!

「命と会社を守る防災マニュアル」では、一方的な防災マニュアルではなく、訪問系サービス事業所向けの内容となっていますが、さらに、事業所独自の取り決めについても記入することができます

事業所の場所やご利用者の自宅の環境、従業者の移動手段など、一般的なマニュアルでは対処できないこともあります。

各ページには書き込みスペースもあり、皆さんで意見を出し合いながら、空欄を埋めていくことで、「ウチの事業所には当てはまらない」という内容もカバーすることができるのです。

また、直接項目を追加したい場合にはCD版がおすすめ!

エクセルで収録されているので、自由に書き込みすることが可能です。

研修の一環として全員で取り組むことで防災意識向上にも

介護報酬改定の内容は「業務継続の取り組み強化を目的として、BCP等の策定、研修、訓練(シュミレーション)の実施等を全事業者に義務付ける」ということです。

この簡易版BCPを研修の一環として従業者の皆さんと考え、作成してみてください。

また、出来上がったらそれに沿って訓練(シュミレーション)を行い、うまくいかなかったところを見直します

この繰り返しを行うことで、事業所のBCPが完成していくのです。

初めてBCPに取り組むという事業所の方にもわかりやすいように、進め方の「手引き」もついていますので、ぜひ、できるところから取り組んでいただきたいと思います。

従業者の皆さんと一緒に取り組み、実施することで、ひとりひとりの防災意識もきっと高まっていくはずです。

詳細・購入はこちらから⇒訪問系サービス事業所のための命と会社を守る防災マニュアル(簡易版BCP)

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