在宅医療の中心となる訪問看護ステーション。
訪問看護ステーションには、管理者を置かなければならないとされています。
では、この管理者は誰でもなれるのでしょうか。
管理者に定められている要件について、知らない方も多いのでは?
今回は、訪問看護ステーションの管理者について、要件や役割について解説します。
訪問看護ステーションの管理者の要件
訪問看護ステーションでは、看護職員だけでなく、理学療法士や作業療法士、事務職員なども働いています。
どんな職種でも管理者になることはできるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
管理者の要件①職種や資格
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準によると、「指定訪問看護ステーションの管理者は、保健師、助産師または看護師でなければならない」とされています。
ここで注意したいのが助産師の場合です。
健康保険法の指定訪問看護ステーションの管理者であれば助産師資格で可能なのですが、介護保険法の指定訪問看護ステーションの管理者の場合は、「保健師または看護師」と限定されています。
そのため、介護認定を受けている方へ訪問看護を行う場合は、管理者に保健師または看護師を置かなければなりません。
では、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ専門職は管理者になれるのでしょうか。
「指定訪問看護ステーションの管理者は、保健師、助産師又は看護師でなければならない。ただし、やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。」と明記されています。
やむを得ない理由とは、以下の理由が考えられます。
- 長期間の傷病や出張で管理者不在の場合
- 地域の事情などで、主に理学療法士などの他職種によって訪問看護が行われ、管理者としてふさわしい保健師、看護師が確保できない場合
上記の場合は、地方厚生(支)局長の承認を受けた場合に限り、他職種でも可能としています。
管理者の要件②勤務時間などの労働条件
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準によると、「指定訪問看護ステーションの管理者は、専従かつ常勤でなければならない」とされています。
「専従」とは、訪問看護ステーションでの勤務時間内に他の仕事に従事しないということ、「常勤」とは、週32時間を基本として、当ステーションで定めている勤務すべき時間働いていることを指します。
「専従」については、例外があるのがポイントです。
「ただし、指定訪問看護ステーションの管理上支障がない場合は、他の職務を兼ねることができる」とされ、以下の場合は兼務が可能になります。
- 当ステーションの看護職員としての業務に従事すること
- 同一敷地内や隣接する施設での管理業務や看護業務に従事すること
たいてい訪問看護ステーションの管理者は、自身も一看護師として訪問して回っています。
管理業務も行いながら看護業務もこなすタフさが必要です。
管理者の要件③看護師としての経験
指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準によると、「管理者は、医療機関における看護、訪問看護または保健指導の業務に従事した経験のある者であること。さらに、管理者としての資質を確保するために関連機関が提供する研修等を受講していることが望ましい」とされています。
看護職であれば管理者を目指すことができますが、やはり経験が必要です。
病院で数年経験を積んだ後、訪問看護師として働いた経験がある方が望ましいでしょう。
さらに、日本看護協会や各都道府県の看護協会など様々な団体が開催している研修を受講し、管理者としての知識と意識を身につけておくことが大切です。
管理者の除外要件

管理者になるためには必要な資格や経験がありますが、逆に除外される要件も定められています。
- 保健師、助産師または看護師の業務の停止を命ぜられ、業務停止の期間終了後5年を経過しない者
- 指定訪問看護ステーションの管理者として変更の指導や取消処分を受けた後、5年を経過しない者
上記の場合は、管理者としてふさわしくない者とみなされ、管理者になることができません。
訪問看護ステーションの管理者の役割

訪問看護ステーションの管理者の役割は、職員の管理や訪問看護利用に係る調整、実施状況の把握などを一元的に行うことです。
さらに、利用者さんや関係機関の窓口として重要な役割を担います。
訪問看護ステーションで働く職員のマネジメント
管理者は、訪問看護ステーションで働く職員の健康管理やスケジュール調整を行います。
①職員の心身の健康管理
コロナウイルスが流行してからは、毎朝出勤後の検温は必須になっている事業所が多く、健康管理が厳しくなっています。
職員の健康に問題がないかを把握し、健康管理に努めることは管理者の大切な役割です。
さらに、身体の健康だけでなく、メンタル面の健康管理も欠かせません。
訪問看護は、病棟とは違い、看護の対象や扱う病状も多種多様です。一人での訪問は責任も重く、不安も大きいことでしょう。
管理者はそのような看護師一人一人の相談に乗り、アドバイスしながら見守っていきます。
②職員の能力を伸ばす働きかけ
管理者は、職員の育成計画を作成し、適宜職員と面談を行いながら人事評価を行います。
職員の自己研鑽の場として、ステーション内で事例検討の機会を設けたり、外部の研修に参加する機会を作ることも必要です。
さらに、認定看護師や専門看護師の資格や、経験してきた実績などから、看護師一人一人のスキルを充分に活かせるよう利用者とマッチングさせることも管理者にとって必要な能力でしょう。
③職員のスケジュール調整
管理者は、職員の休暇日数の管理や時間外労働の把握など、労働管理を行います。
小さい子どもがいたり親を介護していたりと、配慮が必要な従業員のシフトを調整し、働きやすい環境を整えることも大切です。
さらに、ICTを活用し、電子カルテなどを導入することで、業務の効率化を図ります。
業務の無駄を省き、職員が必要な部分に力を注げるように、働きやすく、働きがいのある職場を作ることが管理者の役割です。
訪問看護利用者や家族、関係者との調整役
訪問看護の利用者さんには、若年者であれば障害福祉の事業所や保健所、高齢者であれば訪問介護やデイサービスなど、たくさんの関係機関が関わっています。
そのため、訪問看護ステーションの管理者は、主治医はもちろん、保健所や保健センターの保健師、ケアマネージャー、訪問介護士、デイサービス職員など、たくさんの関係者と連携をとる必要があります。
管理者は、個別ケース会議やサービス担当者会議などに出席する機会も多いため、看護職としての意見を明確に述べることのできる能力が必要です。
そして、利用者さんやご家族と関係機関を繋ぐ橋渡し役も担います。
例えば、主治医に適宜必要な指示を仰ぎ、利用者さんやご家族が主治医には遠慮して言えないことを代わりに伝えることもあります。
ケアマネージャーに必要な看護の提供内容や訪問回数の提案をしたり、介護士やデイサービス職員に身体面で配慮すべき点を助言したりすることもあるでしょう。
訪問看護ステーションの管理者は、利用者さんの在宅生活を支える一員として重要な役割を果たします。
まとめ:訪問看護ステーションにおいて管理者の果たす役割は大きい!

指定訪問看護ステーションの管理者は、経験豊富な保健師または看護師と定められています(健康保険法による訪問の場合は助産師も)。
国は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる 2025 年に向けて「地域包括ケアシステム」の構築を目指しており、在宅医療を担う訪問看護師に対する期待は非常に大きいものがあります。
利用者さんが、住み慣れた地域において自分らしい暮らしを最期まで続けて行くためには、質の高い看護を安定的に提供していくことが必要です。
そのためには、訪問看護ステーションの管理者がマネジメント能力を発揮し、在宅医療の中心的役割を担っていく必要があるでしょう。
訪問看護ステーションの管理者は、今後の地域包括ケアシステムの要となる、非常にやりがいのある仕事です。
今回の記事が、スキルアップを目指す看護職の方や地域包括ケアシステムに関わる皆様の参考になれば幸いです。

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投稿者プロフィール

- 看護師・保健師としての経験後、現在は高齢者のケアマネジメント業務に奮闘中。ベビーから高齢者の方まで幅広く関わっています。
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